Re: ミニイベント「再会」 ( No.2 ) |
- 日時: 2013/07/27 01:34
- 名前: 弥田 ID:rHqaMydg
さてKの行方も知れぬまま、親父から盗んだ缶ビールを片手に都市を彷徨していた。表通りは明るくまぶしく、長居すると目をやられてしまうため、身を寄せるようにして狭い路地裏を往く。酩酊が激しかった。右手の缶ビールはいくら飲んでも尽きることがないため、無限に飲み続けることが出来る。酔う。そして彷徨する。それらに耽溺する。 これを幾昼幾夜とくりかえす、そのうちに、やがて私は自身が都市そのものとなっていることに気がつく。 歩道橋の下に住む物乞い婆ぁは格安で春を売るという話だったが、一方で世界の理を知る大賢者でもあるという噂も聞く。彼女からならKの行方を聞き出すことができるかもしれない、と私=都市は歩道橋の下の神殿、聖なるダンボールハウスへと赴いた。 深い海の色をしたビニールシートが扉代わりで、めくると婆ぁと男が性交しているのが見えた。 「やあ、夜分遅くにこんばんは、都市である。ところで私の一友人であるところのKの行方を知らないですかね、ご老人」 婆ぁは喘ぎ声をこらながら言う。 「ああ、そのかたならば、タカシマヤのほうにいますよ」 「ありがとう、礼を言うよ。これはほんの感謝の気持ちだ」 それからタカシマヤに向かったが、Kはどこにもいなかったし、手がかりの一つもつかめなかった。往来する人の数は波濤の如くで、嫌悪感甚だしく、そうそうに退散する。途方に暮れて、住宅街をとぼとぼと歩いていると、誰かの爪弾くギターの音が流れてきた。どうも調子っぱずれでリズムも安定しない、金釘流のギターであったが、一緒に合わせて身体を動かすとだんだんと心地よくなっていき、しまいには踊るようにして歩き続ける。高揚した気分で、私は都市だ! 私は都市だ! と咆哮しつづけると、ある三叉路にて私自身とばったりでくわし、おや、お久しぶり、あなたこそ、お元気ですかな、ええ、ええ、もちろんおかげさまで、ははは、なんと楽しい再会ですかな、そうでしょう、どうですかな、ここはひとつ乾杯など、すばらしい発案です。互いの缶ビールを打ち合わせて乾杯し、一息に喉へ流し込むと、弱った胃にこたえたらしく、音にも鳴らぬ音をたて、噴火のような嘔吐をした。
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