Re: 夜更けの三語SHOW♪ ( No.2 ) |
- 日時: 2011/11/07 00:26
- 名前: 昼野 ID:ve/tlAUw
僕はiPhoneにぶち込んだ、バッハのマタイ受難曲を、イヤホンで聞きながら、街角を歩いていた。とくに何処へ向かう目的もなく、歩いていたのである。 灰色の住宅街が並ぶなか、僕はバッハの旋律を聞きながら、涙を流していた。バッハを聞くことで、自分の心がどれだけ汚れていたかを、その時、理解した。そして糞まみれに汚れた心を、浄化されるようだった。 季節はもう冬であった。冷たい風が吹き荒れていた。僕は頬を伝う涙を隠すのと、寒さとでコートの襟に、首をうずめるようにした。 それにしても、僕は音楽を聞くことで涙を流すほどに、心が汚れているのだろうか。具体的な事は何一つ思い出せないが、しかし僕は今年で30歳であり、それなりに世間や社会との接触をしてきた。そうして、自然と、自分でも気づかないうちに、汚れているのだろうと思った。でも、僕は十代の頃の無垢な魂には、もう戻れない。しかし、それでもいいと思った。バッハの音楽がしてくれた事は、汚れを汚れであると自覚させてくれた事だ。僕は、その罪を背負って生きていくし、今後も罪を犯すだろう。しかしそれは生きる上で、仕方のない事だ。何よりも生きることは大切だ。しかし何処かで罪を罪であるとの意識をもち続けようと思う。 僕はそう決意して、寒気が猛威を振るうなか、寒さを癒すために、コンビニで肉まんを買って食べた。その温もりに自然と涙が出た。それはバッハの音楽がもたらした涙とはまた別の類いの涙であった。
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