SとP ( No.2 ) |
- 日時: 2011/03/06 01:10
- 名前: 弥田 ID:hRl6.ywU
お題は「エログロ」と「四人の男女の四角関係と失恋」です。
---- 「しょせんおんななんて穴なんだよ、穴。つらぬくの。つらぬかれるの。それだけでいいの」 と、腰を振りながら松が言う。彼のやけに甲高い声はくちゅぽん。くちゅぽん。という音に吸い込まれ消えていく。私はそれを横からみている。おんなは、つまり梅は、不満げな目で松をみている。なにそれ、わたしのこと馬鹿にしてんの、それとも自分の頭の悪さ晒してんの、どっちよ。 「どっちも、だ。俺は馬鹿だし、お前は阿呆だ。つうか、そういうのはこの問題に関係ないんだよ。つらぬく俺がいて、つらぬかれるお前がいて、それだけ、それだけ」 差別主義的ね、わたしがのみこんでるの、あなたがのみこまれてるの、おっけー? 棒にばっか血液まわってるから脳みそ動いてないんでしょ、ちょっと考えればわかることじゃない。 「ま、それもありだよ」 鼻で笑って、腰の抽送がはやくなっていく。梅のむねが、ぴんと張ったまるいむねが、動きにあわせて揺れる。ん。とあまえた声がもれる。ぐ、不覚。呟いて、拍子にもうひとつ、ん。と音がする。彼女は口を押さえようとして、そこで自らの腕がないことを思いだす。肉の露出した肩先が、ふよふよと宙にうごく。半ばで断たれた太ももが、おなじようにふよふよ、ふよふよ。 やっぱりこれ、不便よ、だるま女なんて、あんた責任とってくれるの、ねえ。 松はなにも答えず、ただうっすらと笑うだけだ。やさしいかお。きゅんとする。下腹部とか、胸とか、つまりそういったところがいい感じになる。 「ねえ、私もそっちいっていい? だめ?」 「だめーだよー」 首をふって、松は梅に口づけする。前戯で傷口を舐めまわしていたから、彼のくちびるは真っ赤に染まっている。その色素が梅の肌にうつって、ひどく羨ましいようなどうでもいいような、いやな気分になる。 「ねえ、竹、松にふられたんだけど!」 空振りの勢いで竹にふる。彼は部屋のすみでじっと小説を読んでいる。声をかけたいまだって体勢をかえるどころか、視線すら動かそうとしない。ただ意識だけをこちらにむける。 「あっそ、ふーん」 それきり。 「あ、おい、おまえもそんなか。え、私はどうすればいいんでしょうか、え、おしえて梅姉さん!」 よしよし、わたしが抱きしめてやるから、この胸に飛び込んできなさいな。 「いや、そもそも抱きしめる腕がないですし」 と、けっきょく松が腰を振り続けるのを眺めるしかないのだった。彼が動きをはやめればはやめるほど、私の時間は間延びしていく。松、松。こころのなかでよびかける。返答はない。ノットテレパシーだから。超能力がほしいな。そしたら松の心に潜って、なにかとっても大事なものを愛撫したりキスしたりしてやれるのに。エスパー、エスパー。SとP。へむう。 「さて」 ふいに一息ついた松が、竹にかばんをとってくれ、と頼む。放り投げられたアルミ製のスーツケースをひらくと、なかからは大振りなナイフがでてくる。梅のテアシを切ったばかりの、血糊も脂肪もぬぐっていないぎんぎら刃が照明をうけ光がひとすじ反射する。 「そろそろいくぜー」 ういすういす、こい、うけとめてやるぜえ。 松が右手を下ろすと、ナイフは梅のおなかにもぐりこむ。なんの抵抗もない。なんだかあっけないくらい。ほう。梅の息。右手がこんどは下腹部に落ちていって、彼女の子宮一歩をちょうど半ばまで切り裂いたくらいのところでくちゅぽん、という音と一緒にひきぬかれた。 瞬間、鮮やかな赤色が空間をみたす。綺麗だ、と思ってしまう。ぐ、不覚。 返り血をあびて、松はふたたび笑った。やさしい、どこまでもやさしいその表情は、梅の開かれた腹部、深紅の血の海と、黄色い脂肪の島。そしてその中心の心臓に向いている。ナイフを放りだした手が、おそるおそる伸びていって、まだどくどく動いている右心房を、そっと愛撫した。や、ん。と、梅がひときわ大きい声をあげて、そこからさきはもう見ていない。見たくもない。 「ねえ竹」 声をかけてみたけれど、やはり返事はない。ぴちゃぴちゃなにかを舐める音と、梅の喘ぎ声と、聞こえるのはそれだけ。いや、あとひとつ。くちゅぽん、くちゅぽん。耳に粘り着いた音がとれない。 エスパー、エスパー。もしも超能力があったら、この音を消してみせるのに。 「穴だよ、穴」 と、松がつぶやく。私は耳をふさぎ、こころのなかでなにかとっても大事なものを抱きしめていた。やわらかくてひどく心許がない。松、松。そっと呼びかける。SとP。へむう。
------ 遅刻ですごめんなさい(ω) なんというか、これだけの分量に4にんも詰め込んだのははじめてです難しかった>< 竹は犠牲になったのだ……。
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