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RSSフィード [57] みんなで書けば怖くない! 中二病イベント開催します!
   
日時: 2012/09/16 22:49
名前: HAL ID:AlwY4nxU

 無駄にカッコイイ名前の必殺技、派手なエフェクト、壮大な世界観、ケレン味たっぷりの描写、トンデモ設定に超絶美形、ご都合展開に最強主人公、不老不死。不幸な過去、流血だらけの展開、思わせぶりなセリフ、エトセトラエトセトラ……
 かつては誰もが持っていた、熱い萌え(燃え)。大人になるにしたがって、いつのまにか忘れていませんか? 本当はいまでも好きなのに、世間体や常識に邪魔されて、なんとなく書けなくなってしまっていませんか?
 パソコンの中に、かつての授業用のノートの後ろ半分に、ルーズリーフの切れ端に。せっかく熱意を持って書きためていたのに、どこにも出せずにお蔵入りになっているお話はありませんか。

 大丈夫、みんなで書けば怖くない! 面白さと中二病は紙一重。さあ、恥は捨てるんだ!
 ということで、中二病イベント、開催いたします!

●投稿期間:
 平成24年10月1日~12月31日

●枚数制限:
 おおむね100枚以内、ひとり3作品まで。
 とはいえ厳密にやるつもりはないので、ざっくりどうぞ。

●投稿場所:
 このスレッドに直接書きこみ。
 ただし長くなるようでしたら(原稿用紙30枚以上くらい?)、一般投稿板か、またはご自身のブログやサイトなどにUPされて、ここには告知とリンクのみを張られることを推奨します。(強制ではないです)
 一般投稿版を利用される場合は、一週間ルール・感想ルールなど、本サイトの利用規約にご注意くださいませ。

●感想について:
 いつでも大歓迎(期限なし)、むしろぜひよろしくお願いします。ただし人の中二病を笑わないこと。
 ここのスレッドに直接書きこんでいただくか、投稿先が一般掲示板の場合は、そちらの感想欄にでもよろしくお願いいたします。

●その他の注意事項:
・中二病の定義は特に絞りません。作者様が「これって中二病っぽいかな……?」とつい恥じらってしまう内容なら、それが中二病ということで。
・本物の中学二年生、及びその前後の年齢の方が参加されることを妨げるものではありません。要は思う存分萌えを叩きつけていただければ!
・年齢制限が必要かなあと思われた場合は、タイトルにでも注意書きを添えていただければ助かります。
・飛び入り歓迎です。お気軽に!
・真面目な力作を想定してのイベントですが、悪ノリも、嫌いじゃないぜ……
・強制ではありませんが、参加された方は、積極的にほかの方の作品にも感想をお寄せいただけると嬉しいです。
・ご質問等ございましたら、ここに書きこんでいただくか、だいたい日曜日の21時~22時すぎ頃にはチャットにお邪魔していますので、そちらで承ります。

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Adieu ( No.17 )
   
日時: 2012/12/24 01:53
名前: asari ID:E6ocJRGQ


 「それで、あんたはその子の王子になってやるわけね」

 洋子は終始挑発的な態度で元恋人の話――二週間に渡る二重交際の言い訳――を聞いていた。
 駅前の日当たりの良い喫茶店でのことである。時計はまっすぐに空を指し、店は一日のうちでもっとも華やかな賑わいで満ちる。
 隣の席の紳士などは熱心に今朝の朝刊を読むふりをして若い誤ちに聞き耳を立てていた。
「お前のそのドラマティックな物言いもとても魅力的だったよ。さすが現代テレビっ子。だけどそれは影響されやすいだけで、本当の言葉じゃない」
 勇太はしたり顔でそう言い、大袈裟に首を降る。自然、口元が引きつる。
 勇太の正直で子供っぽいところがいいと、付き合う前は随分お熱だった自分を思い出す。勇太の少年らしさは少しも損なわれていないのにおかしいな、と顔を歪ませて不意に目頭が熱くなった。
「真実の愛に犠牲は付き物なんだ。泣かないでくれ」
 堂々とした台詞とは裏腹に、勇太は顔を伏せた洋子におろおろと紙ナプキンを握らせようと必死であった。決して受け取るものかと伏したまま拳を握りしめる。
「真実の愛?」
と洋子が低い声で呟いたとき、喫茶店のドアが激しいベルの音と共に開いた。
「勇太!無事!?」
 飛び込んできたのは派手な格好をした若い女だった。やたら嵩張ったスカートで周囲の物を蹴倒しながら、一直線にこちらへ向かってくる。
 思わず顔を上げた洋子を見て女は絶叫した。
「このメデューサ!勇太から離れなさい!」
 大声に店員が驚いて女に指差された洋子を凝視する。急に顔を上げた洋子は長い黒髪を振り乱し、さながらB級映画の女幽霊のようであった。
 洋子はさっと朱に染まり下を向く。
「サーヤ、それはちょっと……」
 勇太が宥めるように女に話しかける。
「忘れないで……勇太。あなたと私がいにしえ、王国で引き裂かれ、無念のまま来世を誓ったことを」
 サーヤは優雅な手つきで勇太の顎をとる。すると勇太の顔はたちまち神妙になり、サーヤと視線を合わせた。
「ああ。忘れるはずはない。今度こそ運命を共にしよう、サーヤ、光の姫よ」
「ああ、千年の孤独を埋める唯一の王子……」
 気づくと、呆気に取られて口を馬鹿みたいに開いていた。二人は完璧になりきっていた。
 周囲が見えていない、というより現実を見たことがないんじゃないかと洋子は思う。
 激情の波に襲われていた洋子の胸中は二人の熱病に侵されたようなやりとりに急速に凪いでいった。
(おい、サーヤ。自分の顔を鏡で見てみろ)
 何が姫だ、という言葉こそ本音であったが言わず、洋子は代わりに見当違いなことを言った。
 赤い目を勇太に向け、一息に吐き出す。
「ああ……ユータ!わたくしはずっと待っていたのに!」
 え、と勇太は間抜けな声を漏らす。
 素っ頓狂なことを叫んだ洋子に、盗み聞きしていた客たちは体裁を忘れて一斉に目を向けた。
「あなたは忘れてしまったのね……わたくしの人生で最も輝いていたあの幼い日々を」
 もう恥も外聞もない。勇太の手を取り両手で包み込んで、見つめた。できるだけ物悲しげになるように。
「生まれてすぐお母様が逝かれ、後ろ盾を無くしたわたくしの月影の宮に、末の皇太子である貴方だけは足繁く訪れてくれた。継母となったサーヤ姫の実母に虐げられ、粗末な生活をしていても貴方がいたからわたくしは救われていましたのよ」
「えっと、ごめん。俺は舞踏会に誘われた彼の大国の王子で……」
「惑わされているのよ。記憶を何もかも改竄されて。あちらのお母様は魔術がお得意でしたもの」
 そう言って横目で見やると、サーヤは顔を真っ赤にして、乱暴に洋子の手を掴んだ。わなわなと勇太と握った手を解かせようとする。強く爪を立てられ、血が出てきたけれど絶対に離すものかと全力でを握り込んだ。
「痛い!痛い!」
 勇太が情けない声を上げる。
「離しなさいよ、メデューサ!勇太、惑わしてるのはこいつよ。王国を滅ぼしたのもこのメデューサ!約束したでしょう?滅びる王宮で」
「滅びたのは貴方のお母様のせいでしょう。飢えた国民に暴言を吐いて貴方方親子だけがいつも贅沢をしていた。じき反逆が起こるのは火を見るよりも明らかだったわ」
 皇女らしく、そう精一杯高貴な笑みを浮かべる。
「それに、仮にも姫ならそんなお下品な言葉使いをされますかしら」
 お株を奪われ、我を忘れたようにサーヤが突進してくる。洋子はサーヤの醜い般若のような顔をわし掴みなんなく止めた。
 他愛ないことだ。こんな茶番ならいくらでも続けられる気がした。
 勝ち誇って勇太に問う。あくまでそれらしく。
「ユータ様、どちらを信じられますか?」
 そう言うと、思いがけず勇太の目線は洋子の手にそっと落とされた。食い込んだ爪の痕から少し血が出ている。気まずく片手で隠そうとすると、勇太がぱっと手を割り込ませ爪痕を撫でた。
「傷つけて、ごめんな」
 その声の温かさに隙を突かれて、胸がつまる。何故だか、前よりもっと泣きたくなった。
 サーヤはテーブルの端から縋るようにその顔を覗いている。
 勇太が彼女に見向きもせず、もう一度口を開いたとき、盛大な泣き声が上がった。洋子ではない。
「ゆうちゃああん……いかないで、私の、光の姫の、千年の孤独がぁ……」
 サーヤはしゃくり上げ、つっかえながら意味不明なことを言って、遂に堰が切れたようだった。スカートの型を潰して座り込み、ごめんなさいと泣き喚く。洋子ではなく勇太の方を向いて。
 赤ん坊のように箍の外れた涙だと、気づくとぼうっと眺めていた。はっと向かいの席を見ると、サーヤを一心に見つめる目があった。
 洋子は知らない、見たこともないような表情だった。ねぇ、と思わず呼んでいた。
 聞こえないようだった。
「……さようなら」
 え、と気の抜けた声を背後に店を出る。
 外は、眩しい。
 小雨が降っているのに、雲の隙間からところどころ光が見えて綺麗だった。
 冷たい雫が肌に伝う。折りたたみ傘を持っていたけれど、濡れるのは気にならなかった。
 駅を行き来する人ごみに紛れるように、前を向いて歩きだす。

 「私の孤独は……」ぽつりと呟いた。


                   了

ここまで読んでいただきありがとうございます。
中二病を行動に移せるのは周りを無条件に信頼してるから?とか書くうちになんとなく考えました。
文章もまだまだ納得できないのですが今回は特に正しい改行を意識しました。お暇があれば目についた間違いを指摘していただけると嬉しいです><
もちろん一行でも感想をいただけたら恐縮です。

皆様の作品の感想は年内に必ず書かせていただきます!

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