以下のお題を勝手に、自由気ままに三つ以上使って、小説を書いて下さい。締め切りは年が明けるまで。ちなみ、全部使った人に限り、締め切りを一年くらい延ばします(嘘「締めくくり」、「ルンバで腹踊り」、「片桐さんは歌舞伎町NO.1のホスト」、「文学少女」、「除夜の鐘」、「マウントパンチ」、「餅」、「妹が先にお風呂」
世間が大晦日だという日、わたしは部屋で本を読んでいた。母が雪が振っていたと言っていたから、外はおそらく雪。しかしわたしの関心は天候にもなく、また手にした本の中にもない。長い長い物語は終盤に近い。全十巻の最終巻を半分ほど読んだところだ。気に入っていた話だった。本屋でタイトルに惹かれて購入し、一巻を読み終えたときには、もう本屋に駆け出していた。没頭するように読んだ。決して文学少女とはいえないわたしだが、時折無性に本を読みたくなる。そんな気分になったときは、誰かが薦める本でなく、自分の直感だけを信じて、本棚を睨む。長く文字を追っていた顔を上げて、カーテンを開くと外は真っ暗になっていた。時計を見れば十時半。終盤に近い物語の頁をめくるたび、わたしの胸の中には戸惑いに近い感覚が広がっていった。不自然な展開だったわけではない。むしろこれまで積み上げられてきた伏線が収束していき、本の盛り上がりは最高潮に至っているといえる。それでもわたしは頁をめくることにためらいを持っていた。お祭りが終わる時に感じる寂しさに近いものが胸のうちに去来しているということも確かだ。しかしわたしは、この話を読み終えず、むしろ一生読まないでおきたいと感じている。終わることが寂しいのではない。終わることが気に喰わないのだ。ある人物が生まれてから死ぬまでを描いたのなら、物語が終わることも納得できる。けれど、世に数ある物語のほとんどがそういう終わり方を選んではいない。ある人物の特定の期間を描いて、物語は終わっていくのだ。悲劇的結末、感動のフィナーレ、余韻を残す幕の引き方、わたしなりに色々な物語を味わってきた。そんな度思うことは、結局物語とはなんなのだろうという疑問だった。人の一生が物語なら、終わりは死にしかない。悲劇もあれば感動する場面もあるが、そこは終わりではなく、むしろ長い流れの通過点でしかないはずだ。それでも物語は終わる。本は頁を減らしていく。後は読者の想像にまかせるなどとも言うが、わたしにそんなことはできない。わたしはただ彼彼女の人生が切り取られたものを読んだとしか思えないのだ。こんなことを思うわたしは擦れた読者なのだろうか。それとも、物語というものを誤解しているだけなのだろうか。終わることによって物語が作り物であると思い知らされる。それがどうにも納得できなくて、妙にむなしい。わたしが目の前の本の頁を上手くめくれないでた時、除夜の鐘が遠くから響いた。今日は確かに大晦日なのらしい。一年が終わるこの日。それでもわたしは締めくくりとして何を思うでもない。わたしの日々は変わることなく続いており、これからも続いていく。それとも人は終わらない毎日だからこそ、何かを終わらせようとあの手この手と策をこうじるのだろうか。両親に初詣に出かけようと誘われ、しぶしぶうなづいた。空からは雪。確かに雪。何かを終わらせた人々が、神社の境内に集まり新年のお参りをしていた。ごったがえす境内の中に、多くの中のひとりでしかないわたしがいる。すべての人に家族があり、友人恋人があり、社会とのつながりがあり、そんな中で繰り広げられる人生がある。そう思うとわたしは圧倒される気分になって、ただおたおたとその場にたたずむ。それぞれの人の人生が物語なら、わたしはそのうちのどれだけのものと関われるのだろう。数年、数ヶ月、数週間、数日、数時間、数分、数秒。彼彼女の人生という物語があったとして、わたしはやはりそのうちのわずかな期間しか知れないではないか。そう思うと妙におかしく、妙に納得がいって、家に帰ったのなら、せめてきりのいいところまでは描いてくれるあの本を読み終えようなどと思った。ーーーーーーーー情景が、情景がー!、描けなかった。いまいちまとまってませんね。でもま、楽しむことはできました。
ここは歌舞伎町。会社戦士として力を使い果たした、いい年した大人が遊ぶ所だ。 他のところではチカチカするネオンの光がここでは建物と同化して、それだけでラスベガスのそれに匹敵するような強さを持っている。多分それが我々をここへと引き付ける要因なのだろう。大人達はそう思いながらもここへ足を運んでしまう。 それは、大晦日の一大イベントである紅白歌合戦が始まる今日も一緒だ。「テツぅ! 楽しいかぁ?」 楽しいっす! と、どこからかそんな声がしたと共にテツなんていねーよと声が飛び交う。 ここ、歌舞伎町に店を構えるメンズクラブの『文学少女』では、一年の締めくくりとしてホスト達が忘年会を開いていた。 女性をおもてなしすることに長けたホスト達も、男との触れ合いがなければ飢えてしまう。そう考えた店長が毎年主催者となっていたが、今年は開店十周年を理由に自称歌舞伎町ナンバーワンホストの片桐が主催者となった。 幹事となり、セッティングをし、大枚叩かないといけない立場に、自らなった片桐をメンバーは拍手喝采で迎えた。 彼はそれを人任せやねんと流していたが、メンバーが心底驚くことは当然だった。彼が人一倍ドケチであることには変わりないからだ。「で、金は片桐さんに任せたらいいんですよね」「任せ言うとるやろ? 片桐さんは歌舞伎町ナンバーワンホストやから大丈夫て何回言うたら自分気ぃ済むん?」 肌が程よく小麦色に焼けた男が大雑把に答えた。ちゃんと払って下さいよ! 俺は知らんぞ! そんな野次が飛んだが、誰もそんなことは気に留めない。酒が入っていれば尚更だった。 そんな訳で、ルンバで腹踊りというホストらしからぬことを始める奴がいたが特に問題ではなく、片桐がタコ焼きを作り始めた。 大阪には一家に一台タコ焼きを焼く機械がある、と言われている。例外――タコ焼きが滅法嫌いだったり粉モンが無理な家庭――はあるが、言われる通り大抵は置いてある。そんなことだから、彼等のタコ焼きをひっくり返す手つきは流れるように美しく、それだけを見れば芸術だと言わせんばかりだ。 だからか片桐はここぞとばかりに腕を見せるが今日はそれどころではなかった。少し問題が起きた。「だーかーらー、餅なんか入れんなや。チーズにしろやチーズに」「チーズなんかより餅の方が美味しいよ。このサイコロ餅見て? 絶対美味しい!」 そう、タコ焼きに餅を入れるかチーズを入れるかで、片桐とテツと呼ばれる男が火花を散らしてしまったのだ。 阿保でしょこの人達。放っておけ放っておけ。片桐さん達無視で焼きましょうよ! そんな声を聞くまでもなく男達は火花を散らし続け、果ては言い争いまでに転じてしまった。「俺知ってるんやぞ……お前の妹が先に風呂入ったら脱衣所で待ち構えてることとかな!」「…………。言っちゃ駄目でしょうが片桐さんんん!」「お、怒りなや……」 とき既に遅し。一度怒った男――それもさっきまで一緒になって騒いでいた奴を収めるのは容易ではない。それは片桐とて例外ではなかった。 どこかからグラスをカンカンと鳴らした音と同時に、テツのマウントパンチが始まろうとしていた。 歌舞伎町で、ゴングという名の除夜の鐘が響いた――。
本題から入ろう。家の前に女が倒れている。 簾のような黒髪で顔を隠し、ドアの前でもたれかかっている女の姿は、ちょっとしたホラーだ。一週間遅れのサンタクロースからのプレゼントとして受け取るにも、タチが悪すぎた。 布切れのような薄地のスカートから、堂々とはみだしている肉付きの良い足に目が行く。ストッキングを着用している様子もなく、つきたての餅のような真っ白い足が、ただだらんと転がっていた。 数分の間、見とれてしまった自分に喝を入れ(勿論茫然としたという意味合いが強いが)、その女を起こそうと試みる。しかし、いかんせんチキンな僕は、かける言葉が見当たらない。体を揺らして起こしてみようとも考えたが、他人様が見た時に、変質者扱いされる気がして、なんとなく気がすすまない。 それに、彼女に誤解され、悲鳴でも上げられたら。そう考えると、余計気がすすまない。「罷り間違って、マウントパンチなんか喰らいたくないしな……」 現実味のない状況で、現実味のない独り言を呟く。そして僕は、ポケットから携帯電話を取り出し、家にいる妹に電話をかけた。 ○「お風呂上りだったのに。お兄ちゃんのせいで湯冷めしちゃったじゃない」「仕方ないだろ。緊急事態だったんだから」 そう言いながら、石鹸の香りを漂わせる妹に感謝しながら、酒の匂いをまき散らしている女を、僕は布団に寝かせた。 これは、今からちょうど一週間前、女の子が道端に落ちていますように、なんて卑猥な祈りを神様に捧げた、僕への罰であろうか。あぁ、そうだ。きっとそうに違いない。「……この人、確かうちの隣に住んでる大学生さんじゃない?ゴミ捨て場で見かけた記憶があるんだけど」 妹の言葉に、あぁ、確かにそうかもしれない、と記憶が定かではないうちに、賛同する。「一度話したことあるけど、近くの大学の文学部って言ってたっけなー。文学少女でも、そんな姿で乱れちゃうのね」 ククク、と笑う妹の声がした。僕は、もう一度女の顔をまじまじと見つめる。何故か目に入るのは、その異様な肌の白さだけだった。「おーい、そろそろ起きてくれませんかねぇ」 ぺちん、ぺちん。冗談混じりの声と共に、女の頬を軽く叩く。 すると、あーら不思議。白雪姫で言うなら、王子様がお姫様に接吻をした直後の状況が、僕の目の前に颯爽と訪れた。「お兄ちゃん?どうしたの?」 妹の声は聞こえない。売れない芸人が、ルンバで腹踊りをしている映像が、四角い画面越しに僕の視界に入った。 ○「見ず知らずの方の家の前で……あんな醜態を。本当にごめんなさい」 女はそう言いながら、床に頭を付ける。大学生が自宅警備員である僕に、土下座をしている姿は、“シュール”という言葉以外に、該当するものが見当たらなかった。 その姿を見て、苦笑いする妹。僕は、無理矢理笑顔を作り、言葉を返す。「まぁまぁ。見ず知らずって言っても、お隣さんなんだし。気にしないでください。ほら、頭をあげてくださいよ」「そうそう。こういうことも、人生に一度くらいありますから」 一度でもあってたまるかよ、と、僕は心の中で高らかに叫ぶ。 顔を真っ赤にして、うろたえているお隣さんの姿を見ると、そんなことは口が裂けても言えないのが、現実である。「……あの、何があって、こんな大晦日に、あんな姿で酔っぱらってたんですか?」 興味本位でそう尋ねる妹の頭を、僕は軽くこづく。本当なら、多少叱るフリでもした方がいいのかもしれないが、正直なところ、その理由は僕も聞きたかったのだ。「……今日、彼氏にフラれちゃって。一人じゃさびしくって、ホストの方と一緒にお酒を飲んでたんです」 突然、どんよりとした空気が、家中を占拠した。僕と妹は顔を見合わせる。普段は饒舌な妹も、この急な展開に飲まれてしまったようだ。「あ、でも気にしないでください。すっごい優しいホストの方だったんで……あ、その人、片桐さんっていうんですけど、彼のおかげで吹っ切れたんで」 えへへ、と続けるお隣さんは、痛々しく笑う。 この空気に耐えられなくなった僕は、僕らしくもなく、状況をぶち壊す一言を放った。「今年の締めくくりに、蕎麦でも食べに行きましょう」 二人が大きく目を見開いて、僕を見ると同時に、除夜の鐘が遠くで響くのが聞こえた。ふと時計に目をやると、当たり前のように十二時を過ぎていた。 僕は時計の針を戻したい衝動に駆られるも、この騒々しさと共に、新年を迎えることを決意した。 むちゃくちゃすぎる自分に拍手。相当時間オーバーしてます。 次の三語は表現を大事にして書こう。これ抱負。
「片桐さんは歌舞伎町NO.1のホストだけど、ルンバで腹踊りはしないはずよ」「あーわかったわかった」 私は酔っ払った親友の美佐子に肩を貸しながら、面倒くさくなった。傷心の美佐子に連れられて、ホストクラブに行って騒いだまでは良かったんだけど、美佐子に中では、もうすでに何か壊れていたようだった。多額の勘定に壊れたのは私のほうだったけど、無理やりでも美佐子をホストクラブから連れ出したのは成功だった。肩に、美佐子の重みを感じながら見上げた夜空に星は見えなかった。「どうせ、家に帰っても、妹が先にお風呂に入ってて、コタツでお餅でも食べているに違いないわ! 私のことなんて誰も待っててくれないんだから!」「あーはいはい」 美佐子の叫びに、道行くスーツにトレンチコートを羽織った通行人が振り返る。大晦日だというのに、仕事だったのだろうか? ご苦労様。ちゃんとこのアラサーの娘は私が連れて帰るから、ご心配にならなくても結構ですよ。それとも貴方もアラサーで、美佐子の一生の面倒を見てくれるなら、近くのラブホテル代くらい出すから、一年のストレスをこの娘で発散してくれても構わないわよ。別に馬乗りになって、マウントパンチして、とんずらしてもこの娘は起きないわよ。一度寝たらの話だけど。 その通行人と目が合ったのは一瞬で、すぐに私に背を向けて行ってしまった。 何よ。妙齢の女が二人もいるというのに、声くらいかけてくれてもいいじゃなのさ。意気地ない奴ね。全く少しでも顔に自信があるつもりなのかしら。確かにそりゃ、悪い男じゃなかったわ。背中から分かるくらい、いかにも社会人慣れしてませんって感じがたまらないわ。大晦日でも仕事する真面目なところも、草食系らしくてポイントよね。ああ、草食系なら、肉食な私からいかないとダメなのか。ああ、なんてこと。今年最後の男が逃げていく。三人でヤッてもいいわよ。「こらー。麻衣、どこを見てる?」 美佐子が私の肩に掛けていた腕を、私の首に回してくる。美佐子の体重が全身にかかってきて、私は右足に力を込めて背筋を伸ばした。「あーなんでもないわよ」「嘘おっしゃい。あんたが黙って、ヤローを見つめるときは、ろくでもないことを考えているときに決まってるんだから、昔からね」 美佐子はさらに私に体重を預けて、私にうなじを見せながら「ククク……」と笑って見せた。「まったく、昔は文学少女だったくせして、なんて言い草」 美佐子とは高校からの付き合いだ。お互いに受験の失敗も男の失敗も、味わってきた。「あらー、文学は結構エロエロなのよ。文学すなわち、エロ! エロすなわち――」「叫ぶな!」 私は思わず、美佐子の腕を振り解く。美佐子は二、三歩よろめいて転ぶ。それでも、美佐子は笑っている。「大晦日の晩に何やってるんだろう……」 美佐子は笑いながら呟く。アスファルトに尻をつけたまま立ち上がろうともしないで。 美佐子が結婚間近だった男と別れたのはクリスマスのことだった。正確にはイブの晩のことだ。もともと、他の女の影がちらちらしていたところに、男から差し出された指輪の裏に他の女の名前があったのだから、仕方ない。男は必死に、店の間違いだったと言い訳していたが、薬指のサイズ自体間違っていては、言い訳も聞くに虚しかっただろう。「いいじゃない。男とは別れることはあるけど、友だちとは離れることはあっても、別れることはないんだから」 私は美佐子に手を差し出す。「何よ。別れる存在だから、惹かれるとか言って、あいつと私をくっつけようとしたのは、どこのどいつよ」「さぁ? そんなことあったかしら?」「あんたって、ほんといい性格してるわよね」「美佐子ほどじゃないわよ」 美佐子が私の手を取ってゆっくり立ち上がる。と同時に、遠くから除夜の鐘が聞こえた。「今年も終わったわね。一年の締めくくりが麻衣と一緒だなんて」 美佐子が言う。「違うわよ。新年が始まったのよ。それにしても、新年の始まりが美佐子と一緒だなんて、今年も先が思いやられるわ」 私が美佐子に言葉を返す。「美佐子って何気に、言葉が酷いわよね」「何よ今さら。それとも私と一緒より、一人虚しく年を越した方が良かったってわけ?」 私は美佐子に微笑む。「もっと幸せな新年を迎えるはずだったってことよ。それより、初詣行きましょう。初詣。今年はもっと良い男を捕まえるんだから」「いいわねそれ。私は美佐子より良い男を願おう」「それは、神様も難しいんじゃないかしら?」 美佐子は白い歯を見せて、笑う。私はその笑顔に少しほっとする。どうやら吹っ切れて新年が迎えられたみたいだ。 私たちは初詣にゆっくり歩き出した。足取りは軽かった。―――――――――――――――――――むりやり全お題消化。締め切りはオーバーですが。タイトルが浮かばないな。もっと良いタイトルがあるはず
>物語が終わるなら 片桐さん物語が終わることを読者が惜しむというのが、本当に良い作品と聞いたことがあります。まさにそんな感じですね。その惜しさが、大晦日と絡んで良く出ていたと思います。惜しくらむは、視点がやや行ったり来たりしてややわかりにくかったところでしょうか?>みーたんさんシュールな話ですね。お題を無理につなげたからでしょうか?歌舞伎町で、大阪が出てくるのが、よく分からなかったり。登場人物の話を少しでも出してくれると良かったように思います。>千坂葵さん冒頭の比喩から、ぽっちゃり系の女性をイメージして、比喩って難しいと思うわけです。場面転換があって読みやすい一方で、流れがそこでなくなって、深くならなかったように思います。ラストはやや無理矢理かなと。強引に終わらせた幹事でしょうか?>来年はきっと・・・・・・ RYOとくに語ることもなく。お題を使うことにだけ頭が行ってます。ま、なんとかまとまったかなと。