宵の歌
長く一緒にいるほど実感するのは
どうしようもなく貴方は他人だってことで

そこれこそ
紙に日記に書きなぐってみたり
たった二行のメールに全力の想いを込めてみたり
電話で勢いに任せて喚いたことだってあるし
頬を初めて打たれたのは他でもない貴方だったわけで

何が正解かわからない中で
手に余るコミュニケーションを繰り返してきたけど
僕が伝えたかったことは齟齬無く貴方に伝わっているだろうか

僕が、貴方とこうありたいと思う事は
押し付けになってはいませんか

僕の、ただのワガママを許してくれているだけですか
本当は嫌なんじゃないですか

理想の関係ってなんですか
どうすればそうなれますか

貴方は何者ですか
僕は何者なのでしょうか


例えば

理想の自分や環境を想うだけじゃ駄目で
声にだしていかなきゃ駄目だ
なんてことは
至極当然のことのように両親から教えられてきた僕だから

声だけでもやっぱり駄目で
想いの無い声はただの刃でしかないのだと
それは悲しいことだと
そんなの当たり前だと理解しているつもりの僕だから

似たもの通しの僕らはきっと同じで
どちらも踏み出せないスパイラルにはまり込んでいるんだろうな

僕の左手の痕みたいに
痛みと涙の中で
見える傷にしか寄り添えないとか
そんな子供みたいなことはしたくないし
そんな寂しい関係性だとは思いたくないわけで

余計、怖くなったりしてる

嗚呼

どうして貴方はそんなに優しいのかな
夢の中だってこんなにうまくいかないのに

もしかしてコレは夢なのかな
であれば、僕はこのマトリクスにずっと溺れていたい?
なんて妄想に浸ってみたりして

いや、だめだ
精神世界に逃げては駄目なんだ
そうあるべき人間を、理想を求めては駄目なんだな
見捨ててはいけないんだ
愛すべきモノはそれなんだ


夕食後にソファーに並んでドラマ見てさ
何か突然、自然と手が触れて繋いじゃって
そんな時間が幸せだねって笑い合うのも「愛」ならさ

私の嫌いな私
貴方の好きな私
二つ合わせてやっと私だね、って
そういって指輪を受け取ってくれた貴方の笑顔とか
形式上の関係性だって「愛」だと思うわけで

だからこそ

布団を被った貴方が
んーっと唸ったのを聞いて
「わかった、朝食は作るよ」なんてぼやいた僕は
はっとした後
何も問題ないじゃないかって笑うんだ
僅夜
2019年12月06日(金) 02時02分56秒 公開
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泥酔しています

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No.1  虎竜  評価:40点  ■2019-12-08 23:29  ID:9pxemaegKFc
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他者から見ればドラマ。御本人にしたら日常風景でしょうか。
気持ちの距離と手応えの行ったり来たり。
次元がいくつあるのか知らないけれど、大事なのはそれらが優しく包まれていることだと思いました。
だからここにいられる。そこにある空気まで感じいった次第です。
総レス数 1  合計 40

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