ステンドグラス

もう失われてしまった路で
ステンドグラスの小窓を見た
夕餉どきだったか夜半だったか
こがね色の明かりを色づけして
ひっそりと光を投げかけていた

思い出すのは、はさみで切った色セロハン
黒い紙に縁取られた絵はなんであったか
浮かびあがる舞台と影絵ほどのあやうさで
記憶に残されている時代

水槽の硝子は反転した教室を映していた
水蘚の緑のなかにふたつの世界があって
小さな鱗は狭々しい中をただよい
小さな顔たちはそっぽを向いていた

待ち望ぞんだ窓際、水槽に近い席
私はそこに居て、ふたつの世界を交互にたしかめながら
端っこにいる幸せをかみしめていた
あらゆる時間が幸運なものだと知らずに

よく眺めていた折り紙の本
手裏剣や花や兜の折り方まで教わったのだっけ
本の最後にあった雄雄しいやっこ
ついにそれは作れず、時代は変わってしまった

あれから随分と私の世界はひろがった
際限なく遠のく周縁のうちがわで
たかまる空疎と芽生える寂しさ
セロハンの影絵はいつしか盆提灯にかわり
夢たちはひっそりと暗がりに灯っている
冬将軍大佐
2015年12月28日(月) 23時30分21秒 公開
■この作品の著作権は冬将軍大佐さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
昔の途中までだった詩を昨日きょう掃除の合間に最後まで通しました。まだまだ推敲ぶそくでつが。

この作品の感想をお寄せください。
No.10  冬将軍大佐  評価:0点  ■2016-01-30 14:20  ID:hB6/jNV6c8Y
PASS 編集 削除
青空様
感想ありがとうございます。粋や浪漫などと当方にはもったいないお言葉でつ。まだまだ不完全なところや納得できないところがあって、洋酒を見習いあと何年かこのカルーアミルクを樽の中でねかせる必要があるようでつ。「> 奥底に深い思いがあって」 ばれましたかてへぺろ・・・なちゃて。それほどでもないです浅いモノでつよ。多分最終連あたりのことでしょうか。でも実は自分は恵まれた環境にありまつ。でもいつか恵まれていない日に出合うときもくるでしょう。その時を何年か過ぎてあらためてこの作文を読んだら盆提灯などと安易に使っているなぁと思うかも知れません。読んでくださりありがとうございました。

============


スレッドを閉めさせて頂きます。
ありがとうございました。


==========-
No.9  青空  評価:50点  ■2016-01-18 21:30  ID:fH7ZN1q52oE
PASS 編集 削除
粋ですね。テーマをステンドグラスに込めたのが浪漫です。
もっと奥底に深い思いがあって、その殻を突き破って感情や言葉が流れ込みそうな、しっかりとした詩でした。
まるで、甘美な洋酒を味わうように、潤す詩でした。
(−−;お、おっみそれ〜
No.8  冬将軍大佐  評価:--点  ■2016-01-04 22:39  ID:UZbHSkHuPqE
PASS 編集 削除
たびたび貴重なご意見をありがとうございます。たしかにそうでつね。欧米文化に慣れ親しんだ人や欧米人にこのステンドグラスのイメージは伝わらないかもしれません。桐生さんの受けた印象のほうがより正当でスマートでつね。「もうどこか忘れてしまった路で」みたステンドグラスってのは日本の住宅街のちょっとしたお洒落な小窓のことでした。ステンドグラスと銘打って風呂敷をひろげた当方に責任があります。ご助言ありがとうございました。
No.7  桐生瑞千  評価:0点  ■2016-01-04 22:24  ID:5tggrX4ytO2
PASS 編集 削除
あぁ、これはステンドグラスそのものの認識が違うんですね。私とっては、大聖堂で文字の読めない子供たちに聖書の物語を教えるためのもの、あるいは校舎において学校の理念を表すためのもの、でしたので。どうしても永く知らせるものというイメージで見ていました。
これは触れてきた文脈の違いですので、冬将軍さんの不足ではありません。私の方がうっかりしてました。

No.6  冬将軍大佐  評価:--点  ■2016-01-04 20:43  ID:UZbHSkHuPqE
PASS 編集 削除
桐生瑞千様
感想ありがとうございまつ。そうでつね題名はちょっと直感に頼りすぎました。投稿を急いだので。手抜きがばれましたでつね。直感というのは好きなアーティストのタイトルに"Stained Class"というおあつらえむきの言葉遊びがあったので。
ステンドグラスの抽象性や恒久性については「あらゆる時間が幸運なものだと知らずに」に集約・帰着させたつもりでつ。伝わらなかったのなら技術不足&推敲不足でつね。「色鮮やかな時代」みたいなワードを入れとけばよかったでつかね。要するに幼少時代(やその夢)はいつでもステンドグラスのように聖らかで輝いていたと作者は思ってまつ。で、現在は作者にとってどんよりと色あせた時代であり、夢の火は消えつつあります。たしかに全体的に色褪せてまつね。浮かび上がってくるような光輝が決定的に足りません。ミスタイプもありました恥はさらしておきまつ。愚作にお付き合い頂き有難うございました。
No.5  桐生瑞千  評価:20点  ■2016-01-04 01:29  ID:5tggrX4ytO2
PASS 編集 削除
ステンドグラスの原色というよりは、全体に色褪せた感じになっているのがどうなのかなと思いました。
ステンドグラスの持つ抽象性や恒久性といったものが抜け落ちて、思い出や憧憬にとってかわられています。
この詩の題はセロハンの方ではありませんか。
No.4  冬将軍大佐  評価:--点  ■2015-12-30 10:55  ID:UZbHSkHuPqE
PASS 編集 削除
ヤエ様
セロハン(セロファン?)でステンドグラスみたいなもの皆さん作っているのでつね。なんか年を重ねるごとに子供時代が輝きを増していく感じでつ。折り紙の折り方なんてツルでさえもう忘れてしまいました。最後の所、くんでくださってありがとうございます。最後の連が比較的短時間で作れたのはラッキーでした。感想ありがとうございました。
No.3  ヤエ  評価:50点  ■2015-12-30 02:01  ID:Uf7XqFVsX0k
PASS 編集 削除
あぁ、懐かしいなぁって感じました。
昔セロハンでステンドグラス作りましたよ。
他にも所々小学生の頃のぼんやりとした、それでいて満ち足りた時間を思い出せました。反復がまたいいですね。
セロハンの影絵から盆提灯への行が鮮やかで、仄暗くて、美しいです。
素敵な詩をありがとうございます。
No.2  冬将軍大佐  評価:--点  ■2015-12-29 19:38  ID:UZbHSkHuPqE
PASS 編集 削除
阿印陀布様
感想ありがとうございました。おかえしの感想入れときましたm(_ _)m
No.1  阿印陀布  評価:40点  ■2015-12-29 00:13  ID:GXd7rW6H.9o
PASS 編集 削除
情景がうかぶやふです。好みです。
総レス数 10  合計 160

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除