夏夢

 笑っている
 午前零時の海辺
 中古のカフカを呟いて
 君は笑っている

 明日なんて大嫌い
 永遠に来ないくせに偉そうで
 どこかの先生みたいよ
 そう 笑っている

 真鍮のランタン
 ノイズ混じりのラジオ
 いつから僕らは
 居場所を見失ってしまったのだろう

 わからないよ ずっとずっと
 叢雲の裏側 砂の城跡
 崩れ流れて 消えてしまうんだろう
 それだけが わかってた
 それだけは 知っていた


 波打ち際
 君は次のページをめくる
 カフカの次はシェイクスピア
『雑食なの、あたし』って

 人生なんて真っ平だ
 永遠に続くわけでもなかろうに
 どこかの茶番なのかな
 ただ 黙っている

 油ぎれのランタン
 ノイズがジャズに変わる
 サクソフォンのソロ
 夜明けには忘れてしまうだろうか

 わかっていた きっとそうだ
 月光の窓辺 背表紙の字
 失って尚 否定したツケなのかな
 ならばもう 笑っても
 嗤っても 無駄かしら


『嗚呼、なんと呪われた因果か』
 カフカを手放して 君が唄う
 夜の水の縁
『ずいぶん遠くまで歩きました』
 試しに叫んでみれば 君は笑って
 苦労してないでしょ、って

『そんなに辛いなら
 あたしが貴方の心を砕いてあげる
 それが嫌なら
 ありのままのあたしを愛して』

“ 高飛車なオフィーリア ”

 気づいていた ずっとずっと
 星空の破片 朧月の死者
 忘れて消えるなら 今のうちに
 笑おうか 散々に
 嘆こうか そうしよう


 ラジオが切れる
 汐が満ちる
『How sweet the moonlight sleeps upon this bank』 !
 君が笑う
『If it were now to die, Twere now to be most happy』 !
 僕は唄う
 手を繋ぐ
 攫われていくサンダル


『真夏の夜の夢』

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2016年07月05日(火) 01時35分23秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しゅうございます。

カフカとシェイクスピアを突っついてみたくてやりました。

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No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:--点  ■2016-07-23 15:18  ID:eFOY3cHRZZU
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浅 様

コメント感謝致します。
言葉に気を使ったので、楽しんでいただけて嬉しいです。
ありがとうございました。
No.1  浅  評価:40点  ■2016-07-22 13:06  ID:ZCtGeB.LeMo
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遊んでるような言葉がとても楽しかった。
ありがとうございました
総レス数 2  合計 40

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