先を行くあなたには追いつけないけれど
目的地は何処だっけ? 
ゴールは何処だっけ? ホームは何処だっけ?
行き着く先は? 帰り行く場所は?

ただ立っていた。
立っていたんだ。


明日も昨日もなかった。
追い風も向かい風も、力になんて出来なかった。
風に身をゆだね、空を飛ぶ翼など、最後まで手に入るはずもなかった。
風に身をあらがい、その元へと辿る地図なんて、最初からその手になかった。

その終わりの果てへ、その始まりの果てへ、飛び立つ幾つもの旅人を、隊列を、見送った。
時にその顔に手を振り、時にその背中越しに祈り。
瞳には幾つもの光が映され続けた。
だけど、それを映す自分の瞳が輝くことはなく。
やがて、景色は滲んでいった。
悔しかった。

走り行く足音が聞こえる。
笑い合う掛け声が聞こえる。

それらの音も、やがて消え、残響も酷く曖昧になった。
声は消え。
輪郭はかすれ。

真っ直ぐに目的地へと歩むことの出来ない自分だけを知った。
そもそも目的地など見つけられない自分だけを知った。


やがて、決めた。
決めたんだ。
とにかく歩むことを。
迷子になることを。
歩み続けるんだ。迷子になり続けるんだ。
この地面に立つ両足を、目的地そのものにしよう。

世界は広く。
道は分かれ。

ここが何処かなんてわからない。意味も光も、無いだろう。
でも、その両足がふれる接触面が、僅かな、でも自分の場所。
揺れ続け、惑い続ける目標地点。

これまでの足跡は随分と散らかっている。でも、愛おしい。照れくさくも、抱きしめてやりたい。
これからの足跡は何処へ向かうのだろう。明日の自分の頭をぽんと叩けるよう明後日に迷ってやれたら。
えんがわ
2014年09月13日(土) 04時49分22秒 公開
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No.4  えんがわ  評価:--点  ■2014-09-14 22:39  ID:0AQwZ7VS.L2
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>アカショウビンさん
いい、ですか。嬉しい!

お褒めいただいたのですが、「>晴れやかな周り」はもうちょっと丁寧に書けただろう、とか思ったりしました。
何なのでしょう。こう、自分自分してしまい視野が狭まってしまったというか。と考えが発展したり。
でも、好感をいただいて、これはこれで、このバランスで何とかなってるのかなとか、甘えよう。

何か自分はジメジメしてる奴ですが、秋の港町をぶらついて、風に吹かれて、ちょっとだけカリッとしたのかな。だと良いな。

ご指摘のこの一文は、わかりやすく、でも印象に残れば、とふらつきながらも祈ってタイピングした部分でした。
こうして抜き出していただき、ありがたく、嬉しいです。
長文を読んでいただいたり、詩だったり別サイトだったり、たびたび声をかけていただいて、ありがたい限りです。
失望させてしまったのならご負担をかけずに見て見ぬ振りをしていただいてもと思うのですが、気になり続けていただいたのなら、またお声をかけてくだされば。


>陽炎さん

あっ、はい、ありきたりな感じで、昔も今も大ブームな「自分探し」って感じで、
でもちょっと考えが楽しそうな方向にむかったので、恐る恐る投稿してみました。
ほんとは変化球よりも、剛速球ストライク三振に憧れるのですが、そんな自力はなく。

「迷子」って、何か必要以上に悪者にされている気がして。なんとかと。

1連目、冒頭は、常にいろんな方からご指摘をいただき、これは弱点を超えて病のような気がします。
今回もその例に漏れることなく。
反復は多めにとったのですが、無駄な部分にもなっていて、ありきたり感がそれを加速させて、それで駄目な一連?
ムズイです。

4連目は前に書いた物に引きづられてしまっていて、イメージの中では渡り鳥、というかそんなのがあって。
でも、そういうのは解釈を狭めてしまったり、わけわかめになってしまったり、反省です。
特に、今回は、歩く、足跡と言ってるのに! 恥ずかし……

どこまで書けば、伝わるだろう、どこで止めれば、考えを膨らませていただけるだろう、とか思ったりして。
なので、陽炎さんのイメージを聞けて、涙涙に嬉しかったです。
自分はこの文章の「自分」のような強さや信念はないのですが、どちらかというと迷い続けるのでしょう。
ありがとうございました。


>逃げ腰さん
はじめまして? はじめまして…… はじめまして! ですよね?

冒険物語は大好きで。
「ネバーエンディングストーリー」とか、「紅の豚」とか「ラピュタ」とか。
ちょっと古い、です。
現在のジブリは、何か方向が変わった? みたいなのは自分も感じていて、いろんな視点があると思うのですが、
逃げ腰さんの視点はすごく独特で、びりっと来ました。

やがて、決めた。
からで上手い感じに動き出してくれたようで、それは少し頑張ってそれ以上に偶然なんですが、心に残していただき嬉しいです。

逃げ腰さんのコメントには、すごく、大きな視点を感じて、刺激たんまりなのですが。
(ほんと、自分の駄文に、不釣り合いで申し訳ないです)
自分って基本馬鹿で、ぼろがボロボロなのはともかく、上手く言葉に出来なくてほんとすいません。
ぽつぽつと心に残して、逃げ腰さんには不本意かもしれませんが、妄想たくましく消化していこうと思います。
ありがとうございました。


作品集のログを辿ってしまったのですが、
アカショウビンさんの「婚姻色 」
陽炎さんの「ただ、そこにある奇跡」
に感想を書かせていただきました。
ほんとう、ストーカーチックな自己満足なんですが、たぎる想いはそんな感じですっきりと。
ありがとうございました。
No.3  逃げ腰  評価:50点  ■2014-09-14 05:52  ID:j.IsO/gOFss
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お邪魔します。
もしかしたら初めてのコメントかもしれません。
失礼のないよう、初めまして逃げ腰です

何か気づきがあればと思いましたが、陽炎さんが丁寧に解説していますので構図よりも物語を僕の見た感じから失礼いたします。話半分にお付きあい下さい。

これから少年少女の冒険が始まるような高揚感が僕は好きです。
教養小説つまりビルディングスロマーンですよねぇ。少年が人類の罪の発見と自然界・精霊界との対話を通じて新たな世界と栄光の人生を歩む類型文学は古今東西ありますね。
近代で絞って言えばドイツは熱いわけですが、どうも現在の成熟し政治・社会・文化が充実してる世の中ではなかなか成立が難しいですね。

ジブリなんていうのはまさに教養文学の亜種なわけですが、どうやら寓話を積極的に用いて現実のノイズをそぎ落として我々に伝えているみたいですね

この詩をそんな視点で見ていました。

『目的地は何処だっけ? 
ゴールは何処だっけ? ホームは何処だっけ?
行き着く先は? 帰り行く場所は?』

とても寓話的だと思っています。
『目的地』『ホーム』『帰り行く場所』はどれも存在しないみたいですね
また、
『ただ立っていた。
立っていたんだ。』

そうなんです。立っている。<いま、ここ>ではなく、<未来/過去、ここではなどこか>にだと感じています。
切り取られた物語の舞台。

そして、

『やがて、決めた。
決めたんだ。
とにかく歩むことを。
迷子になることを。
歩み続けるんだ。迷子になり続けるんだ。
この地面に立つ両足を、目的地そのものにしよう』

面白いなぁと思うのは作った物語の正当性に依拠しないで諦めてしまうこと。
消極的でも現状肯定していく。
それこそゲリラ的に。

ちなみにジブリは現在<ここではないどこか>を止めつつあり、<いま、ここ>を物語にしようと努力しているみたいです。だからといって寓話が劣るわけでは一切無く、寓話だからこそ辛く厳しい現状肯定が想像力として担保できうるものではないかと強く思います。

…しかし突けば突くほどボロが出そうな感じですが、長々と戯言をすいませんでした。





No.2  陽炎  評価:30点  ■2014-09-14 00:51  ID:u.WSYo.ISRY
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こんばんは、拝読しました

こういう、自分はどこへ向かおうとしてるのか
なにを目指していまこうしているのか、という
自問自答するような詩って
いろいろ紆余曲折あって
自分の中の迷いも受け入れて前に進もう、っていうのが
まあ、よくある展開というかパターンみたいな感じだと思うんですが
えんがわさんのこの詩の、ラストにかけての、
「迷子になる」という決意表明が
なんだか新鮮な感じがして面白いなあ、と思いました

私などが云うのもおこがましいのですが
構成も言葉の配置もしっかり考えられているので
読み応えも十分にあると思いました

ただ、あくまで私個人的な意見ですが
1連目をなくして、2連目から始まったほうが
より読者の興味を掻き立てることができるのではないか
という点と

4連目の「飛び立つ幾つもの旅人を、隊列を、見送った」
ここ、違う表現でもよかったかもしれないなあ、という点
(隊列という表現から、飛行部隊とか特攻隊とか≪飛躍しすぎかもですが≫
そっちを連想してしまったので)

その2点だけが少しひっかかりましたが
あくまで私個人の意見ですので
こういう意見もあるか、くらいに受け止めていただければ幸いです

あらかじめ目的地を定める生き方よりも
迷い子になって、思いもかけない出会いや経験をしていく

この詩の主人公は、そういう生き方を自分として選んだ
迷子になることを迷わない、という選択
そういう生き方もきっと、素敵な生き方だと思います

長々と失礼いたしました
No.1  アカショウビン  評価:50点  ■2014-09-13 20:16  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。
 いいですね。
 晴れやかな周りと孤独な自分。まるで新印象派のような絵のようです。
 バックボーンを感じるようなしっかりした作風でとても雰囲気がありますね。いつものえんがわさんよりカリっとしているような。現実を認めて強くなろうという意志が効果的に表現されていると思います。
 特に
 >この地面に立つ両足を、目的地そのものにしよう。
 この一文が秀逸です。前も先もない、今ここの自分でしょうか。とても良かったです。
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