女神への手紙



私のすべてを信じるはずの眼差しが
まぶしい

あなたは

−−女神ではありません

と仰るけれど
私の前でその光は永遠に消えない

思いつづける私は
地べたの草をむしりながら
メー
とだけ独り鳴く羊

もし、もしも、
あなたが、もしも私の前に
現れてくださったなら
あなたが振り向くときにおこる風に
私は、
塵のように消えゆくでしょう
あなたを穢さないために







お元気ですか?

お訊きするまでもありませんね
あなたは今でも
いつまでもやさしく
私に微笑みかけてくださいますね


高校生の時
あなたを侮辱する者を
殴り殺そうかと本気で思いました
でも、ご心配なく
私は黙っていました
そんな餓鬼に穢されるようなあなたでは
ありません
ただ、悔しくて
何十年経った今でも忘れません



こんな手紙はあなたには出しません
でもちょっとだけ
書いて、
水に流したかったのです

あなたの幸せを祈ります
それではまた





游月 昭
2014年05月31日(土) 00時52分41秒 公開
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No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-06-22 22:53  ID:HGGGNe196sc
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海月さん、こんばんは。もう会えないかと思いましたが、そうですか。親御さんはデビューまで隠しておけ、っというおつもりなのでしょうね。(^^)しかし、ずば抜けた表現力のある詩を簡単に読めなくなったのは残念ですー。

私は、恋は感情、愛は意思と、現在のところ思っています。恋は螺旋階段を上がるとじわじわと感情が熱くなっていくのと同じようなものですね(『朝の風景』とは意味が違うでしょうが)。この手紙の詩は実話を元に〜に近いので、感情を理性で抑えながら書きました。宗教色がやんわりとかぶっていることがそうなのかな、と思います。ちょっと休憩〜的な感じで軽く書いたのでお恥ずかしいです。
また機会がありましたらお寄り下さい。
ありがとうございました。
No.5  海月 ヨル  評価:40点  ■2014-06-22 12:54  ID:B.1FW4nyJ76
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「思いつづける私は」のくだりが好きです。難解な比喩を使うでもなく、それでいていろんな情景が浮かぶ詩ですね。
女神というイメージは、こういう柔らかい文体とその中に秘められた強い感情にぴったりだと思います。私もこんな、手紙形式の詩を書いてみたくなりました。
私事ですが、「朝の風景」を投稿したのが親に知られ、「未熟な詩を投稿するのはやめなさい」と削除されてしまいました…せっかくのコメントも消えてしまい申し訳ないです。できればまた投稿します。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-06-11 13:49  ID:bi3DsvN5XiY
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Aさん、こんにちは。ご感想ありがとうございます。

Aさんの文を読んで、色々と考えていました。
今回は手紙という形になっています。
手紙という枠を外した主観の詩として書くことも可能だろうと思います。しかし、手紙になる。手紙だから相手に読んでほしい。でも出さない。住所も知らない。でも知らなくていい。今の「あなた」を知りたくない。「あなた」は何十年も前のままの笑顔で「私」に微笑みかける。時が経てば立つほど「私」の中で神格化されていく存在。宗教的な「女神」「羊」「穢れ」「餓鬼」「永遠」「光」「信じる」という言葉が自然に出たということは、実際に私(游月)がそう感じているからなのでしょう。「あなた」に、私、「私」、は会った事がありません。もの凄く会いたい反面、会いたくありません。
憧憬、も長く続くと、崇拝に近づくのだ、ということに気づかされた詩になりました。「私」は「あなた」の前で、「偏(ひとえ)に風の前の塵に同じ(←平家物語冒頭のしめ)」→「(ただひたすら)メー/とだけ独り鳴く羊」

Aさんに、そういう気持ちを起こさせる方は居ますか?もしかしたら、一人の人にそんな感情を抱く人は少ないかもしれません。
ありがとうございました。
No.3  A  評価:30点  ■2014-06-07 23:40  ID:pA0QzJ9KbiA
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拝読させていただきました。

メーとだけ鳴く無害な羊の感じを想像すると面白いです。ただ、意味の流れは分かるのですが、羊のイメージから急に風に吹き消える塵のイメージに変わるのはちょっと唐突かも?と思いました。それより、その後が面白いです。無害なはずの羊が「殴り殺そうか」と思ったというのは意外性があります。何十年って、実際どのくらいなんでしょう。一人の女性の心象が女神のように神聖化されて。その女性に加えられた侮辱に対する怒りと悔しさがずっと残っているというのは、凄いですね。
No.2  游月 昭  評価:0点  ■2014-06-01 18:35  ID:mnj3PHJyRQI
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楠山さん、ご感想ありがとうございます。

比較的、素で書いてみたものです。

神聖の暗示と暴力への移行は、人間、切っても切れないものかもしれません。

No.1  楠山歳幸  評価:40点  ■2014-05-31 19:18  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 最初は聖書風ですね。
 とても雰囲気があって良かったです。
 宗教は個人的にあまり好きではないのですが、こういう使い方は気持ちを感じて好きです。
「もしも」や「穢さない」が良いですね。

 殴り殺すは少し過激かな、と思いましたが、素直な気持ちも感じるのでこれでいいのかな、と思いました。

 思春期の切なさとか二人の微笑ましいシーンを想像させる素敵な詩でした。
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