スイート・ヒーロー



幼児が歩く
しかしヒーローはただ歩かない
片腕を肩から大きく振りまわし
降りかかる悪霊を払うように

彼に集まる熱い情念が見える
トルルー、ルー
瞳はまばたきに邪魔されず
遠い未来の点を見ながら
過去との会話に耽っている
トルルー、ルー
テヤッ!
母の手がほどける
突然走り出す彼の拳は渾身の力で
目の前に立ちはだかる壁を
クラッシュ!

危ない!
母の伸びた腕が彼を捕まえる
物陰に潜んでいた敵が
猛スピードで横切る
固まる
知り得ない恐怖の欠片を見せつけられ
彼は固まっている
母が駆けより大きな愛が降る
彼は溶ける
溶けた水は甘いキャンディーの頬を
次から次へと掻き分けながら溢れる

抱き上げられた彼の顔は
溶けて溶けて
母の胸の中で念仏が唱えられている
小さな靴はまた地面を欲しがり
母の顔を見る
下ろされた彼はウサギになった
夕日の温かい眼差しが
親子の結ぶ手を強く際立たせている



游月 昭
2014年04月19日(土) 17時11分02秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
幼児が無駄に動くのって、きっと無駄じゃないのだと思います。

車にひかれる前に母の声が、って私にも幼稚園の時にありました。

この作品の感想をお寄せください。
No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-23 15:49  ID:OjNIsuoFpuI
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陽炎さん、ご感想感謝致します。

実際には、幼児はヒーローが見栄を切る言葉を吐いているのでしょうが、この詩で描きたいものはそこではないので、、とは言え、この詩を書いたときのトリップ力が不足していて、その背景描写が薄く、ご指摘の言葉が少々浮いているのは確かだと思います。あちらの描写を削ったのですが、どうしてもそこが要になるので、削る勇気が無かったですね。二世界同時放送のつもりがチグハグですみません。もすこし上手く描けるよう精進して参ります。
No.5  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-23 15:36  ID:OjM7eTTbU0g
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青ガラスさん、ご感想感謝致します。

返信文を書いていたのですが、戻るをおしてOh〜No!すみません遅刻しました。

どのアートもそうですが、初心者という帽子も消えて、書けば書くほど書けていないということが分かってきて、もどかしいのですが、描きたいものが見えて来ている証拠でもあるのかな、とも思えます。書けなかった部分も描ける実力をつけて行けるよう頑張って行きたいと思います。
No.4  陽炎  評価:30点  ■2014-04-22 10:06  ID:u.WSYo.ISRY
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拝読しました

悪霊とか念仏というのが幼児らしくない、というか
ヒーローになったつもりでいるのならむしろ
変身するときの言葉とか
悪をやっつけるときの必殺技の名前とか
そっちのほうがしっくりくるような気がしました

子供を危険から守るのは親として当然だと思いますが
そうやって守られていま自分があるのだなあ、という
作者の気持ちも込められている
そんな詩だと思いました
No.3  青ガラス  評価:50点  ■2014-04-21 23:56  ID:6Sbbo4.76/Y
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トルルー、ルー
テヤッ!

ここ好きです!
幼児の生命力が伝わってきます。
生まれながらに持っているであろうこの力
魅力です。
母親と子供の引力や
月のウサギみたいな眩しさがとても力強く
表現されていると思いました。
素晴らしい観察眼ですね。
No.2  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-20 19:00  ID:OjNIsuoFpuI
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菊池さん、ご感想誠に感謝致します。

>親だから当たり前だろ
確かにそうですね。今思えば、当たり前のこととして、愛を貪るように受けていました。一人称として書くことも出来るでしょうが、これは、コンビニの前でみた幼児、無駄な動きをしている彼が遠い目をしていたことから発想しています。当初、本当に描きたかったことは、前半ちょっとだけ匂わせていますが、母の愛だけでなく、先祖(命を繋ぐように仕向けた者)がプログラムした、身を守る術(すべ)を身に付けようとしている、実行している、子と親でした。初稿でのわざとらしさに悩み、その部分を大半カットしました。そんなことから、第三者の視点になっています。
もっと集中して描きたいところですが、今はノリが悪いようです。
必ずもっとうまくなります。
ありがとうございました。
No.1  菊池清美  評価:40点  ■2014-04-20 16:37  ID:/dxzQ0Wmf36
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母と子の間にはそう言う事が有るかも知れません。

私が母の愛を認めたのはそう遠く有りません、全てが親だから当たり前だろ、でした。
母を詠った詩は良いものですね、今度行って来ようと思いました。

母の愛を認めないのは一種の反抗期だったのかも知れません、良かったです有難う。

目線が第三者なのが気に成りましたが、其れも有りだと不問にします。
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