萩ちゃん

営業車をおりると
汗が溢れる

夏の道路はやわらかく
すれ違う影はかたく

強い日差しがあたる
甘い香りの
白いシャツが歩く街で
思いだすことがある

それは中ぐらいの美術館
赤レンガの工場より小さくて
小型の帆船よりも大きい

いつだったろう
ゴッホの向日葵が
ここに展示されたことがある

ちいさな手に
懐中電灯を握り
真っ暗な
機関室の、
鉄の扉を開けると
吹き出すボイラーの向こうに
向日葵があった

がーんと頭がたたかれて、
向日葵畑を見ている
僕の後ろを

転校してしまった
萩ちゃんが
通った

声をかけたら
海賊みたいな笑顔で
にっと歯を見せて
走っていった

萩ちゃんは
僕の友達だったのに
みんなと一緒に
いじめてしまって、
ごめんなさい。

優しい気持ちが足りなくて
ごめんなさい。

あれから
萩ちゃんと会っていない

向日葵畑のあれは
ほんとうに、
萩ちゃんだったのかな

営業車を降りると
汗が溢れる

居心地の悪い夏は
萩ちゃんと
またやって来るのだ



レオ
2014年01月24日(金) 22時33分29秒 公開
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No.5  レオ  評価:0点  ■2014-02-02 21:46  ID:SdyHZLGzI7M
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謝染さん、ありがとうございます。過分なお言葉をいただき、恐縮しています。
游月さん、ありがとうございます。詩の底に触れるような読み方をしていただき、ありがたいです。
青ガラスさん、ありがとうございます。向日葵が向日葵畑に変わる、その通りでした。炎よりも濃厚な向日葵のイメージを持って読んでいただき、ありがとうございます。
笹竜胆さん、ありがとうございます。私は反現代死さんではありません。しかし、反現代死さんと、ザイチさんの詩を意識して書きました。

皆様、ご感想をありがとうございました。
No.4  笹竜胆  評価:40点  ■2014-01-31 00:41  ID:dnGE9RZSFmA
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 反現さん、だとして話を進めます。
”荻ちゃん”は階段の最後ではないでしょう。踏まれてこそ次へ繋がる。多少の揶揄で崩れるような方ですか、あれが。
 とはいえ、愛の欠如はゆゆしき問題ですけど。
No.3  青ガラス  評価:50点  ■2014-01-29 07:39  ID:6Sbbo4.76/Y
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機関室の鉄の扉
吹き出すボイラーのその向こう
ゴッホの向日葵ですか、、
わたしも、ガーンとしてしまいました。
炎より濃厚な向日葵が端座していますよね。
斬新で釘ずけになってしまいました。
赤煉瓦の工場あたりから何かくる予感はしていましたが
この美術館は衝撃的でいいですね〜。

向日葵が向日葵畑に変わってしまうと切り替えに戸惑うのですが
現実の居心地の悪い夏、受け入れるしか、、、。ですね。

No.2  游月  評価:50点  ■2014-01-25 23:34  ID:C997dWT1qRE
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こんばんは。

これはドスンと来ますね

ん?
何だかお腹が、
あれ?
あ、
うう。

みたいな。

詩文のスリットの奥に見え隠れする事実が、目を下に滑らせていくにつれて迫ってくる感じ。某所で読んだ、他のアマチュア詩人さんの、遠浅の海のように進みラスト直前から急激に強くなっていく詩を思い出しましたが、その時に味わった感覚より数倍強かった。詩というのは、表現がおかしくなければ表面上どう書こうが、奥で推移するものが強く心に働きかけるのであれば良いのだとこの詩を読んで感じました。

>居心地の悪い
という直接表現に引っ掛かったのですが、逆に、ラストでスリットを破り出てくる立体感、と読むのがいいのかもしれません。

大変勉強にもなりました。
ありがとうございます。
No.1  謝染はかなし  評価:50点  ■2014-01-25 15:42  ID:Jrs3xCdF2Fg
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荒削りなところはありますが、もの凄く良いです。

あなたはネットの世界にだけ留まっているべき人ではないです。

間違いなく詩の才があります。

もっと沢山書いて、もっと沢山詩を読んで欲しいです。

皆さんも、この詩を虚心に読むべきでしょう。

それぐらい、驚かされました。
総レス数 5  合計 190

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