星に 願いを


満天の星が煌めく 天空の楽園

わたしはすぐにでも行ってみたいと

無邪気に困らせたかもしれない

そこが楽園だったなら




わたしはわたしを演じている

ありふれた日常の幸せの中で

演じていることさえ忘れて

わたしらしく

あなたもきっとあなたらしく



冷蔵庫を開けてガサガサ音をたてると

犬が駆け寄ってくる

あなたは目配せをして困ったふりをする

お前の好きなアイス切らしちゃったな

ちょっと買いに行ってくるから

おとなしく待っているんだぞ


君の頭を軽く撫で

あの人は家を出た

いつもなら後を追う君が

玄関に座ったまま動こうとしない

その様子を見てわたしは外に飛び出し

あの人を追いかけた



星の煌めく空から

エンドロールが降ろされる

そこから先に行くことはできない

わたしは何に閉じ込められているのだろう

ここで立ち止まり

自転車に乗ったあの人が

ちいさなピリオドになって

物語が終わってゆくのをただ見届ける

追いかけても追いかけても追いつかないことを

もう知ってしまったから


終わりを告げる曲が

五線譜の道をつくり

わたしを導いてくれるのに

スクリーンから一歩も出られない


運命は突然やってきて

そう


わたしを見守ってくれる



澄んだ夜空には

数え切れない星が瞬く

立ち尽くすわたしは

なんてちっぽけで無力なんだろう

満天の星の楽園で

なんてひとりぼっちなんだろう


いたたまれず玄関の扉を開けると

君はまだ座ったまま

潤んだ瞳でわたしを見上げている

わたしは君を抱きしめ

君もわたしを抱きしめた

この温もりはあの人の忘れもの


二人の日々は琥珀色に傾き

空に弾け

夢のなかに消えていった



シャンパンを抜く音が

静寂を破る

姿のない人々のざわめきが

わたしを仮想の現実に引き戻す


事象は変化し移ろう

ハッピーエンドも

この世界も

例外ではなく




そして、また

新しい映画が始まる




この世界の

全てが 映画で

その全てがわたしの人生

いつ覚めるかわからない

わたしの意識



星に 願いを

心から

心の底から



祈りはきっと叶う

こんなにたくさんの星を

独り占めしているんだから







気がつくとわたしは夜空を見上げている

眠らない街の空なんて誰も見たりはしないけど

摩天楼の狭間に消え入りそうな

頼りない星を見つけてはホッとする

あなたは変な癖、と笑うけど




青ガラス
2014年01月13日(月) 09時50分52秒 公開
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No.8  青ガラス  評価:--点  ■2014-01-15 15:57  ID:6Sbbo4.76/Y
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遊月さん、
こんにちは。

そのまま机の上に居座れたのに残念です(^_^;)
この長さは始めてで
味わっていただけるなんて光栄です。

キュビズムうれしいです。
わたしの中ではちょっとした革命でした、冒険かな。
もう、読んでいただけるだけでもうれしいのに
お褒めの言葉まで頂いて、励みになります。

動物好きなので、日頃の観察を活かせることができて
良かったです。

ありがとうございました。
No.7  青ガラス  評価:--点  ■2014-01-15 15:33  ID:6Sbbo4.76/Y
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楠山さん、
感想ありがとうございます。
ちょっと小説風に書いて見たくて、小説は書いたこと無いので
あくまでも風になんですが、詩も書き始めて日が浅いので
感じたことを書いていただけるとうれしです。
意味合いの似ている連をどうしようか迷いはしたんですけど
少し間をおいて客観視できるようになったら考えて見ますね。

表現を褒めていただいてうれしいです。
長いのにお読みくださり感想までいただいて、感謝です(^_^)
No.6  游月  評価:50点  ■2014-01-15 13:13  ID:OjNIsuoFpuI
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こんにちは。

長かったので机の上に置き去りにしていました。
が、読みました。

印象は優しいキュビズム。
ファジーな立体感が有っていいですね。
私が書いたのはドタバタ感がありましたが、
この詩はスッキリしてますね。
素直に楽しめました。

またまた次を楽しみにしてます。


[追伸]
読めば読むほど味が出る作品ですね。

犬は顔の表情が乏しい分、動きや声で感情を表現しますが、この詩では効果的に使われてますね。

No.5  楠山歳幸  評価:40点  ■2014-01-14 22:36  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。
 素人の感想なので流してやってください。
 読後感は六花とは違った、やさしい中に張りつめた空気を感じました。
 でも(自分のことを棚に上げてすみません)、陽炎さんのコメントにも共感していまいました。題材の影響でしょうか、やや小説よりみたいな感じです。段落を減らしてみては?と思います。
 生意気書いてしまいましたが、素敵な表現がたくさんありました。

 >ピリオド
 >この温もりはあの人の忘れもの
 >眠らない街の空なんて誰も見たりはしないけど

 などなど、題名と合った雰囲気を感じる作品でした。 
No.4  青ガラス  評価:--点  ■2014-01-14 20:24  ID:6Sbbo4.76/Y
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陽炎さん、
いつもありがとう!
途中でダレてますか、うん!
よく分かりました。大変です、長いの書いてしまったら
陽炎さんに尊敬の遠い目(笑)
もうお姉さまに長ーーい、なんて言いませんからぁ。。。
勢いで書いたら長いし時間の経過をシャッフルして書いたので
意味不。骨組み直して経時順に変えたら噴水ショーがおわってしまいました。
なので、そこはつっ込まれるなって、覚悟してました。
実力つけるしかないですよね。
もうサラにして書こうと思ったんですが、切り替えができなくて。

対面している場面はあの人ではなので、あなたにしました。
犬は一度書いて君が犬であることを認識してもらうためで
その通りです。

雰囲気感じていただいてうれしいです。
コンパクトに、確かにです。(≧∇≦)

No.3  陽炎  評価:30点  ■2014-01-14 15:55  ID:eM8nTjX2ERc
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う〜む、毎度長々と書き連ねている私が云うのもなんですが(^^ゞ
この詩、もう少しコンパクトにしてもよかったかも

なんでかな、途中でダレてきてる、というか
単調なシーンばかりの映画を見させられているような
あくまで私見ですが、そう思ってしまいました

あと、この詩では登場人物が
・わたし
・あなた
・犬
・君
・あの人
と5人登場していますが
読んでみると
あなた=あの人
犬=君
という構図になっているように思われましたが
違っていたらごめんなさい

アイスを買いに行くと云って出て行ったまま
あなたは帰ってこなかったのでしょうか

あるいは、自転車に乗るあの人の背中を見つめていたら
急にそんなふうな気持ちがこみ上げてきてしまったのかな

雰囲気というか、寂寞とした気持ちは好きなんだけどね

まあ、長い詩ばっかり描いてる私が云うなって話かもだけど(汗)
No.2  青ガラス  評価:--点  ■2014-01-14 06:49  ID:6Sbbo4.76/Y
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菊池さん、
いつもありがとうございます。
真髄、、ですか、、ありがとうございます。
難しいことは分からないんですが
意識はしていなくても人と人の間に居るということが
実は大きな安心感になっているんじゃないか
星降る楽園の孤独が書けているか自信はないのですが
拙い文章に可能性を見出していただいて恐縮してしまいます。
No.1  菊池清美  評価:50点  ■2014-01-13 12:32  ID:/dxzQ0Wmf36
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有る物を忠実に描いても其れは所詮模倣に過ぎない、其れなら写真に敵わないと言われている感じがします。
青ガラスさんの真髄を見た気がします、いえ薄々は知っていた積もりですが次々に溢れ出したろうイメージの量を見て改めて思いました。

人間がピリオドに成って…等素敵な表現力や意欲が楽しいです。
詩の可能性を感じて頼もしいです今後もずーっと見て行きたいですね。
総レス数 8  合計 170

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