恋 〜短編詩集〜
 
 【鼓動の軌道】
 走る蠢動 言葉に出来ず
 貴女の前で立ち尽くし
 響く鳴動 言葉を覆って
 貴女は傾げて微笑んだ
 
 好きです ひとこと
 たった それだけ
 
 刻む律動 勇気を絞って
 貴女に向けて口を開くが 
 萎む振動 勇気も萎えて
 貴女は戸惑い消え去った 
 笑う衝動 悲嘆に暮れて
 貴女を想い明日こそはと


 【乙女】
 ねえ なんて言ったの?
 聞こえたけれど聞き直す
 ねえ、なんて言ったの?
 しつこいけれど聞き返す
 
 ずっと見てたよ 君のこと
 好きになったの わたしが先
 好む髪型 好む話題
 好む場所を先回り
 じっと待ってた その言葉
 好きにさせたの わたしの方
 
 一回だけじゃ済まさない
 もっと言ってよ なんどでも
 ずっと言ってよ なんどでも
 私は言わない
 言ってあげない
 
 君の好きが もっと大きく
 私の倍に なるまでは


 【恋柳】
 願えども
 叶うことなき
 恋心
 
 世を羨みし
 君が想い
 
 今にして
 出会いし胸の
 高鳴りに
 
 指に残す
 未送のメール


 【恋】
 角砂糖をひとつ
 ミルクは半分 かき混ぜず
 貴方の飲み方 私と同じ
 
 舞台近くより
 ホール中央 映画が好き
 フランス映画 好みも同じ
 
 貴方との共通項
 見つけるたびに嬉しくなって
 はしゃいだ気分に犯された
 
 いったい
 どうしてしまったんだろう
 いったい
 どうなってしまうんだろう
 
 ううん そうね
 理屈なんかいらない
 そうよ きっと
 恋におちてる


 【未練】
 なんだよ なんだよ
 なんなんだよ
 
 疲れた 呆れた
 今まで これまで?
 別れる 離れる
 今から これから?
 
 なんだよ なんだよ
 なんなんだよ

 よくよく考え 思い出せ
 あの日 あの場所
 あの時どうした?
 くよくよ思い 悩み抜け

 そうだよ
 ごめんな
 なんて今さら
 
 そうだな
 さよなら
 でもな今でも

 恋しているんだ
 恋してたいんだ

 この先ずっと
 だからだから 


 【横恋慕】
 少しだけ振り向いて欲しかった
 怒りでも悲しみでも
 意識の矢を飛ばして欲しかった
 僅かでも束の間でも
 好意の存在を許して欲しかった

 触れちゃいけない
 惚れちゃいけない
 指輪がきらめきを告げている

 認めるしかない
 眺めるしかない
 指輪があきらめを投げてくる

 少しだけ時間を下さい
 気持ちに余裕が生まれるまで
 少しだけ猶予を下さい
 染み込んだ想いが消えるまで

 そしてまた新しい恋慕が
 芽生えるまで

 
 【逢瀬】
 知らないふりを繰り返し 
 世界なんて小さいと
 思いこみから逃げまわり
 都合のいい言い訳を
 
 何度も諭され励まされ
 何度も裏切り遠ざけた
 
 あんたどこかの空にいる
 大切なこと
 離れて分かった馬鹿な自分
 あんたいつかは会ってくれる?
 大切なひと
 別れて気づいた馬鹿な自分
 
 今からでも
 思い出したなら 遅くない
 
 
 【恋唄】
 夏の帰り道
 眩しさは太陽のせいじゃなく
 いつしか惹かれて手を伸ばし
 僕は君を掴まえた
 
 理由などいらない
 好きだから ただ好きだから
 心よ震え いつまでも
 
 長く寒い冬
 冷たい風も障りなく
 いつでも触れた手を握り
 流れる時を過ごしてた
 
 恐れなどない
 好きだから 怖くなんてない
 心よ震え いつまでも
 
 遠い先でも
 遥か先でも
 いつまでも ただいつまでも


 【弱者】
 募る想いが苦しいのなら
 抱けばいい
 先など考えずに
 さあ抱けばいい
 
 猛る想いが溢れるのなら
 噛めばいい
 今だけ思わずに
 もう噛めばいい
 
 悟る想いが苦しいのなら
 忘れていい
 全てを飛ばして
 ああ忘れていい
 
 けれど いつも
 背を丸めて
 そして いつも
 ひざ(ひざ)を抱えて


 【感傷】
 誰かが言いました
 愛とは失ってから知るものだと
 悶えて足掻き思い知るものだと
 
 私はまだ
 眠れない夜があるだけで
 私はただ
 思い出していたいだけで
 
 どんな形であっても 
 どんな色であっても
 どんな人であっても
 
 私はまだ
 傷を抱えているのでしょうか
 私はただ
 今を逃げているのでしょうか

 誰かが言いました
 いいえ
 誰もが言いました
 でも その言葉
 解りたくはないのです

 私がただ想いたいのは
 消えた愛の篝り火だけ
 私がまだ感じたいのは
 滅んだ愛の残り火だけ
 
 私が今も
 待ち続けているのは
 胸を焦がした
 あの日の炎だけ


 【魂】
 この魂を捧げたなら
 貴女は微笑んでくれるでしょう
 この魂を預けたなら
 貴女は慈しんでくれるでしょう

 この魂は唯一無二
 貴女に約した確かな願い
 この魂は遮二無二
 貴女に掲げた密かな誓い

 この魂に色をつけて
 この魂に艶を入れて
 この魂に印を刻んで
 
 この魂は
 この魂は
 この魂は……
 
 貴女だけに

 
 【夢うつつ】
 微かな雨音が響く部屋 
 君は虚ろに横たわる
 窓に流れる滴と同じく
 胸を浸した夢滑り
 諦め満ちて気づくのは
 青の想いと未熟な心
 
 それは確かに在ったもの
 
 届くような錯覚
 指先では無く 心の先で
 弾むような輪郭
 霧散して散る 扉の前で

 
 【メッセージ】
 一夜の過ち?
 それはないんじゃない
 今更に退く?
 それはないんじゃない
 
 言ったでしょ? 
 おまえが好きだって
 抱いたでしょ?
 おまえが好きだって
 
 目と目でする会話
 背と背でする会話
 あなたは違う住人?
 わたしと違う世界?
 
 あの走り書きから 
 線を引かれて
 あの走り書きから 
 壁を築かれて

 あの走り書きから……


 
 【追憶】
 あの早かった月日
 何処まで真だよ
 この遅すぎる月日
 何故そう感じる
 
 花より離れて
 花だけ独りに
 気をつかい 疲れて
 気がつけば 疲れて

 散らしたのは俺
 待たせたのは俺
 悔やんだのは俺
 
 忘れたのも俺
 託したのも俺
 壊れたのも俺

 君は今 なにをしている?
弥生灯火
2013年10月04日(金) 00時28分52秒 公開
■この作品の著作権は弥生灯火さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ちょっとした言葉遊びの感覚で綴ってみました。

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No.2  弥生灯火  評価:--点  ■2013-10-05 05:49  ID:dPOM8su8lqs
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律さんへ

感想ありがとうございます。
今作の詩は、その大部分が五年ぐらい前に創作したもので、
正直なところどんな気持ちで作ったのか自分でも思い出せないので恥ずかしい限りです(汗)
それでも印象に残ったということで嬉しく思います。

No.1  律4423Я  評価:40点  ■2013-10-04 22:58  ID:dANdXBy3GNA
PASS 編集 削除
こんばんは。初めましてです。

【夢うつつ】が個人的に目がいってしまいました。
恋を表すのかは知らないけど…
「青い想いと未熟な心」その部分がとても印象に残りました。
切なさと恋が交じり合ってて、恋だぁと感じさせるような雰囲気でとても良かったです。
恋って切ないけど良いですよね、やっぱり。
素敵な詩ありがとうございました。
総レス数 2  合計 40

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