塗炭屋根
雨は 屋根を突き破って
音は 景色を突き破って
片隅に 酷く蝕む

トタン屋根は 雨に濡れないよう
必死に 必死に 受け止めるけど
浸食した 穴から漏れる悲鳴は
誰の耳にも 届くことはない

「ああ誰か 僕を静かに消して」
「ああ誰か 僕を探さないで」
遙か雨音で すべてが消える

雨は 僕の心臓を破って
音は 僕の鼓膜を破って
片隅に 酷く蝕む

塗炭で汚れた 躰は生きる術を知らず
内耳を 内耳を 潰そうと指を捩じ込む
耳を伝い 血が滲む指を咥えれば
すべての音が 遠くへ消えてった

「ああ僕は なにも聞かずに」
「ああ僕は なにかを失って」
遙か雨音で すべてが消えた

雨は 屋根を突き破って
音は 景色を突き破って

雨は 僕の心臓を破って
音は 僕の鼓膜を破って

片隅に 片隅に 酷く蝕む
葉津京一
http://hazukyouichi.info/
2012年07月02日(月) 05時13分09秒 公開
■この作品の著作権は葉津京一さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
トタン屋根を打つ雨音が、鬱陶しくてしょうがないときがあります。

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No.3  葉津京一  評価:0点  ■2012-07-07 02:02  ID:YvEo1e3l22E
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感想ありがとうございます。

>陽炎さま
今回の詩は少し遊んでいまして、
塗炭:ひどい苦痛。きわめて辛い境遇の意
トタン屋根:雨音がうるさくて苦痛
を掛けて、タイトルと詩を書いてみました。

読み進むにつれて、やるせない気持ちになってしまいますが、雨が上がった後はきっと晴れやかな気持ちになっていることでしょう。
機会があれば、続編を書いてみようと思います。

>非さま
かっこいい文章だなんて恐れ多い……。
ありがとうございます。

私が詩・小説を書くとき大事にしているのは、書きたい文章の情景を頭の中で映像化することです。
漫画でいえば、ネームを起こしているようなものですね。
映像化できたら、それを元に文章をはめ込んでいくような形で創作しています。

これでも、まだまだ未熟者ですけどね(苦笑)
No.2  非  評価:50点  ■2012-07-06 13:56  ID:7wB7nyFAfGY
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どうすればこんなかっこいい文章が書けるのでしょう。
No.1  陽炎  評価:40点  ■2012-07-02 21:43  ID:o8nsDp1H04c
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塗炭屋根、というのがなんとも

ホントにうるさいんですよね、塗炭屋根を打つ雨の音って

誰にも知られることなく
静かに、しかも確実に
精神が蝕まれていくような

なんだかどうしようもない気持ちになってきました
総レス数 3  合計 90

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