乞食のプライド
傷ついても
目立たないように
あらかじめ自分で傷をつけるのです

それが
僕の保身の方法でした

そういう方法を身に着けてから
僕の傷には誰も気が付かなくなって


僕はかわいそうな子じゃなくなりました


この世で一番きついのは
憐れみ
同情
そういうたぐいの感情です

だってそうでしょう
自分と同等の物に
憐れみや
同情はしませんから

暗に言っているのです

おまえは人以下でかわいそうなやつだと


どんな暴力よりも
一番死にたくなるのは

『かわいそう』

そういう言葉とともに差しのべられた手・・・
それに付随するやさしさという

凌辱

をされた時なのです


だってそうでしょわたしという人間を根こそぎ
『かわいそう』
にしていくのです


かわいそうになりたくなかった
だからこんなにたくさんの傷に耐えたのに
やさしい人が
僕をかわいそうにするのです

人間として
最後の砦をいとも簡単に壊されて

僕は家畜になりました
かわいそうと差しのべられた手に
エサが大量に乗っています
僕はそれを食べて

大人になりました

それでもう
かわいそうにならないように
自分にたくさん傷をつけて
最初から汚らしいものになりました
結果誰も
僕の傷に気が付かなくなって
僕はかわいそうでなくなりました

唯一の
僕の保身の方法は

非常に非効率的で
非建設的なものでした



だけど


取り戻したんです

ちっぽけで
汚らしくて
傷だらけで

それでも
プライドというもの


確かにあります


あの時根絶やしにされたもの


一部分だけではあるのだけれど


確かにあるのです


それだけで

もう

殺されたって




俺は笑える
史裕
2012年03月05日(月) 21時35分26秒 公開
■この作品の著作権は史裕さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

この作品の感想をお寄せください。
No.3  史裕  評価:0点  ■2012-03-22 19:08  ID:dJ/dE12Tc8A
PASS 編集 削除
>空手道連盟さん
ごかんそうありがとうございます
ねらったところだったのでそう感じてもらえたならうれしいです。

>ザイチさん
プライドだけがよりどころになってしまうのも怖いですが・・・
でも今回は最後の砦としてのプライドをテーマにさせていただきました。
ご感想ありがとうございました。
No.2  ザイチ  評価:0点  ■2012-03-13 21:49  ID:tf2cum4RbQs
PASS 編集 削除
プライドを持つのは大事ですね。
ひたむきな負けず嫌いになりたいと常々思います。

(小生評価が付けられない性分ゆえ、気分を害されたら申し訳ないです)
No.1  空手道連盟  評価:30点  ■2012-03-06 13:40  ID:iIHEYcW9En.
PASS 編集 削除
読ませていただきました。
最初は「僕」の語りだったのに、最後に「俺」に変わるところがこわかったです。
総レス数 3  合計 30

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除