背に感じる重みは
あなたがまだ やっと命の鼓動をはじめたとき
とてもちいさな ちいさな袋をもっていた
生きるためだけの わずかな栄養を背中にくっつけて
ぷかぷかと浮いていたから とてもかるそうに見えたけど
あなたもまだ小さかったから それが精一杯だったかもしれない
たった数ミリの心臓の音 強い意志をもっていて
泣いてしまいそうなぐらい 嬉しかったこと
今でもしっかり覚えている
あぁ この子はもう しっかり生きている
これからの運命を背負うのは 私だけだということも
また同時に 強く感じた


あなたが産まれてからは
足早にしか時を記憶できていない
初めてのことだらけで 毎日向き合うしかなかった
それでも笑ってくれるだけで 癒され励まされ
がむしゃらに のりこえてきた気がする
季節がひとまわりするころ
あなたの背中には 一升のお餅
あなたを愛する人たちの重い 想い
泣いて嫌がるあなたを見ても
願わずにはいられない
その重さは あなたの身体とともに
きっと成長するのだわ


あなたが ひとりで歩き しゃべれるようになったころ
空を見上げれば 桜が舞い チューリップが咲いていた
手をつなぎ ハズれた歌を空にうかべ 笑っていた
背には黄色いリュック
私はその中にある小さな箱に
これまた細かく刻んだ愛情を詰め込んで
あなたに積みかさねる
後ろにひっくり返るかと そう思うほど
パンパンに膨らんだリュックは
まわりを見れば
どの子もみんな そんな感じで
少し誇らげに手を振っていた


そして
これから先はまだ未来のはなし
もう 想像するだけで
嫌になっちゃう 泣けてきちゃう
この世には 皆それぞれ背負うものはたくさん
ランドセルから子供の未来まで
順番に大きく 重く のしかかる
嫌なことも どうしようもないことも
あきらめることも ものすごい傷も 癒えない過去も
背にだけじゃなく 身にも心にも大きく刻まれるでしょう
それでも笑って いつだったか歌を飛ばした空を見て
過去を少しでも懐かしいと そう感じてくれるなら
背負うことは きっとだいじょうぶ
それはもう あなたの一部なのだから


あなたが親だけではなく 自分だけでなく
子供の行く末をも背負う歳になったころ
きっと私があなたをお腹に宿したときから
人生を 運命を受け入れたのと同じ重さになっているでしょう
それでも
なるべく あなたがたくさん笑えるよう
少しでも あなたが泣きたいときに泣けるように
私が生きている間 なんどでも
いいえ きっとずっと
あなたの人生を想い 描いた分 また重みが増すけれど
どうしても願わずにはいられない


どうか どうか 背負って笑って
命をはじめた 音のように
どうか 強く 強くね

流月楓
http://ryuzukikaede.blog101.fc2.com/
2012年02月26日(日) 07時34分05秒 公開
■この作品の著作権は流月楓さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ちゃんと詩を書くこと、向き合うことを一年近くしていなかった気がします。
なぜか、どうしても書けませんでした。

久しぶりの投稿で、緊張します。
宜しくお願いします。

この作品の感想をお寄せください。
No.8  流月楓  評価:--点  ■2012-04-03 07:55  ID:7i6OEkkggig
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小夜さんへ
お久しぶりです*^^*
小夜さんのこと、しっかり覚えてますよ(笑)
名前を見つけてくれて、読んで頂けて嬉しいです。

私は小夜さんが想像するような、いいお母さんではないですよ。
自分を優先したり、子供にイラついたり、怒鳴ったり、精神的にたよったりします。
でも、時々ふと思うことは本物で、大切な存在には変わりないですね。
それは、小夜さんも一緒だと思います。

いよいよ、最後の幼稚園になりますね。
今から一つ一つの行事が、涙、涙、になりそうです。
幼稚園ってなんであんなに感動するんだろう。。。
今年も成長を感じれたら、ハッピーですね。

次回作は……が、がんばります(汗)
No.7  小夜  評価:30点  ■2012-04-01 13:16  ID:kzVZi6vy1G.
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りゅ、流月さぁん!
こぉーんにぃーちわぁーっ♪(笑)
いきなりハイテンションで御免なさい。
流月さんのお名前を発見して嬉しくて、つい…(照)
って。
私の事、覚えてなかったら軽くスルーしちゃって下さいね(汗)


遅ればせながらコメントを。
流月さんは良いお母さんですね。
私はとてもじゃないけど、こんなに素敵な詩は書けないです…。
最近じゃぁ息子に守ってもらってるし(苦笑)
たしか、うちの息子と同い年でしたよね?
祝・進級☆
今年度もいっぱぁい楽しみましょぉ♪

追伸: 次回作、首をながぁくして待ってまぁす☆


No.6  流月楓  評価:--点  ■2012-03-01 11:53  ID:7i6OEkkggig
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太郎さんへ
子供を産み育てることって、幸せ半分、不安半分が理想の私です。
しかしながら、今回、不安が勝ってこんな詩になってしまいました。
気持ちが伝わって、嬉しいです。
ありがとうございました。

ゆうすけさんへ
いつもありがとうございます。
初めての子は、初めてなりに大変なことが山積みでしたよね。色々記憶も飛んでしまう程、産後鬱になりかけた私です。感情の嵐について行けず、泣きはらした夜もあります。今ではいい思い出ですが、子供への不安やら願やら、心配やらは、この先一生続くのでしょうね。
背負うということ。決して楽なことではありませんし、悲しい、苦しいだけでもなく、受け入れることしかできない。まぁ、それも我が人生。
諦めるということ、運命を受け入れるということ、願いを込めるということ、受け取る側にも背負わせるということ。
色々、考えさせられました。

せわしなく(時にはボーっと)過ごす日常。
私は、すぐにこういった感情が埋もれてしまうので、文字にして書き留めておくのは有効と考えます。
ゆうすけさんの詩も、読みたいな^^
また、書いてくださいね。

陽炎さんへ
TCに久しぶりに来てみれば、陽炎さんの詩をお見かけするので、ひっそり読ませて頂いています。

子供は大事ですが、色々不満もあるし、現実、毎日怒鳴ってばかりですよ。
自分の時間は無くなるし、それでも自分の時間を確保しようと子供に我慢させたりだってします。
すやすや寝ている我が子を見ると、反省の日々。
今回、色々考え、自分なりに今までで一生分とも言える問題を抱えた日を送ったこともあり、不安の上に成り立つ命の重さを感じました。
そこには、自分の努力、意志、価値観など全く歯が立たない、運命という壁がありました。
受け入れることしかできない。それでも前を向かなくてはならない。
そこで得られたものは、きっと尊い。そう信じるしかなかった。
結局、信じるということ。これが、この世で一番強いものだと思いました。

親になってみて初めて分かったことは、この先数えきれないぐらいになると思います。
教わらないと分からないことも、またしかりですよね。

私の世界。とても狭い世界だと思っています。
陽炎さんの世界も、きっと陽炎さん以外の他の誰も持っていないと思います。
私が、陽炎さんの詩から伝わるのは、時に恨みや哀しみ、”どうして”という強い想い。
生身の(時には生身ではない詩もお見かけします。必ずしも 詩=自分ではない ですしね^^)切り傷をみせられる詩という媒体は、私たち詩を書く人間にとって、コミュニケーションであり、その人の世界を覗けるものだと思います。
その人しか(体験してこないと書けない)詩というのが存在してるのだと思います。
陽炎さんの表現やら、生身の詩。私だって嫉妬することありますよ。
ほんと、いい刺激を頂いております。
こちらこそ、ありがとうございました。

はしずめまいさんへ
692グラムという、小さすぎる体で、必死に生きようとしたのでしょうね。
子供がいる分、考えるだけで泣けてしまいます。
親が背負ってきた想いは、きっと計り知れないでしょうね。
生きる意味。これは私も未だに良く分かりません。
ですが、命の神秘というものは強く感じており、さだめられた役割というのがきっとあるのだと思います。
20歳ですか。まだまだこれからいろんなものを感じて、人よりもきっと苦労された分、はしずめまいさんにしか分からないことが増えたということ。
それはきっと人生の財産です。
前を向き、自分を大事に、いろんな思いが背にあること。時には背中を押してくれること、伝われば嬉しいです。
貴重な話を、ありがとうございました。

ザイチさんへ
大切な人。物。時には思い出。過去。色々ありすぎて分からなくなったりします。
詩とは、整理をつけて、言葉にして、鮮明にしていく作業でもあると思うのです。
なかなか難しいですけど、書いた後はすっきりしたりしてる私です^^
これを思いついたのは、息子が幼稚園に入園した頃で、後ろに重そうに背負ってるリュックを見て思いつきました。
2年弱、前になります。
そういえば、お腹にいた時にもなにか後ろにくっついてたなぁってw
超音波写真を見ると、まあるい袋(卵黄嚢=栄養の袋 といいます)を背負っていて、なんだかとても切なくなりました。
産まれる前から、こんな小さなお弁当を背負って、生きてるいるんですね。
そこから、また私の妄想癖がぐるぐるとなって、こんな詩になりました。

今回、産むというのは、綺麗ごと、理想論だけでは済まされない闇の部分も存在していて、それをも背負う覚悟がないと、命を産むということは極論、してはいけないのだとも思いました。
ザイチさんが言うように、命の重さは計り知れませんね。
不安の重さとも同等です。

詩に評価という点で、それぞれ考えがあるので、ザイチさんの意思を尊重します。
それでも書き残してくれて、うれしく思います。
ありがとうございました。

No.5  ザイチ  評価:0点  ■2012-02-29 22:12  ID:td5QTRoZDIw
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何だか大切すぎて、胸がギュ〜って締め付けられるようでした。
展開していく、ワンシーン ワンシーンが、とても印象的でした。
”産む”ということは、果てしなく膨大な愛をそそぐんだ、いいかねと悶絶す
るほどの痛みが教えてくれているような気がします。
命の重さははかり知れません。

(評価をつけられない小生の性分、お気を悪くさせたら申し訳ないです)
No.4  はしずめまい  評価:40点  ■2012-02-26 14:24  ID:0GKMrW4CcjM
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自分は、超低体重出生児、いわゆる未熟児で生まれてきたそうです。692グラム、そこにもやはり生きてゆく意味があったのでしょう。

失明も死の危機さえ越えて生きて、今年7月で20年になります。。たぶん、人一倍じぶんを大切にしなければいけない。


私情ですが、なんだかいろいろ考えてしまいます。流月さんのこの詩が、自分と真っ向から向き合うチャンスをくれたようです。吹っ切れました、ありがとう。
No.3  陽炎  評価:40点  ■2012-02-26 11:40  ID:dJ/dE12Tc8A
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なんだかものすご〜く、自分の子供を大事に思っていることが
これでもか! というほど込められた
嘘も偽りもない、正真正銘の純度100パーセントの
素直な思いが詰まった作品だと感じました
楓さんのお子さんは幸福ですね
こんなふうに思っていてくれる人がいる
世界中の人が敵に回ったとしても
たったひとり
そうたったひとり
自分の味方でいてくれる人がいるということ
たとえどんな困難にぶつかっても
味方がいる、というだけで
どれほど救われる思いのすることか

親になってみなければ解らないことなのかもしれませんが
教わってこなければわからないことだってあると思うし

なんか、こういうの読まされちゃうと
ものすごい嫉妬しちゃうよなあ
私の中には絶対に存在しない世界だから

素敵な詩をありがとう☆彡
No.2  ゆうすけ  評価:50点  ■2012-02-26 10:07  ID:m0hMR5bWYIY
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私の長男が妻(当時は彼女)の胎内に宿ったのを産科で知ったあの日からの事が蘇ってきました。もがきながら這いつくばりながら、手探りでなんとかやってきた、あの日々。妊娠、出産、育児、その苛烈さ、容赦なき喜怒哀楽まさに七転八倒暗中模索五里霧中、そして見えてくる新しい世界。背負う責任の重さ、背負った責任が重荷ではなく背中を押してくれる力に感じる喜び、そして疲れ。
背負う、この言葉の重みを感じます。

詩を書く、心を言葉に乗せて残す、それはとても素敵な事だと思います。いつか読み返せば、当時の想いが蘇るはずですし。
No.1  太郎  評価:40点  ■2012-02-26 09:07  ID:iIHEYcW9En.
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読ませていただきました。
母親の気持ちが切実に伝わってきました。
子供を生んで育てるってすごいことですね。
そういうあたりまえのことを、しっかりと感じさせてくれる詩でした。
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