落し物

誰の「  」だろう
誰かの「  」が
電車の床をころがっている
「  」は電車が止まるたび
空き缶のように
誰かの足元から誰かの足元へと
ころがり続ける

皆が誰かの「  」を心配して
目で追いかけながらも
なるべくなら自分の足元にはころがってこないで欲しい
そう薄々感じている
ころがる「  」は
とても大切なものだけれど
決してわたしのものではないし
あなたのものでもないから

優しさと疎ましさの未然形のような
たくさんの視線にさらされながら
「  」は電車の床をころがり続け
最終的には清掃員に拾われて
駅の遺失物係りに届けられる

遺失物係りは「  」の特徴を
記録しようとするけれど
届けられた「  」は
どれも形をもっていないから
特徴を記録をすることができなくて
ここにあることを
だれにも知らせることができず
落とし主に返すこともできない

だから遺失物係りの倉庫は
いまでは砂浜のように大きくなってしまって
そこには無数の「  」だけが
貝殻のように並んでいる
OZ
2011年03月26日(土) 10時18分07秒 公開
■この作品の著作権はOZさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
読んでくださってありがとうございます。
下手の横好きですが、詩(みたいなもの)を書くことは、とても楽しいです!

この作品の感想をお寄せください。
No.7  ザイチ  評価:0点  ■2011-04-04 03:46  ID:HbNffgcaP1U
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(評価をつけるのが苦手なので、感想だけ書かせてください)

私も同じ状況に遭遇したことがあります。
それが誰かのものだから、関わりたくないと思うのはしょうがないと
いったら、そうとしか言えませんが、
缶がカラカラと転がってものを言う、「私の所持者だった人は、この人です」
といっているようなところに、近づく人、拾って捨てようとする人も、
奇異に思えてしまうのは、本当に残念な人の感情のひだだと思います。
考えされられることが多くて、とても良い作品ですね。
No.6  OZ  評価:--点  ■2011-03-31 20:49  ID:4MvGQJq3VCA
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謝染はかなし様

たびたびのご感想ありがとうございます。
格がちがう。下の方に違うのでしょう。
弱い犬ほどよく吼えるものだから。
謝染はかなし様ほどに、現実と向かいあう勇気がないんです。
すみません。

No.5  謝染はかなし  評価:30点  ■2011-03-30 03:54  ID:D5FXfV4BiuM
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巧いね。

格が違う。
No.4  OZ  評価:--点  ■2011-03-27 19:06  ID:4MvGQJq3VCA
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■としお様

いつもご感想ありがとうございます。
私はそんな、としお様に褒めていただけるような筆力はないので、正直
恥ずかしかったです。
うんこー!
すみません。照れ隠しです。悪意はないのです。

■陽炎様

はじめまして、ご感想ありがとうございます。
私も陽炎様の作品は読ませていただいておりました。
しかし、感想がなかなかつけづらく。
私が中島みゆきのファンだからかもしれません。
うんこー!以下略。

■楠山様

いつもご感想ありがとうございます。すごく嬉しいです。
前作は視覚を意識して文字数にこだわって書きましたが、今回はテーマ
に重点を置いて書きました。だから音を感じていただけたのであれば
偶然だと思います。
「」のなかに入れるべき言葉は私の中では決まっていますが、楠山さんが
ご自身で選んだ言葉を入れて読んでいただけたら、とても嬉しいです。
このように書くと不謹慎かもしれませんが、大きな物語が進行する
現在の状況において、それに呼応するような小さな物語もあるはずだと
思います。そんな小さな物語を自分なりに汲み取ることが、私の精一杯の
努力のような気がします。

うんこー!以下略。
No.3  としお  評価:40点  ■2011-03-27 16:30  ID:kWriX7DAQx.
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OZさまへ
読ませていただきました。

ふと、かつてJRの車内を転がりまくる、ジュースの空缶を思い出しました。誰が捨てたのだろうと周囲の視線を集めつつ、ガラガラガラガラとそれは音を立ててリノリウムの床を転がっておりました。
それを眺めながら私は一体誰がこんなものを捨てたのだろうと思いつつ、しかしこの空き缶が数十人いる乗客の誰にも拾われず、ただただ視線を浴びまくりながらガラガラガラガラ転がり続けていることに、奇妙な可笑しさを覚えた事を思い出しました。
とゆうかOZさまは何気ない日常の端々に起こる、何気ない事件を切り取るのが上手ですね。私もこの様な時間の切り取り方が出来るよう、精進したいと思います。
それでは。
No.2  陽炎  評価:50点  ■2011-03-26 19:11  ID:te6yfYFg2XA
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はじめまして、陽炎と申します
OZさんの作品、いつもこっそり読ませていただいてました
「下手の横好き」などとご本人様は謙遜されていますが
私はOZさんの底知れぬ文才にいつも驚嘆しておりました

>なるべくなら自分の足元にはころがってこないで欲しい

なんだか自分の思いを見透かされたようでハッとしました

なるべくなら面倒なことに巻き込まれたくはない
だけど、なんだか気になるから見てしまう

>優しさと疎ましさの未然形のような
たくさんの視線にさらされながら

そんな思いが↑でうま〜く表れてるなあと

ラストにかけて
なんだか誰のところにも帰れない「 」が
泣いているような、諦めているような
妙な悲しさ加減が憎らしいです

すばらしかったです
ありがとうございました
No.1  楠山歳幸  評価:40点  ■2011-03-26 15:04  ID:sTN9Yl0gdCk
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 拝読しました。

 良かったです。
 「」が物なのか感情なのかはっきりしないところに存在感を感じました。人物たちにも身近な存在感を感じました。外国の手書きで制作したアニメのように情緒的です。
 僕的には前作より音を感じました。今作みたいに暗に感じる音や何か。かっこいいので見習いたいですが、なかなかむずかしいです。

 拙い感想、失礼しました。
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