ユメ
 いつ、雪が降るか、雪が降るかと待ち望んでいた幼い頃が、窓から薄らと覗き込んで、私の顔色を窺っている。別に君のことを忘れたわけでは無いよ。寒くてなかなか布団から出られない朝と、夜の狭間の東雲に、昨日の夕焼けを思い出して、少し懐かしくなった。雪に閉じ込められた時の静寂が、今ではこんなにも恋しい、されば私の名前を辿って、あの時に見た羽のような雪を、じっと迎えるまで待っていようか。枯れ葉の上に重なっていく足跡の分、私は去年を思い出す。恋しくなるのはこの時だけだよ。もう少しだけ、あの家にいたかった。と、零す代わりに降る雪だった。
 マフラーで顔を覆うように何もかもに蓋をしてしまいたいくらい、今の生活はつまらなかった。何をしたって嫌な気分になって、私はコタツに蹲る。気温が変わったこの地球の、ほんの豆粒みたいな私が何をこんなに悩んでいるのだろうか。これまでのことを全て忘れてしまったとして、今日食べたハンバーグの美味しさまでも忘れてしまったとして、息を吹きかけた時の紅茶の水面に、星がチカチカと輝いたことも忘れて、私に何が残るって言うんだろうかと、今日の放課後、スプーンが私の鞄の中を掻き回す。旅に出たいぜ、トルコに行って、トプカプ宮殿で結婚式でも挙げたいぜ。これもただの妄想で終わるのかな。私の妄想は妄想のままで終わるのかなあ。そんなのやだな。やだな。私はいつでも夢の中に生きていたい。夢のなかでいきていくためには、夢それ自体を現実に引っ張り出してこなくちゃ!夢の端っこを摘んで、力一杯に引き抜け!引き抜け!あっ、と先っぽだけ破れてしまった、破れてしまった。夢は夢だった。手元にある、夢のカケラ。
ナカトノ マイ
2020年01月23日(木) 23時11分56秒 公開
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■作者からのメッセージ
いつかトルコに行きたいです。

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