白線上で雛鳥は
全ての線は点の集まりなのだと、いつか数学の先生が言っていた。
私たちはその点一つ一つに「1秒」と名前をつけて、
写真をばかみたいに撮った。
それを集めてできた線の上を、私たちは歩いている。
チョーク、夏服、
グラウンドの石灰に、
日に焼けないあの子の肌も、
全部一本に繋げて、今日、川に流します。
不安も嫉妬も後悔も、
歌いながら洗って、川に流します。
いつか聞いた和歌じゃないけれど、
冬の山や街は雪を被っているから、
きっと私たちの白線は、紛れて分からなくなってしまうね。
白粉みたいだと、ふと思った。
きっと照れて赤く染まった頬を、隠しているんだね。
今ならまだ、思い出したくないことも、
どんな失敗も全部、
青春のせいだって一蹴できるよ。
でも、そんな環境だっていつか終わりが来てしまうから、
私たちの歩いてきた直線に、今、点を打とう。
線分ab。
これが私たちの歩いた印で、紛れもなく自身のもの。
いつか模試で読んだ、青春を毛嫌いするあの人も、
抜け出せないその人も、皆んな同じく十代があって、
いつも傷だらけだった。
それなのに、どこかで痛みを忘れてしまって、
無かったことにしようなんてさ、
悲しいこと、しないでよ。
今、手を離す。
勢いよく流れて、手を振って、川下で回収されて、廃棄処分。
いらなくなったから捨てたなんて言いたくないから、
せめて最後くらいは、これで良かったねと言わせてほしい。
お父さん、お母さん、先生、皆んな、
私たちは今日、子どもではなくなります。
大人というものにも成り切れずに終わりを迎えて、
それでも時間に追い立てられて、
とりあえずここから出ていきます。
あなた方は今までそうやって、人生を歩いてきましたか。
さようなら。会うことは、もう無かろう。
会えない代わりに君のこと、まつげの裏に隠してあげる。
私たちは今日、卒業します。
いつか雪が溶けるその日まで、
その時までは、雛鳥のままで。
まつげが冬の陽光をつかまえた時、今この瞬間は、まるく輝くんだ。
ナカトノ マイ
2019年03月14日(木) 16時24分52秒 公開
■この作品の著作権はナカトノ マイさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
もう春ですが、私にとって卒業式は冬の行事です。
ご卒業おめでとうございます。

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