花の齢 今昔


初めて見た時と同じ
いっぺんの曇りも無い夜空に

いつか掴んでやるぞって
酒にかまけて叫んだ

夜を
あいつを
18のあの日の俺を

忘れちゃいないんだぜ



アニキから拝借したライターで
ぎこちなく火 つけて

吸い込んで、咳き込んで
手を叩いて笑いあって

俺らを包んだ紫煙のような
形が無い未来が続くなんて
想像なんかしちゃいなかったんだ



あいつの買ったボロボロの原付で
野郎の腰に手を回すのだってかまわなくて

海風を感じながら
朝日を目指して走った冬の日

たった30分の道のりが
どこまでも自由で特別で

あの子は泣いていたけど
俺はもう平気なんだって、笑った

満員電車に揺られて
不快な湿度に晒されて

駅で人波に一度乗ってしまえば
抜け出せなくて
立ち止まれもしなくて

この街に吹く風は、俺の涙一つ乾かせやしないんだ



初めてみた時と同じ
星がまだ見える暁の空に

拳を掲げながら
10年後また会おうぜ

力の限り声をあげて

そうだ、そうだと
もう一度泣いた、あの日の気持ちを

忘れてやしないぜ


大嫌いな
食べなれたオニギリを
胃袋にねじ込んで

くたびれたスーツを羽織って
ネクタイはポケットにでも投げ込もう

やっぱり、来週から辞めることにしたタバコは
フィルターまでしっかり吸ったことだ

愛用のカバンを握り締めて
行こうじゃないか

忘れてやしないんだ
だから今日も、前へ

僅夜
2019年02月22日(金) 01時42分47秒 公開
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No.1  ナカトノ マイ  評価:40点  ■2019-02-22 23:20  ID:C8XEfVKlQrU
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社会に出て働いている方々の、内側に燻っているエネルギーと言いますか、いつまでも変わらない核みたいなものが、とてもかっこいいと思います。青春は永遠不滅ですね、素敵です。
総レス数 1  合計 40

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