バースデー |
優しい色がする。オレンジとイエローの間のような。緩やかに点滅しながら僕の影を暖かく照らす。僕も柔らかい匂いに浸りながら、一つ、心配事をする。 「あの子にも見せたかったな」 その吐く息すらも、どこか青白く空間を彷徨って、消えていく。 そしてその世界には一つだけ扉がある。 ただ一つだけ。時計の針もなく、いや必要すらしない暖かな空間。まるで昔、母に抱かれて、いや胎児の頃から。扉は青空になったり血の赤になったり。少し怖い。だけど、進まなきゃ。僕が世界に出ることで喜んでくれる人が一人だけでもいるのなら、僕は。 * 僕の周りには何人もナースさんがいてお医者さんがいる。 ほんとうに嬉しそうな母がいる。 普段、その人と一緒に笑ったり、苦しんだり。いろいろと分け合って僕の始まりからいる人が待合室で祈っている。 二人が守ってくれるなら、その周りの人が迷ってくれるなら。 「この世界に行こう!」 そう決めた。だけど、外は痛みばかりで、冷たくてばかりで、精いっぱい泣き叫んでしまった。 悲鳴のような、声になってしまった。 涙が止まらない。 いつか終わりのくる、小さな旅への出発だと知った。 そして、その旅の中では泣いてばかりいる自分がいることも知った。 それでも父と母は本当にうれしそうに笑ってくれて。 僕の最初で最後の武器をくれたんだ。 僕のご先祖様が守ってくれた平凡だけど、好きなネーミング。 僕のために二人で一生懸命、考えてくれた特別なネーミング。 はじめまして。お久しぶりの人もいるのかな。 僕の名前は…… |
えんがわ
2020年09月26日(土) 10時32分02秒 公開 ■この作品の著作権はえんがわさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 えんがわ 評価:0点 ■2020-10-25 09:15 ID:OvRhp1ZJggo | |||||
ありがとね。 小説になっちゃったかな。 もうちょっと膨らめれれば、なんか生きそうな。まだわかんない。 名前は武器。なんとなくつらい時代に飲まれちゃったのかなぁ。 いろいろとギフトとか。プレゼントとか。 もっと悩まなあかんすよね。 |
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No.1 ナカトノ マイ 評価:40点 ■2020-10-20 11:06 ID:ex5QMUJTj7Q | |||||
小説みたいでいいなと思いました。あと、名前を「武器」と表現したところが力強くて素敵だなと思いました。 | |||||
総レス数 2 合計 40点 |
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