宇宙開闢以前の《世界》は《存在》する |
――例へば此の世に幽霊が存在し得るのであれば、其処は「現存在」の背である筈だ! ――それは何故かね? ――何故って、それは、唯一、此の世で「現存在」が裸眼で直接見られぬ処だからさ。 ――此の宇宙開闢以前の《世界》もまたどう足掻いても見えぬぜ。 ――へっ、つまり、端的に言へば、背中が、若しくは後ろの正面が《存在》するといふ事は、宇宙開闢以前にも《世界》が《存在》していた証拠になるのさ。其処は幽霊の、つまり、数多の《死者》の怨嗟に満ち溢れてゐた《世界》だ、ちぇっ。 ――しかし、触覚の感触だけは背中にもあるぜ。つまり、「現存在」は背中の《存在》を端から《認識》してゐる。また、《他》には《吾》の背ははっきりと見える。 ――だから、どうしたといふのかね? しかし、《他》は《吾》の内部は見えやしない。つまり、それは、尚更、宇宙開闢以前の《世界》は、《吾》が背中の《存在》を《認識》してゐるのであれば、必ずあるといふ事さ。 其処で、ゆるりと陽炎が揺らめき、《吾》の影が嗤ったのだ。「ふっふっふっ」と。 |
積 緋露雪
http://ninetailsgoldfox.org/ja/blog 2019年10月03日(木) 05時53分21秒 公開 ■この作品の著作権は積 緋露雪さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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