君と杯をあわせてさ |
突然電話してきて それこそほんの一時間後とか言い出してさ そのくせ時間通りにチャイムは鳴るし 覗き穴越しの酒瓶片手の笑顔も 足を突っ込んで扉閉めれなくする悪い癖とかも 笑えてくるくらい変わらない貴方だから 僕は本当に無防備に貴方を招きいれてしまったわけで 実際のところ 僕は貴方に会いたくなかったのだけど コップ冷やしてくれてる?なんて言いながら 勝手に冷蔵庫空けて アイスボールあるじゃん感心!だってさ 勝手に冷蔵庫触るな!って ほら、もう楽しくなってる 小指だけ黒く塗る拘りとか 右利きなのに左でグラスを持つ癖とか 変わらないなぁいいなぁって 酩酊した頭で貴方を見つめる そんな時間を過ごしてさ それから、それから、なんて コンロコンロと笑っていた僕は 見覚えのない薬指のリングに絶句して 僕はちゃんと言えただろうか 結婚されたんですね、って あぁ、貴方もまた変わったのだ 身も心も焦がした夏の終わり ふと風の匂いに秋を感じる、あの瞬間のような焦燥感だ 僕はこの気持ちの答えを知らない あれほど過去の話だと 忘れたいと願ったはずなのに いざ目の辺りにすると 変わってしまった貴方に、行き場の無い苛立ちを感じる あの頃から何も成長してない僕は 過去の貴方にずっと心引かれたままなのに 僕と同じように焦燥する貴方でいてよ、なんて、身勝手な そんな自分にもっと苛だって 反吐が出て、気持ち悪くて なのに貴方は かわらないよな、そういうとこ なんて言いながら笑っていて そんなの、もう顔なんか見れなくて 貴方は笑うんだよね 笑えるんだよね、って あぁ、馬鹿みたいだ、って ちょっとだけ泣いた |
僅夜
2019年09月12日(木) 01時12分46秒 公開 ■この作品の著作権は僅夜さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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