夕溺

 枯れてゆくような夕光だ

 気がついたら散っている

 満開と信号機

 花腐しの灰色

 山積みの新巻

 好きだったアーティストの

 訃報


 記憶が云う

『自分が死んでいれば』

 …駄目じゃないかな

 だって、

 あの時の自分には

 この人の何分の一ぽっち

 価値なんてなかったし


 珈琲豆が息を吹く

 もう少し

 もう少し

 注いだ縁から落ちてゆく

 もうほんの少し


『身代わりなんていないのよ、

 残念なことにね』


 この世に愚者がいないなら

 愚者のカードTHE FOOLなんてないはずね


 飴細工の箱庭で

 今のうちに溺れておいで



 つまらない写真なんて撮ってないで

 早くお帰りよ

 今宵は夜桜も

 見えない雨だろうから

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2019年04月08日(月) 18時48分33秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです
箱庭で溺れていたのを思い出しました

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No.3  小夜  評価:30点  ■2019-04-20 01:10  ID:WR/tFdbl8Lo
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こんばんわ☆

個人的には、出だしの部分(1行目がとくに)がお気に入りです☆
読んでいて、なんだかゾクリとする感じがして…。(もちろん良い意味で♪)
なんだかうまく感想を書き込めず、申し訳ないです…。
次回作も楽しみにしてまぁす☆


No.2  ナカトノ マイ  評価:40点  ■2019-04-12 21:59  ID:FLHCVOVt6M.
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桜って、どうして人をもの悲しくさせるのでしょうね。この詩を読んで起こった感情は、まさに桜を見た時と同じものでした。素敵な詩だと思います。
No.1  遠江  評価:50点  ■2019-04-09 19:18  ID:I/58kR.CvOA
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私は今年初めて桜をまともに見たような気がするんです
本当に見とれています それに引きずられて何か悲しみも感じる
青春よりもっと惨めな季節なんて言えちゃいます
それも含めて楽しい季節ですよね
総レス数 3  合計 120

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