パレイドリア

 割れたカップが

 朝日みたいに煌めいて

 安物のハーブティーと

 一緒に床で乾いていた


 たぶん

  きみが昨日

 淹れた、やつ


 無粋なトースター

  やかんが湯気を吹いて

  砂糖 と、

  ミルク、と

      マーマレード


 頑張んなくていいよ、

    って


 何度も何度も

  何度言えば覚えるかな


 随分 繰り返したけど


  もういい、

     もういいって


 いい加減いらないって



 飽きるほど泣いた

 何回吐いたか忘れたし

 眠れない夜も

 一週間過ぎたあたりで

  数えるのが面倒になった



 いい加減、


 きみがそうやって

 頑張れば頑張るほど

 フラッシュバックするんだって


 その背中が、

 仕草が、



 あの子みたいで


 気持ち悪くて死にたくなる




 ……だから、

  ずっと




 また、

 ほら。

 そうやって、



 カトラリーをそろえて

 紅茶の缶を開けて

 卵の殻を割るんだ


 あの子みたいに



 もうやめて

 もうやめてくれ


 どうか忘れたい

 どうか

     どうか、



 あの子を忘れて

 ぼくを忘れて



 ぼくが死ぬ朝まで、


  ここにいないで、





  きみは きみでいて

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2019年02月12日(火) 01時21分13秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しゅうございます
色々なものが放ったらかしで申し訳ありません

この作品の感想をお寄せください。
No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2019-04-08 19:01  ID:q1/xhayXSvY
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陽炎 様

遅くなってしまい申し訳ありません。
お返事をば。

失くし物がもう永遠に返ってこない時、
信じたくない気持ちが錯覚を起こして、
きっと現実より残酷な景色を作っていることがあるのかもしれません。
そんな時、それが本物か贋作かは、
割とどうでもいいことになっているのかな、と。

彼らがここから、崩壊してゆくのか起き上がるのか
神様も知らない、ということで。

ありがとうございました。
No.1  陽炎  評価:40点  ■2019-02-16 04:51  ID:uVD8.FKNQlU
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岩肌や雲や、それと解っていながら
別のものに見えてしまう現象と同じように
キミはキミだと頭では解っているのに
どうしても、あの子と重ねてしまう
この詩の語り手も
そしておそらくはキミ自身も

あの子は、僕にとって
心の傷になるくらい忘れられない存在で
思いだすと辛くなるくらい強い情が
そこにはあったのでは、と想像します
あの子はきっと、頑張りすぎてしまう子だったんでしょうね

キミもまた、あの子と同じように
頑張りすぎてしまう子なのでしょう
きっとあの子のマネしてそうしているわけじゃなく
その子自身がそういう子なのかもしれないけれど

僕にとっては、どうしてもそれがあの子に見えてしまい
辛くなってしまうのでしょう

この二人は、どうなっていくのでしょうか
行く末がきになります
総レス数 2  合計 40

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