園とメロン |
熱い日が終わって、冷たい皮膚が金属をさすって、尖った先端を愛撫して弄ぶ やんわりと抜け殻を拾って、積み立てていく作業に没頭して未来のことや過去のことを伐採する 草刈りをして、右を見てはて、世界の水平線に薄い水彩で線を引いたようにぼやけていて、淡い黄色と水色がふにゃけて雲が微睡んでいる 空に開いた穴に、蟻が渡っていくので、ばいばいと手を振ったりして、新しい街のことについて考えたり、雨音に耳をすませたりした 夜、読書中に頭の電池が切れたので、ねじまきで巻き直している私に、そっと紅茶とコンデンサを置いていった祖父の似顔絵。 蝶番に蜘蛛の糸がピンと張って極限まで反っていて、それに少しでも針を刺すと一瞬の間にひしゃげてしまうそんな構造物、お城、鉄塔、風車等。 風邪のために水たまりに古本を沈めて啜ったり、バッテリーが僅かしかないラジオを分解したりした 東屋に暴風が吹き荒れて、水浸しになった昨日のせいで、私はパンパンに膨れ上がった綿あめみたいになりました 美に花を指して、耳飾りに水仙を、赤のプリーツスカートを、はいて、夜の坂道に光玉を転がして流しました 加速度とエネルギーが一致する頃には、日は上がり、日光は黒点を映し出した。 知らない誰かに知らない言葉で「猫が産まれた」と妊婦が言うので、人々の膾炙を引いた。 僅かではあるが詩を認知療法にして書いている 壮年になって、まだ書いたいと思う人が書けば良いが、夏休みの台風は初潮をあっけらかんにさらっていく 紅い車、ロータリー、さくらんぼ、今祖母についている属性であって、性質ではない 柔らかい絨毯に皿の上にメロンが置いてあり、客人は一心不乱に食べていた 私は眺めているだけだ 園に入れた日のことである、了。 |
逃げ腰
2018年10月09日(火) 16時39分11秒 公開 ■この作品の著作権は逃げ腰さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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