失策の甘味
逸脱した感情が月の光に当たって、まだ潜在的に生きていかないといけないんだって、思い起こさせた。蝉みたいだ。素数の。
パズルが組み立て上がるまでに時間がかかる。
意味がわかるまで、いや使いこなせる迄に行く通りの道を通らないといけないのだ。
経験の獣道を理論が整備して行く様は、心地よいものだったけれど、それまでの、焦燥感が晴れて行く様は少し寂しいものだった。
雨上がりに煉瓦道に、水溜りを思い浮かべてほしい。
あるいは、山道の軽くワイヤーで拵えた、踏みならした〈みち〉を。
両者が至る所に拡がって、繋がって、土に戻したり、チカチカ舗装したりしている。
立体に階層になっていて、ここまで話すと事態はややこしくなるから僕は黙っておく
僕らの理解がそれを超えた時、形而上学が現前に表れて、意味のない言葉の連なりを繰り返し繰り返し、奇妙に流暢に零す
嘘つきがやって来て、月を太陽と言う。
僕が中心だって?
ただ、彼らは分かりやすく理屈は全て筋が通っていた。舗装された道しかなかった。
僕が傍証だってことはわかりきったことじゃないか。
「あなたは全て正しい、それゆえ間違っている」
「綺麗に教えただけです」
彼らはくすくすと笑うけど、総て教えてくれる辻褄はもう虚言と変わりなかった。
不理解がここまで来て、意味のあることだなんて思いもしなかった。
嘘と綺麗事には、論理矛盾がない代わりに真理がなかった、
欲しい!
僕らが回っている、其の逸脱が!
ああ、砂利の音!
今、歩いてるよ!
横道が逸れたそこが知らない場所だったなんて!

眠っている下地が、成長おける骨の痛み、は暗黒の時代の別名だった。
痛みが幸福の代弁者なら、不幸は何?
彼らに耳は貸さない。
良い眠りに耳障りの良い言葉は母親に散々聞かされた。
足がある。
石ころを蹴る。
舗装をこっちに寄せて広げて、間違えた理解をひっくり返して、失策の甘味を、再び味合う。
邪推なく、事足りた事柄がぽこぽこ湧き上がる瞬間に、裸で照れたりした!
絶対的価値観が死んで、門番が暇を出されたので、一緒に踊ったりした。
骸骨のそれは、つまりそういうことだ
道は綺麗でも死んでることがあるから...
無人のあぜ道に美意識を見出すことは容易いがそれまでのブロック塀とアスファルトの裂け目に意味を見出すことは難しい、死んでるから。完成された遊歩道に僕はびっくりしないんだ。死んだりしないから。

揺り動かして、身体が傾いて均衡を保って彼らが囃し立て嘘がバレていく
ほら、やっぱり知らない雨が降ってるじゃないか、樹木の蜜を貰いに蝶々が飛んでるじゃないか、頭の中で破れていたところを引っ付けて、新品にした世界と地平線。
ぴかぴかの地図が産まれたので、手を叩いて喜んだり、
やっぱり踊ったりした。
舗装から逃げて、砂利道に隠れていく。
後何年、潜伏するのかなぁ、裂け目がいくも見える。
彼らは去った、少なくとも僕からは。
徒らに。







逃げ腰
2018年09月17日(月) 11時53分22秒 公開
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