螺子

 壊れていた螺子が

   いつしか螺子穴を抱える玩具ごと

 どこかへ消えてしまうように

     壊れていた頃の記憶が

  壊れるに至るまでの経過ごと

       消えていってしまう


   その時は

    こんな深い傷が

  消えるはずがないと

      夜ごと怯えて

   泣いていたというのに


 消えてしまう


        消えて


 手首の赤錆びた跡が

    いつしか白んで

      馴染んでゆくたびに

  周りに目を瞑って

        奥歯を噛んで

  壊れることを望んでいた日の

    刃の冷たさも

        痛みも

  思い出せなくなってゆく


    きっと

 それが

     正しい

       ただしい

  進み方

       の

   はず


        だ、

            と




 繰り返し
       繰り返し、







   …………

     ………………


       …………、




 ごめん、

      ね


   ごめん
          ね



 まだ

      ぼくは


   にんげん

          で


 ごめん
        ね


    あれ以上、


  壊れること

        は




 できなかった、




      ……みたい


時雨ノ宮 蜉蝣丸
2018年08月02日(木) 01時23分26秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久しぶりにお邪魔させていただきます。
とりあえず思い出したので、ひとつ。

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