綺麗な色


 切り刻んだ苺の雫

 焼いたばかりの辰砂の壷

 グラスの縁に零れるワイン

 泣き晴らしたあの子の両眼


 嗚呼綺麗な色

 記憶を溶く色

 どこにでもあって

 ここにはない色


 綺麗な 染みつくような

 滲み融けてゆくような

 手の届かない

 夕空の色


 褪せた硝子の角灯に宿る

 見知らぬ親子の笑顔

 艶めく恋人達の頬


 ワタシだけがぽっかり浮いた

 夕霧に沈む街の色


 継ぎ接ぎだらけの両脚と

 軋み曲がった両腕で

 石畳の中 貴方を探す

 もう会うことのない

 抱きしめてもくれない

 どこにもいない

 貴方を探す



 彼の地で尽きた

 貴方の胸に

 流れ溢れた

 生の色



 嗚呼

    綺麗な色、


 初めて貴方が

 ワタシにキスした

 湖畔に浮かんだ

 秋の色、



 もう二度とない

 過去の色


 甘く優しく

 憎く切なく

 ワタシを焦がす


 愛の色
時雨ノ宮 蜉蝣丸
2018年02月23日(金) 04時52分45秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
フィーリングのみで久しぶりに。
最近ほんのり壊れ気味。

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