失踪

 酔っぱらった
 おとーさんと
 せみ取りにいった。
 夏の昼下がり、みんなぼんやり眠りこけていた。
 
 ちょっと待ってろ。
 おとーさんは
 虫網片手に
 クマンゼミ。
 
 クマンゼミ。
 クマンゼミ。
 クマンゼミ。
 集く猛暑のクマンゼミ。
 
 木登りするおとーさん。
 麦わら帽子の陰からぼくは見ている。
 飲んだラムネはつめたさだった。
 
 木の上から声がする。
 ほらあ、でっかいのがいるぞ。
 ほらあ、いっぱいいるぞ。
 どんどん登るぞ。
 木の上は眩しいぞ。
 
 ギラギラしているぞ。
 
 ギラギラしているぞ。
 
 ギラギラしているぞ。
 
 ギラギラしているぞ。

 ほんとうに、ギラギラしているぞ。

 夏だぞ。夏だぞ。

 どんどん登るぞ。
 

 さて、ぼくは

 父の声がする木を見上げていたのだが

 ただ見上げてばかりいたのだが
 
 飲み切ったラムネのビーだまが

 カラカラ鳴ると
 
 いつの間にやら
 
 夏が終わっていた。
 
 父はそのまま木から降りてこなかった。
 
 蝉は
 
 声だけ聞こえて、捕まえられない。一匹も。

 一匹も。

 ごめんなさい。
おおむ
2016年07月21日(木) 04時30分14秒 公開
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No.5  おおむ  評価:0点  ■2016-08-28 00:58  ID:n5pPeg9O82.
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まさよさん
感想ありがとうございます。返信遅れて申し訳ありませんでした。すっかり自分が書いた詩の存在を忘れていました。。本当にすみません。
蚊取り線香の香り、あれは、ぼく結構すきです。最近のはなんか花の匂いがしたりするやつとかあって、驚きました。
感想ありがとうございました。
No.4  まさよ  評価:50点  ■2016-07-24 20:58  ID:JOBPq/XKZg.
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読み進めて
強い郷愁を感じました。
ホント
どうして、真夏と死って結びつきやすいのでしょうね。
ワタシは蚊取り線香の香りが死へ結びやすいのです
なんでだろう・・判らないのです。
No.3  おおむ  評価:--点  ■2016-07-23 22:52  ID:te6yfYFg2XA
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游月 昭さん
感想有難うございます。勢いに任せて書いたので酷評が来るかと思いましたが、お褒め頂いて安心しました。リフレインのところは、夏のせみの、みんみん感がほしくてやったんですが、少し危ういかなと自分も思ってました。しかしとにかく感想うれしかったです。

蝉読んでみました。
これは蝉感と虚無感が圧倒的ですね。。。足元にも及ばないです。
しかし前から思っているのですが、なんで真夏と死って結びつきやすいんでしょうかね。ぼくだけでしょうか。
ありがとうございました。
No.2  游月 昭  評価:0点  ■2016-07-23 22:06  ID:emodMEn5j1U
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こんばんは。今、中原中也の『蝉』を読んで、おや?っと思いました。
No.1  游月 昭  評価:50点  ■2016-07-21 20:29  ID:YsjZ.3o0GEo
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こんばんは。
なんだか3行目辺りから涙腺のバケツ班が構え出したので、ヤダなぁって思ったりして。失踪と書かれてはいますが、読者にはでどうとでもとれて(災害だったり、病気だったり、離婚だったり)、良い具合にぼかされてるなと思いました。
「声だけ聞こえて」というのも「蝉の声」、「父の声」とが混ざり合っていて、耳鳴りのように残り少しずつ消えていく。
他の行の繰り返しとも呼応しているのだと思います。
「ごめんなさい」一番謎の言葉ですが、語り手(子)の父親に対する、憧れ(愛に似たもの)から来る漠然とした自責の念。「いい子にしていなかったから」というものかな、と。
個別の繰り返しの回数がちょっと多くて危ない気もしますが、
でもこれは個性かな。
バケツ班の足元は濡れています。

凄く良かった。
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