落涙

 ラジオが、鳴っている

    古い

  お下がりの

        小さな



   流れる

 コントラヴァス

         に

    ピアノが

       絡んで

  ドラムが

      混ざって


   優しく。

   優しく。




 風が吹いている

      夜の嵐

 君は楽しそうに



『我々を祝福しているようだ』

   まさか。

 反射的に

    そう返すと

『ならば君は、何だというのだ』


  どうせ

     誰にも

  歓迎されない

  顧みられやしない


 どうせ同じ

     風の音ならば

 明るい解釈のが

     楽しくて

  よかろう?

        と


 まるで

   お偉い科学者みたく

     君は胸を張る



 何を。

         今さら。


  俺達には

    張れる胸も

    切れる自腹も

  もう

   どこにもないはずだろ

        と。

   曖昧に。

   曖昧に。



  綺麗な君の

   頷く顔が

    どうしても


   見られなかった、




       午前零時。




 ラジオが鳴っている

        楽しげに

   唄う
      君。




『世界の終わりを

     見ていたかったよ』

   君と二人で。





 コントラヴァス

          ピアノ

   風

       ドラム


《何かを間違えてしまったのだ》


 縄の軋む音

        君の喘ぐ声

    吐息






  差し込む街灯の
          白

 揺れる

       君の細い脚

   『 最 悪 』






 優しいラジオの旋律



          唸る嵐



    こぼれ落ちる



  涙は、


    きっと













      ……何だろうか

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2016年04月18日(月) 01時32分59秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
《最後に君の顔を、見ていたかった》

日常、ニュースを見ながら、なぜこんな素晴らしい人がいなくなって、僕は生きているのか不思議に思いますが。
どうしようにもないこともまた、明白です。

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