ある生徒の日記
9月5日(金) 曇り
  今日学校へ来たら 上履きがなくなっていました
  スリッパを履いて教室へ行ったら
  誰かのクスクス笑う声が聞こえました


9月8日(月) 晴れ
  教科書がまっ黒に塗りつぶされ
  ところどころ破かれていました


9月9日(火) 曇り
  給食にえのぐをかけられました
  それを食べろと云われました
  食べなければ殴ると云われ
  仕方なく我慢して食べました
  トイレで吐きました


9月10日(水) 雨
  掃除の時間 箒の柄で思い切り叩かれました
  ふたりに背中から抑えつけられ
  お腹を何度も殴られました


9月15日(月) 晴れ
  裏庭に呼び出されました
  殴ったり蹴られたり 首を絞められたりしました
  うるさいくらいに蝉がジィジィと鳴いていました


9月16日(火) 晴れ
  今日は靴箱に あきらかに犬か猫のものと思われる
  排泄物が置かれていました
  机の中は誰かが食べ散らかしたであろうパン屑や牛乳パック
  ゴミがぎゅうぎゅうに押し詰められていました 
  「どうせお前はゴミ箱だろ?」
  と笑いながら 誰かが空き缶を背中に投げつけてきました


9月17日(水) 晴れ
  トイレに入っていたら いきなり
  水の入ったバケツが降ってきました
  そのあとホースで散々水を掛けられました
  ドアを開けようとしても
  つっかえ棒をしていて開けられません
  休み時間が終わるまで続きました
  びしょぬれで教室へ行ったら 先生に怒られました

  放課後 散々殴られ蹴られしながら
  「明日、1万持ってこい」と云われました
  無理だよと断っても 聞き入れてくれません
  お母さんが洗濯物を畳んでいる間に
  こっそり財布から抜き取りました
  それから毎日のようにお金を要求されるようになりました


10月1日(水) 曇り
  今日 コンビニでマガジンを盗んでこいと云われました
  おもちゃ屋でゲームソフトを盗んでこいとも云われました
  出来ないと云えばひどい暴力を振るわれるだけです
  僕はなるべく何も考えないようにして
  マガジンを ゲームソフトを盗みました
  僕は悪い子です


10月3日(金) 晴れ
  今日 給食の時間 僕の分だけ配膳されず
  代わりに新聞紙に敷かれた犬の糞が置かれていました
  それがお前の餌だと云い
  みんなが見ている前で 四つん這いになって食べろと命令されました
  彼らは一体 何がしたいというのでしょう
  僕を辱めることが そんなに面白いのでしょうか
  逃げだすことも出来ず 泣きながらそれを口にしました
  一口だけで無理でした 
  僕が躊躇していると ひとりが頭を強く押さえつけ
  顔を犬の糞まみれにされました
  あまりに悔しくて 悔しくて
  逃げるように学校を早退しました
 

10月8日(水) 雨
  3人に押さえつけられ 無理矢理服をはぎ取られました
  女子もいたのに 僕はすっぽんぽんにさせられてしまいました
  服は教室の窓から放り投げられました
  僕はすっぽんぽんのまま 服を取りにいかねばなりません
  体操着に着替えようにも ビリビリに破かれてしまっていました
  仕方なく 3階からすっぽんぽんのまま 
  とぼとぼと外まで降りていきました
  いっそ消えてなくなってしまいたい気分でした


10月10日(金) 晴れ
  毎日 殴る蹴るの暴行を受けてます
  中学に入ってからずっとでした
  どうして僕なのか なぜ彼らに選ばれてしまったのか
  いくら考えても答えを導き出すことができません
  きっと彼らにとって もっとも標的に出来やすかった
  ただそれだけが理由なのだろうと思います
  自殺しろとまで云われたこともあります
  僕には存在価値すらないということなのでしょうか
  水曜日 すっぽんぽんのまま3階から外まで降りていったとき
  途中で担任とすれ違ったけど 何も云ってはくれなかった 
  僕は誰に相談することもできないまま
  ただただ 彼らの為すがままになっていなければならないのでしょうか


10月15日(水) 晴れ
  明日までに10万持ってこい、と云われました
  持ってこなかったら 屋上から突き落とすとまで云われました
  持っていかなかったら 彼らに殺されてしまう
  どうしよう どうすればいい
  お母さんの財布から盗むのはもう無理です
  おばあちゃんにもらっていたこともあったけど
  10万円なんて僕には到底用意できそうにありません
  死んでしまいたいとは常に思っていたけれど
  殺されたくなんかない 絶対に殺されるのなんてまっぴらだ
  考えろ 考えろ 考えろ


10月16日(木) 曇り
  今日は具合が悪いといって 学校を休ませてもらいました
  学校へ行かなかったら 10万持っていかなかったら殺される
  胃の辺りがキリキリと痛みました
  おかゆを作ってくれましたが 数口食べて戻してしまいました
  こめかみ辺りがずっとピクピク痙攣しています
  僕が死んだら きっとお母さんもおばあちゃんも悲しむでしょう
  それだけは避けなければなりません
  今まで沢山 迷惑ばかりかけてきてしまったから
  これ以上 悲しませたくはありません
  昼頃 意識もはっきりしないまま外に出ました
  気が付くと ホームセンターの刃物売り場の前に立っていました
  1本のナイフを手に取っていました 
  傾けると反射して とても綺麗でした
  僕はそれを おもむろに懐にしまい
  一目散に走り去りました
  店の人には気づかれていないようでした
 
  僕は明日 このナイフを学校へ持っていくつもりです
  お母さん こんな僕をどうか許してください
  おばあちゃん どうか長生きしてください
  いままでありがとうございました
 

  僕が明日どうなっても 変わらず
  あなたの家族でいさせてください



 
陽炎
2016年04月15日(金) 10時23分11秒 公開
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No.4  陽炎  評価:0点  ■2016-04-22 18:55  ID:h9r/ANe14cU
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☆ゆうすけさんへ☆

ゆうすけさん、お久しぶりです
どうしてるかなあ、と思っていたとこでした
いつもありがとうございます

どんどん陰湿でエスカレートしていくいじめ
いじめられている側はなかなか声に出して云えないんですよね
云うことでさらにひどいいじめに遭うことを恐れているから

思うんですけど、もう「いじめ」と呼ぶのは止めた方がいいんじゃないかと
教科書などを黒く塗りつぶしたり、落書きをしたりすることは
器物破損ですし
殴る蹴る、ずぶ濡れになるほど水をかけるなどして
けがをさせたり病気にさせたりすれば、
それはもう暴行・傷害です
えのぐのかかったものを無理矢理食べさせるなどは
下手をすれば死んでしまう可能性だってあり
お金を要求したり、万引きを強要したりすることは脅迫です
服をはぎとったり犬の糞を無理矢理食べさせたりは人権侵害です
これは立派な犯罪です
いじめなんて生ぬるい言葉でにごしてしまうから
いけないのだと思うのです
これは犯罪なんだということを、誰かがしっかり云わなければいけない
……少し興奮してしまいました

間違ってるかもしれないけれど
ナイフは「僕」にとっての希望なんです

ありがとうございました
心より感謝


☆まさよさんへ☆

こんばんは、まさよさん
コメント、ありがとうございます

いじめる人間は絶対ひとりではやらないんですよね
大体が徒党を組んでひとりをいじめて面白がる
周りで見てる人間も面白がって見てる
誰も止めない、止めたら今度は自分がやられるかもしれないから

結構生々しく描いたので、不快になる人もいるかもしれないと思ったのですが
最後まで読んでいただけてよかったです

ありがとうございました
心より感謝


☆時雨ノ宮蜉蝣丸さんへ☆

いつもありがとうございます

その大人が、子供と一緒になっていじめに参加しているんだから
どこに救いを求めたらいいというのでしょうね

思慮や勇気を持ちだしても、この問題はなにも解決しません
加害者の気持ちを理解したから、終わるものでもありません
まずは別の安全な場所へ避難させてあげることが先決なんだと思います

この詩の「僕」はされたことを克明に日記に記していました
言葉に出して助けてと云えなかった「僕」の必死のSOSとして

いつも何か最悪な結末になってしまうまでなにもしない大人たち
私も含め、ですが、事は起きてるんだっていうこと
見たことを見なかったことにするのはやめにしてください
子供たちをこれ以上追い詰めないでください、と云いたいです

ありがとうございました
心より感謝
No.3  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:50点  ■2016-04-18 02:05  ID:eFOY3cHRZZU
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こんばんは。
小さい頃、よく人に虐められておりました。同級生から仲間外れにされたり、古い記憶では保育園の保母さんからも、躾にしてはいささか度が過ぎた言動を受けていました身です。
正直今でも、『保母さん』という人種が怖いです。

加害者の考えがわからない、とは言いません。思慮とか勇気とかを持ち出す気もありません。
ただ、誰も得をしないことであることは、確かです。感情や倫理をすべて削ぎ落として考えたとしても。
学校と家庭しか知らない子達に、その外側を見せてあげられるのは、大人だけです。手をとって、いじめという廓から連れ出してあげられるのは、外側にいる人達だけです。残念ながら。

本気でいじめを止めたくば、この詩くらい鮮烈に訴えろ、と。色んなニュースが言ってることに対し、思いました。そして言わせてください。
失くした人生は慰謝料じゃ買えねぇんだ。あんたら大人は俺なんかより長く生きてんだろ、わかってるはずだろ。今さらこんなこと言わせんじゃねぇよ、と。
No.2  まさよ  評価:50点  ■2016-04-16 22:43  ID:/Wd6bpFxA4A
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陽炎さんこんばんは。
読み終わって、
遠い昔、障がいを持った友達の息子さんが
苛めに遭い、押さえつけられて、
ズボン脱がされて体をさらされて・・・。

「じごくのくるしみだわ」と言っていた
友の言葉を想いだしました。

少しも不快はかんじません。
むしろ。良く書ききったなと思っています。
No.1  ゆうすけ  評価:50点  ■2016-04-15 15:02  ID:jE4RG11eTPI
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お久しぶりです。
日々の煩雑に追われ随分とここを離れていて、やっと立ち寄れたら陽炎さんの詩がありました。
恐ろしいまでの鋭利さで、深く突き刺さってきますね。陽炎さんが、いじめに対して激しく憎悪しているのが伝わってきます。私もどちらかといえばやられる側でしたし、仲間もやられる側が多かったので、いじめには激しい憤りを感じていますよ。
最後にナイフをどう使うのか? 加害者どもに一矢報いるのか? そこが書いていないことで読者に想像させるのがいいですね。
あまりにも凄惨ないじめの数々……たしかに不快に感じる人もいるかもしれませんが、創作は躊躇うことなく恐れることなく攻めまくらないと、中途半端では心に響かないと思いますよ。詩……というより小説に近い気もしないでもありませんが、それもまたよしです。
私の子供には、いじめらていたり仲間外れになっている子がいたら助ける優しさと、それを行える強さをあたえていこうと思います。学校が全ての生徒にとって楽しい場所であることを祈ってやみません。
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