マイク
可哀想なマイクはいつもビール片手に階段に座っている
ベースメントに少しだけ歳下の男と住み
アパルトマンの集金を買って出る

すれ違うのはこの通りだけ
小さい身体
赤い顔
大きな鼻
しわがれた声と慣れない英語
彼は本当はミカエルだと聞いた

いつもマイクは笑いながら
怖がるな、怖がるなと言ってまわる
亡霊でもなく猫でもなく木でもなくレンガでもない
彼はこの通りの何なんだろう
この男が何なのか知らなくていいのは何故なのだろう

いつだかマイクが着ていたのは
歳に似合わぬ白地にオレンジのボーダーの服
それが彼の天真爛漫さを引き立てて
なんだか子供のように見えた
老いた皮膚も抜けた歯も引きずる足も
哀れなような愛おしいような
ふらつく足取りで大声を出して
私は通りの向かいから彼を少しだけ眺めた


マイクは今日も階段下に座っている
手短に挨拶をして
怖がるな、怖がるな
オレンジのボーダーの服なんて着ていないのだけど
彼は本当はミカエルだと聞いた
spoon
2015年10月17日(土) 06時25分28秒 公開
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■作者からのメッセージ
2度目の投稿です。人物描写にチャレンジしてみました。

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