或る少女の日記

 七月 二十日

 蝉が ないていました

 三日ぶりに はれて おそらが

 みえました

 大きな くもが 出て

 にいさま に

 あれは にゅうどうぐも という

 雨をつれてくる くも だよ と

 おそわりました




 七月 二十二日

 今日も はれでした

 ときどき おそらが きらっと

 ひかることが ありました

 にいさま に おたずねすると

 あれは ひこうき というんだよ

 と おしえてくださいました

 とても きれいですね と

 八重が いうと にいさま は

 そうだね と

 おへんじ されました




 八月 二日

 きょうは くもりでした

 とうさま が おしごと に

 行かれて もう 三日です

 八重が しんぱいしていると

 かあさま が きて

 とうさま は 八重たちの ために

 とおくで たたかわれているのです

 と いわれました

 にいさま に ご本を 読んで

 いただくと すこし

 あんしん しました





 八月 十日

 雨が ふりました

 へんな 人たちが

 うちへ きました

 かあさま と ずっと

 むずかしい おはなし を

 されて いました









 九月 三日

 かあさま から むずかしい

 おはなし が ありました

 むずかしくて 八重 は

 わかりませんでした

 でも にいさま が

 こわいかお を されていて

 八重は だまっていました









 十一月 三十日

 くらいと*ろで かいて

 いるので どこかまちがえて

 いるかも しれま*ん

 きょ*は はれでした

 お*らが 何*も

 きらっと しました

 にいさま に **れいですね

 と *ったら

 こわいかお で どこかへ

 行ってしまわれました

 八重は こわくて

 すぐに ごめんなさい と

 いいましたが にいさま は

 ちがう と *を**れました










 三月 二十九日

 こわいことが ありました

 また おそらが ひかりました


 とうさま が

 亡くなられました










 七月 八日

 おそらが なんかいも

 ひかって たくさん

 大きな おとがします


 へんな お手紙 が

 にいさま へ 届きました







 七月 **日

 にいさま が 汽車にのって

 どこかへ

 行ってしまわれました

 八重は たくさん なきました

 かあさま は

 おくに を まもりに

 行かれたのです と

 いっておられました

 でも 八重は ***

 * *** * 

 にいさま は ***






 七月 十八日

 このまえ は

 なみだで 紙が よごれて

 しまいました

 かあさま に

 泣いているじかんなど

 わたしたちにはないのです

 と しかられて

 しまいました

 きょうも あなのそと は

 大きな おとがします

 こわいです

 にいさま に 会いたいです








 七月 二十四日

 こわい

 たすけて

 かあさま

 どこに おられるのです

 にいさま

 たすけて












 八月 二日

 とうさま の おばさま

 に お会いしました

 おばさま と すこし

 おはなし を しました



 おばさま から








 八月

 にいさま

 どちらに おられるのです

 はやく

 かえってきて

 八重は











 八月 **日



 にいさま

 きょうは はれて


 にゅうどうぐも が


 おそらが


 おきれいで




 きっと

 にいさま も



 やえ
       は
















《その日の 正午

 国中のラジオが

 戦の終わりを告げた》

                   
時雨ノ宮 蜉蝣丸
2015年08月04日(火) 02時47分15秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
長々とわかりにくくてすみません。
気分を害された方は申し訳ありません。

この作品の感想をお寄せください。
No.6  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-08-13 01:28  ID:WTIMKAhaPbM
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陽炎 様

コメント感謝致します。
仰るような手の込んだことは何もしていないので(笑)、大変恐縮です。。。
言いたいことが伝わっていれば幸いです。

入道雲の先で、にいさまはきっと待っていたと思います。
ありがとうございました。
No.5  陽炎  評価:50点  ■2015-08-11 19:34  ID:qCJ8yUyU2nY
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すごく練り上げられた作品だと思いました
時系列に読み上げていっても
なにが起こっているのかが想像できてしまう
力作だと思います

にいさまは生きて帰ってこられたのでしょうか
No.4  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-08-11 19:26  ID:F8k0p4ZBQ.2
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ジョーカー 様

コメント感謝致します。
やっぱりこういう作品は、フィクションであれ、ある程度のリアリティが必要な気がします。
同時に、思考を巡らせる余地があるからこそ、郷愁や感傷や現実への動力を見出だすことができるのだとも思うのです。

ありがとうございました。
No.3  ジョーカー  評価:40点  ■2015-08-10 20:39  ID:79GucnjyPpk
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日記形式の詩は初めて見ました。ひらがな表記が「切なさ」を上手く表現していると思います。

「八月二日」に何があったのか気になるところです。想像の余地がありますね。
No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2015-08-05 16:44  ID:WTIMKAhaPbM
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クレナイ 様

コメント感謝致します。
『火垂るの墓』、懐かしいですね。子供の頃はただ怖い映画っていうだけでしたが、その「怖い」という感覚こそが重要なのかもしれないと最近思います。
俺の祖母の兄が戦争で亡くなっており、俺も何回となくそういった話を聞かされて育ちました。

「心動かされ」、嬉しいです。
ありがとうございました。
No.1  クレナイ  評価:50点  ■2015-08-04 20:46  ID:dJ/dE12Tc8A
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こんばんは。
もうすぐその日に近づきますね。
実際に体験をされていない私のようなものにとっても、忘れてはならない、大切な思い出だと思います。

フィクションとのことですが、きっと実際にこのような日記を書かれたり、思われたりした人がいたんだろうなぁ…と思いながら、読ませていただきました。それと、久しぶりに『蛍の墓』を思い出して、見たくなりました。

素敵な、というとなんだが違うような、もっと他に適切な言い方を知っていたらいいのですが、思いつかず。心動かされました。ありがとうございました。
総レス数 6  合計 140

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