駆け巡る冷たい血液

泣かない奴だと思われてる
感じない奴だと云われてる
まともな人間になんかとてもなれないし
好かれる人間になんかもっとなれない 
誰かが嘲笑ってるのが聞こえる
あからさまに 聞こえるようにわざとらしく
だからあたしは平気なふりを装うんだ
平気へっちゃらだって笑い飛ばしてやるんだ
いつか見てろよって、拳に爪を食い込ませながら


          昨年、アイツが死んだときも涙ひとつ零れなかった
          悲しくなかったわけじゃない
          ただ、奇麗事にしたくなかった
          アイツはいつも、ひとりでいるとたまらなく淋しそうな顔をする奴だった
          強い酒を毎晩のように飲み明かしては無茶苦茶なことばかりして
          まるで自分を罰しているかのように 自分で自分を痛めつけなきゃ気が済まないみたいに
          めちゃくちゃな奴だけど ホントやさしい奴だったんだ
          あたしの話を真剣に聴いてくれて
          辛かったなって云ってくれて
          力強く抱きしめてくれたんだ
          生きててよかったって その時本気でそう思った
          そんなアイツが、バイクで事故ったって聞いたときには
          もう頭が真っ白だったよ
          病院の霊安室で 白い布を被せられたアイツの顔
          まるで眠ってるみたいだった
          それでもやっぱり 涙は零れなかった
          泣いてみようとしたけど ダメだった
          悲しくなかったわけじゃない
          辛くなかったわけでもない
          それでも



雑踏にたたずんでひとりきり
冷たい北風が胸に沁みた
人は争いごとが大好きだ 
人の争っているのを見るのも好きだ 
誰も止めようとしないのは自分たちの楽しみを、
そう簡単に終わらせられては困るから 
争いごとには目がないくせに、人は関係ないふりをするのが実にうまい 
あたしの云ってることが嘘だと思うなら、自分の胸に問いかけてごらんよ 
心の奥底でニヤリと笑うあなた自身にきっと出会えるはずだから 
なんてね、本当は他人の心なんか何ひとつ見えやしないのに
図ったように他人を決めつけて、解ったように勝ち誇った顔をしている 
あの人もこの人も、ほら、あなたの一番大事な人さえも 
そうして、一番何も解っちゃいないのは
何もかもすべてにしたり顔して澄ましてる このあたし自身だ


今、街の乾いた風にふかれながら、思う 
人間は弱い 弱いから人に石を投げつけないではいられない 
弱いからひどい暴力をふるい
弱いからひどい言葉を平気で吐き捨てられる
誰かに救ってほしいと願うけど
誰も救ってなんかくれないことも、ちゃんと知ってる 
 

みんなこの風の中で泣いている 
誰かに必要とされたくて、誰かの涙を拭ってあげたくて 
自らのナイフを自らに向けて
振り回しては、迸るほどの血を流しながら 


泣かない奴だと思われてる 感じない奴だと云われてる 
まともな人間になんか、なれないからってなんなんだ
好かれる人間になんか、なれないからどうしたというのだ
泣かないことは罪なのか
重罪にかけられるのか
税金でもとられるとでも?
 



泣かない奴だと思われてる 感じない奴だと云われてる 
凍てつくほどの血液が、あたしのこの躰を駆け巡る
 



あたしのこの躰を、駆け巡る





陽炎
2015年04月02日(木) 02時19分45秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
4月に入りましたね。
桜も咲いて、春真っ盛りです。

が、私の詩にはまったくもって春のはの字も感じさせるものがない(>_<)

お付き合いいただき、ありがとうございます

この作品の感想をお寄せください。
No.3  陽炎  評価:0点  ■2015-04-05 09:31  ID:3MOjXOnubh.
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☆時雨ノ宮蜉蝣丸さんへ☆

時雨ノ宮さん、こんにちは
いつもありがとうございます

そうですね、やっぱり人は
自分の都合のいいように話をするものだし
自分の理解を超えたものは
徒党を組んででも、排除しようとする生き物
......こんなこと云ってる私が
一番信用ならないんですけどね(^^;

時雨ノ宮さんの方でも桜咲きましたか
 花に嵐のたとえもあるさ
とはよく云ったもので
こちらも強風吹き荒れています

ありがとうございました
心より感謝


☆小夜さんへ☆

いつもありがとうございます

人前で泣くことなんて出来ないですよね
どんなに悲しくても
どんなに辛くても
それが周囲には「感情がない、冷たい人間」と
そんなふうに見えてしまうのかもしれません

「鼻をすすり泣いてる雰囲気を演出」って
すごい、いい意味で女優さんなんですね

いえいえ、全然意味不明なコメントじゃないですよ
ありがとうございました
心より感謝
No.2  小夜  評価:20点  ■2015-04-04 18:17  ID:Zx/2AUZFW8I
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こんばんわぁ☆

私も泣かないです…とゆうか、泣けないです。
人前では特に。
寂しくて本当は泣きたいけれど、涙が出てきてくれない。
悲しい時も同様。
なのに。
寝ている時に涙が出てくる時があります(汗)
何のへんてつもない夢なのに、なぜか…。
ただ単に、私は感情表現が下手なのでしょうね(苦笑)
そうゆう訳でして。
『鼻をすすり泣いている雰囲気を演出』して誤魔化したりしています(汗)

長々と意味不明なコメントを書いちゃって御免なさいです…。
次回作も待ってまぁす☆


No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:40点  ■2015-04-02 22:12  ID:3mSXxTMsmaU
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こんばんは。

喜怒哀楽とか愛とか怨嗟とか絶望とか希望とか言ってる割には、人間やっぱり都合の悪い感情はどこかへうっちやりたい生き物なんだなぁ、と読みながら思いました。
人間が他者を「人でなし」と罵るのは、否定することで自分が彼らの仲間でないことをアピールしようとしているのではないでしょうか。

反対者を弾圧することで自分を正当化しようとする。
陰口を叩き合うことで自身の仲間を増やし、安易に裏切れないように縛ろうとする。
悪者を仕立て上げることで自分に向くはずの矛先を逸らそうとする。

嗚呼、小賢しい。

春が来ましたね、俺の住むところでも桜が咲き出して、春一番が吹き荒れております。
いっそ何もかも吹き飛ばしてくれたら嬉しいんですがね。
ありがとうございました。
総レス数 3  合計 60

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