月ヶ瀬

小さい頃
毎年のように訪れていたそこは
暫く見ない間に変わっていた

世間では自然が壊れていく中
そこでは梅の木が増えていた
土筆の消えた空き地とは大違い

昔は数分たたずに
姉におんぶを強請ったようなきつい坂を
のんびりと登っていく

「凄いなぁ」
綺麗を超えて発した言葉に
両親は誇らしげに笑った

梅の香りに包まれて
自分にもこの香りが移りそうだ
昔習った和歌を思い出す

黄色い梅もあるのか
私のお気に入りは濃い桃色
枝垂れ梅の下から世界を見る

梅が続き、山が続き、川が続く


それがつい先日のこと
世間では桜前線について語っている
季節の移ろいは早いものだ

ーー次は吉野に行きたいなぁ
親に聞いたら、昔はよく行っていたらしい
私は 断片的にしか覚えていない

父の膝くらいの目線から
満開に咲いた桜の木を見上げ
風に舞う花弁と戯れていた

季節は速く移ろうのに
もう随分と昔の事に思える
少し不思議な気分になった

梅も桜も 散り際が いっとう綺麗だ
私も綺麗に散れるだろうか
ヤエ
2015年04月01日(水) 00時14分30秒 公開
■この作品の著作権はヤエさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
最近、自分の中で詩に対する気持ちが変わってきてる気がします

この作品の感想をお寄せください。
No.4  ヤエ  評価:0点  ■2015-04-03 21:59  ID:L6TukelU0BA
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Aさん
聞きました!ありがとうございます。
確かに、少し感じるところはありましたね。
関係はないのですが、高校の時の古典の先生(弓道部の私の顧問でもありましたが)に声が非常に似ていてびっくりしました。
この方の中で芸術家というのは、個性を自覚できているが前提なのだろうかと思いました。
あと、オリジナリティではなく〜というところには、凄く感銘を受けました。教えて下さりありがとうございます。
No.3  A  評価:20点  ■2015-04-02 01:29  ID:O6O0a8UCtXM
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YouTubeで『小林秀雄「個性と戦う」』という小林秀雄の講演が聞けます。お時間ある時に聞いて見られる事をお勧めします。この作品とメッセージをあわせて考えてみると、実は響き合うものがあるのではないか、と思いました。
No.2  ヤエ  評価:0点  ■2015-04-01 18:30  ID:L6TukelU0BA
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菊池さん
ありがとうございます。
確かに、散ると言えば死を連想することもありますね。私的には実が出来るのが子をお腹に授かった期間であり、実が落ちて種となるのが子供を生んだ時ならば、花が咲くのは正に恋などで男女の交わる青春の時期、散り際は大人への段階ですかね。人間は長寿なので、今ではすっかり例えにくくなりましたが……

月ヶ瀬に久しぶりに行くと、前は気付かなかった野生の猪を使ったボタン鍋の店がありましてね。
和ガラス越しに揺らぐ梅と花弁を見ながら、日差しは春とはいえまだ少し肌寒い時期に鍋を頂くというのはいいものでしたよ。
時間があれば、いつか行ってみて欲しいですね。
No.1  菊池清美  評価:50点  ■2015-04-01 08:14  ID:dJ/dE12Tc8A
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名勝月ヶ瀬梅林…納得の題名ですね。

言い回しの巧みさ、散る花に桜も交えた模範解答の様な完全主義…
小説なら気を入れて読むのでしょうが、詩はリラックスして読みたいですね…単なる独善ですが…

花の散るのは唯の段階…其れに死を重ねるのは人の詩心でしょうね、重点は此処なのかな。

朔太郎に憧れサトウハチロウはどうもと思った時も有ります、そんなものですね好みなんて。
一生懸命に打ち込む態度が感じられて良かったです。
  
総レス数 4  合計 70

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