その世の貴女に告白を |
もう会えなくなって、何年経っただろう。こうして歳を取ってシワが増えるのは、お前も同じかい。 そうそう。今宵は、あの日と同じ満月だよ。今、朧ろに思い出しているんだが、店の名前は何て言ったかな。どうしても思い出せないんだ。夕刻の狭い階段と、冷たい壁。何もかもが老朽化している店内を物ともせず、堂々と先導切って案内してくれるお前の後ろを、僕はただついて行った。 そこからは、酷く焼き付いているよ。君が振り向いて、軋ませながら開いた扉の向こうには、薄暗い月明かりに咲いたようなカウンターの、一輪の月下美人――。とても素敵だった。花言葉を初めて教えてくれたね。『ただ一度だけ会いたくて』。初めて愛する花になり、お前と添うキッカケになったんだ。 なぁ、お前。今度この手紙を胸に会いに行くから、その時は、僕から、あの花を贈らせておくれ。そして、もう一度二人で呑もう。僕らの出逢いに乾杯、と。 |
安定剤
2015年03月19日(木) 00時34分12秒 公開 ■この作品の著作権は安定剤さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 安定剤 評価:0点 ■2015-03-24 21:58 ID:X.axym59Pvo | |||||
>青ガラス様、拝読の上、高評価をいただきまして、有難うございます。 これは他サイトで上げたものを読者様の意見から参考にして書き直したものでしたので、そのような感想を目にして、自分の書いたものが、今度はちゃんと伝わったのだと、とても嬉しく思っております。 今後も挙げていく予定ですので、また目に留まった際には来訪してくださいませ。 |
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No.1 青ガラス 評価:50点 ■2015-03-24 12:27 ID:GaMBFwOFFuY | |||||
当事者にしてみれば、あの世ではなくその世がいいですね。 流れ良く読みやすく穏やかな語りがなおさら切なくもあります。 読み進めるうちに暖かい想いを感じてウルっとなり 月下美人のような素敵な方の後ろ姿が目に浮かびました。 |
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総レス数 2 合計 50点 |
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