魚よ、魚
水に泳ぐうお一匹
それをのぞく少女一人

少女はうおに手を伸ばし
掴んでは天へと差し出して

うおは尾を 腹を跳ねさせながら
自らの体に張り付く水滴を撒き散らしながら
降り注ぐ陽の光に輝きを装飾し
助けをうた

少女にはうおが眩しい

父は言っていた
人はあらゆる命を食べて
その分まで長生きしているのだ、と
そして、しかし
食べた命の分までは生きられないのだ、と

少女は知っていた
これから生まれ、生きて、死んでいくものしか
天は照らしてくれない、と

うおは見ていた
あの日は生まれ出た瞬間の世界を
ある日は生きてうごめく日々の変化を
この日は死んでいく定めという絶望を

水に泳ぐうお一匹
それをのぞく少女一人
二つを照らす天一つ

少女は泳がせたうおに問う

うおよ、うお

一匹は聞かず
手を振る代わりに尾を振った
安定剤
2015年03月05日(木) 18時53分26秒 公開
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No.2  安定剤  評価:--点  ■2015-03-06 20:40  ID:nJykgayE7oc
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奥山様、コメントと高評価を付けてくださり、有難うございます。
過去作と言えど、自分の書いたものですし、世界観や読者にイメージさせた、と理想を達成できたようで、とても嬉しく思います。
改めて、有難うございました。
No.1  奥山  評価:40点  ■2015-03-06 11:45  ID:WewmjDiqSbU
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言っていた
知っていた
見ていた

で歯切れよく移り変わる視点に緊張感が感じられ、
全体にモノクロのような、重さを感じます。
命、存在がひとつテーマにあるかなと拝見しましたが、
そのテーマが世界観にぴったりで、何度も読みたいなと思いました。
総レス数 2  合計 40

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