軌跡

真っ赤な色した 不幸な嘘が

ぱっくり裂けた 手首の内から

静かにじわりと 空気に滲んで

幾つも流れて 堕ちてった


それはまるで

昨日降った雨の軌跡みたく

蒼白な腕に筋を描いて

綺麗とは程遠い

下品な茶色に変わっていった


小さな小さな僕の一片達

ごめんね ごめんね

愛せなくて

僕の中を廻っていた君達

さようならも言えずに

蔑み睨む それしかできずに


何回となく刃を走らせ

赤い色を見つめて

気が済むのと同時に

我に返って 絆創膏を探した


それは決して

罪悪感やカモフラージュなどではなく

ただ変な同情をされないようにするための

防御のような

エチケットのような

そんなありふれた社会的意識


人生一度きり、なんて

よく聞くけれど

こんな悲しい人生なら

一度だって 欲しくなんかない


自分を愛せないのに

誰かを愛するなんて

そんなの無茶 失礼



《ハロー 僕

 今日はとても素敵な日

 君が初めて呼吸をした日さ

 ハッピーバースデイ 僕

 アイラビュー 僕》


  な
   ん
    て


言えない

忘れちゃった


可哀想な 僕



めくれかけの 絆創膏の下

赤茶けた線が 幾筋 幾筋

自己満足の 醜い渇望の跡



《アイラビュー 僕

 泣かないで 僕》



翳りを忘れた 師走の夕暮れ


また今日も僕は





   愛の跡を刻む

時雨ノ宮 蜉蝣丸
2014年12月03日(水) 13時51分25秒 公開
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■作者からのメッセージ
フィクションとノンフィクションのハーフ&ハーフ

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No.3  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-12-15 00:13  ID:9eGyUOsleb2
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遅ればせながら返信を。

陽炎 様

コメント感謝致します。
他者への愛情表現が多彩なように、自分への愛情表現もいろいろあると思うのです。それが第三者から見て『良い』形か『悪い』形かというだけで。
ただ、これの場合はどちらかといえば愛情でなく、ひっくり返った嫌悪、憎悪で、やり場の無い思いを刃に乗せているような感じです。

決して望んだ道ではなく、情熱も憧れも無いそれに、執着など湧くはずはない。
しかし湧かないことを他者は不自然という。できないことを何故と問う。
最初は気にしないふりをしていても、どんどん洗脳されていって、何故自分は、何故自分が、と劣等感や『良心』の呵責に悩まされて、結局自己嫌悪して、「死ねばいいのに」なんて心にもないことを口にしてしまう。
自然的なことが、不自然的に思えてくる。

切り刻んだって、こんな自分のこと好きになんてなれないってわかってるのに。
刻んでいるのは記憶というより、想いのようなものでしょう。
ありがとうございました。



笹竜胆 様

コメント感謝致します。
これを均衡点と呼ぶには、あまりに脆く不安定ではないでしょうか。
もう水底にはついているんです。
ただ、どうにも上がる気がしない。抜け出したいけれど、見上げる仄暗い水面の先に、これ以上の『良い結果』があるとは思えない。
浮き袋も、楽になれるのは一瞬だけで嫌になる気がして。

明日を変える勇気、もしくは自分を引き上げる狂気の無い自分も、いつか愛せるようになれるかな、なんて。
ありがとうございました。
No.2  陽炎  評価:40点  ■2014-12-09 21:47  ID:OJmj6OeLU/s
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ラストがとても意味深なように感じました

自分自身を切り刻むことでしか
生きることを実感できない
誰かに背中をポンと押されたら
そのまままっさかさまに堕ちてしまいそうなほど危うい自己を
ぎりぎりのところでつなぎとめているかのような

人生は一度きりしかない、とか
何度でもやりなおしはきく、とか
あなたはひとりなんかじゃない、とかいう言葉って
なんというか、生きづらさを余計に加速させてしまう言葉でもありますよね
ひとりじゃないって云われたって
じゃあ、あなたが私のそばにいてくれるんですか、って云いたくなるような
より自分の輪郭をはっきりと思い知らされ、突き落とされる

自分を愛せないのは
誰も愛し方を教えてくれなかったから
もしくは、歪んだ愛情しか与えてもらえなかったから
だからいつも自分を責める
自分を責めることで納得しようとする

>愛の跡を刻む のは

「僕」の中の封印された記憶の傷を刻み込んでいるのではないか

そんなふうに思わずにはいられませんでした
No.1  笹竜胆  評価:50点  ■2014-12-05 23:15  ID:bwdlAf7KWDM
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これはこれで一つの均衡点なのは確か。
不安定だけど、ね。
そのうちどこが自分にとっての底か、感覚的に掴めるだろうから、そしたらとっとと上がること。
浮き袋はね、大体その辺に置き忘れてる。
私は捨てたことすら忘れたものから発見した。
ま、塞翁が馬よ。
総レス数 3  合計 90

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