療養



処置室の方で唸り声
叫んでいる老人
ダレカを傲慢に呼んでいる
ナニカに怖れ戦いている
彼の過去に何があったのか
あるいは今、何を見ているのか

 父を見送ったのは一年前
 両親に最期の時間を
 幸せに過ごしてもらうよう奔走したのは
 私のためであった
 父がいなくなるということ
 足元の地面が崩壊するような
 恐怖を振りはらう時間稼ぎとして

私は病院のベッドで
仕事の約束、母、妻のことを考えながら
点滴のしずくが落ちるのを見ている

 前回の肺炎が落ち着いたあと
 気になっていた母方の伯父の見舞いに行った
 伯母は伯父の目蓋をこじ開けて
 母が見舞いに来た事を知らせる
 伯父は目を少しだけ動かしかすかに唸った
 いとこの姉さんは壁を向いている
 伯母は豪快だった夫の思い出を
 遠い目をして話した
 「ちょと前までは語いよらしたとばってん」

 十日前に父の一年祭を済ませたばかり
 五年前に奥さんを亡くされた
 神社の宮司さんは母にだけ優しい
 「居らせんかと家内の部屋を見よりました」
 父方の叔父は帰り際
 遺影に向かってにこやかに言う
 「にいちゃん、また会いに来っけん」

私はまた肺炎になってしまった
あと二日、病院に点滴を受けにいく
今、姉からメールが届いた
「そんなに頻繁に肺炎になって大丈夫なん?」
心配性の姉に申し訳なく、私は
「頑張って元気になります〜(^^;;」
と返した


游月 昭
2014年12月01日(月) 22時24分28秒 公開
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No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-12-10 13:52  ID:UArH7IFKfkk
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アカショウビンさんこんにちは。
もう一度読み直してみました。
何かが足りないというより、逸話が多い気がします。
つなぎの文 (左寄せ)に
「何を見ているのか」「点滴」とラストで表せているんじゃないかなという気がします。
ただ、軽い。軽くしないといけなかったのかもしれません。
詩としては薄め、ですね。
コメントありがとうございました。
No.5  游月 昭  評価:0点  ■2014-12-10 13:42  ID:UArH7IFKfkk
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えんがわさん、こんにちは。

病院って意外に軽いです。
冒頭、ボケてしまった老人でしょうか。他人事として聞こえてきます。軽いです。「うるさい」とさえ感じてきます。しかしよくよく考えてみると、という感じです。
ラストの軽さは戻って来る為のものです。顔文字は無くてもいいんですが、単に「フツー」なので。過去は過去として、現在病院で起きていることは「他人事」私のことも、他人にとっては他人事だなあと。
コメントありがとうございました。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-12-10 13:33  ID:UArH7IFKfkk
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笹竜胆さんこんにちは。
パッチワークで詩になるか!を試してみました。何か足らん。
病院のベッドの上では何もすることないし、要らんこと考えます。
コメントありがとうございました。
No.3  アカショウビン  評価:30点  ■2014-12-06 16:06  ID:3.rK8dssdKA
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 作者様の意図したものではないと思いますが、ラストの台詞がこちらにも元気をくれるみたいで良かったです。
 しかし、素人のくせに生意気ですが、純文のような読後感でした。
 うまく説明できませんが、奥行きや余韻などをかんじるような何かの文章が欲しいと思いました。
No.2  えんがわ  評価:30点  ■2014-12-04 00:41  ID:DR2hIgqKGrg
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こんばんわ。お、こんばんわ。

重いです。うう。
看取られる側か、看取る側か、それぞれに
実体験をベースにしたような、心の中を整理しようとしているような、そういう重さがありました。

介護とかお葬式とか、物凄くパワーと根気を使うと思うのですが、それはこの世を去る故人と同時に
これからを生きる遺族の為にも必要なものだなと、自分は祖父の最後を通じて感じていて。

だから、何か、こういう気持ちを共感するのは自分には分不相応なんですが、実感を伴って伝わってきました。

>ダレカを傲慢に呼んでいる
>ナニカに怖れ戦いている

ただ、このダレカ、ナニカは異様というよりも軽さも同時に伝わって。
どうなのかな。ここらへんは意図したのでしょうけど。意図した以上にさらりとした感じを自分は、受けたのかなとも思います。
最後の絵文字のあの感じの新鮮さは、ここでの崩しがちょっと被ってて、インパクトを損ねているような。
でも、ほんと。これは実話のような感じもして、そういう歪みこそが現実なのだとも言えそうで、おこがましくすいません。

この病院臭さというか死の匂いみたいなのを味わっていき、それで生きることを見つめ直す、そういう詩なのかなと思いました。
色々と考えてしまう文の塊は咀嚼に辛い部分もあるのですが、どこか栄養になっていそうで、ありがたく。
ありがとうございました。
No.1  笹竜胆  評価:30点  ■2014-12-04 00:39  ID:bwdlAf7KWDM
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痛みを散らしている感じがリアルでよく描けていると思うんだけど、詩としては核となる言葉が欲しいかな。
総レス数 6  合計 90

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