伊勢物語第六段異譚『むかし鬼ありけり』 |
男、鬼とぞ呼ばれける 人を食らはざりけり むかし女をぬすみ出でける高き人 鬼一口にて女を食いけり と言ひしことなむ偽りなりける 率ていきけるほど女を憂きものと飽きけるに あばらなる藏にうちすててけり さて、足ずりをして泣けるは女なり かの鬼、かなしと思ひてあらはれれば 女いとおどろおどろしきさまにて逃げ出でて 道をすぎてはづれて川におちてけり 鬼いみじく泣きつつ詠める 女がために夜さりの月の叢雲よ かねてわが身をかくさざらまし 鬼、泪かきたれてほえつつ山にかくれにけり 【註釈】 《伊勢物語六段目の別解》 高き=身分の高い 率て(ゐて)=引き連れて 憂き=わずらわしい 飽き=いやになり、飽き あばらなる=荒れている さて=そうして 足ずり=地団駄ふむ かなし=不憫だ おどろおどろしき=恐ろしい いみじく=ひどく (和歌中の)女=(め)女 夜さり(よさり)=今夜 叢雲(むらくも)=群がる雲 かねて=前もって 掻き垂れ=雨などが激しく降り |
游月 昭
2014年10月31日(金) 06時29分58秒 公開 ■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 游月 昭 評価:0点 ■2014-11-04 21:29 ID:qx2ygamosbQ | |||||
笹竜胆さんこんばんは。 当時の人は「露を知らないって事はなからむ!男は垣間見て女をぞ確認する訳だから、女が庭にチラリ目を向ける事も何度もあろう、そりゃあもうラストの、男が大泣きする時に、〈一緒に露と消えれば〉と言うための前置きにあらむ。よにをかしき物語なり」とヨミを入れていたに違いありません(多分)。伊勢物語はかなり隙間があって、逆にろんなことが想像できて面白いですね。読んでいただいて感謝します。 |
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No.1 笹竜胆 評価:30点 ■2014-11-04 19:54 ID:5rd2i17tV62 | |||||
資料を当たる時間がないので、記憶に頼って書きます。 異譚とのことで、どこまで変えるかが問題ですね。 伊勢物語の姫は草に置く露を見てあれは何かと問う程の深窓の令嬢。つまり、端近ははしたないこととして、建物の外に自分で出たことはほぼないと思います。追い詰められたところで、外に逃げるという発想が出るかどうか。まだ髪を切り落とす方が思い浮かぶのではないでしょうか。 とはいえ、一つの歌物語としてはよくまとまっていると感じました。 |
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総レス数 2 合計 30点 |
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