白朝

窓際が 白む頃

僕を起こす 笛吹やかん

陶器のカップ に 湯を注げば

青い柄が じわり

紅に浮く


朝霧の色 秒針


飴色 に 艶めく

ロッキングチェア

角砂糖を 崩しながら

静か に 埋もれる

孤独 な静寂


それは決して不幸ではない


足下に山積みの 書物達

無造作に選び 栞紐を探す

僕の愛すべき 恋人達

絶対的に 対等にはなれない

世間に開花した

才能達


かつての文豪が産み出した

紙のドレスに活字の刺繍が

ぱらり ひらり

捲れ 捲られ


極楽の蜘蛛はどんなでしょうか

芥川先生

列車は南十字サウザンクロスに着きましたか

宮沢先生

夢はもう覚めてしまいましたか

夏目先生



僕は

未だ覚めない

現実という悪夢の中



《これを悪夢と呼ばずして
 何と呼べばよいのでしょうか》


凡才の魚は独り

活字の海を泳ぐ



時計 秒針

ダージリンの香り


かの夢


椅子の軋む音

光る硝子の影

朝霧に飾られた 白い孤独

静かなる時の幸福の中

今日も



悪夢という名の微睡みは

僕を縛りつけ離さない
                        

                   
時雨ノ宮 蜉蝣丸
2014年08月23日(土) 20時58分25秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
『蜘蛛の糸』 ………芥川龍之介
『銀河鉄道の夜』……宮沢賢治
『夢十夜』  …………夏目漱石

俺の尊敬する先生方のほんの一部です。

この作品の感想をお寄せください。
No.7  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-08-30 12:41  ID:pu8OXh97yXc
PASS 編集 削除
陽炎 様

こんにちは。超お久しぶりですね!
お元気でしたでしょうか。

そうですね、朝起きたらもう湯が沸いてる以上、一人ではなさげです。指摘されるまで気づきませんでした。
沸かしてくれた方は二度寝でもしちゃったんでしょうか。
コーヒーより紅茶派なので、ここはモーニングティーで。

三作品とも素敵な話です。特に宮沢先生が。
『銀河鉄道の夜』、前述の二作も幻想的で、是非一度は読んでいただきたいです。

活字の中に浮かぶ言葉達に最大級の愛を込めました。
ありがとうございました。
No.6  陽炎  評価:30点  ■2014-08-30 03:21  ID:u.WSYo.ISRY
PASS 編集 削除
大分お久しぶりです、陽炎です

笛吹やかんの音で目が覚める、ということは
ひとり暮らしではなさそうですね

気怠い朝に沸き立つ湯気から紅茶を想像しましたが
本当に紅茶でしたね^^

芥川や賢治、漱石が違和感なく詩の中に納まっていました

活字の海を泳ぐ、という表現が個人的に好きです
No.5  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:--点  ■2014-08-25 07:07  ID:nJykgayE7oc
PASS 編集 削除
逃げ腰 様

ありがとうございます。
三冊……前の二冊がアレなんですよね、いろいろあるんですが、それするとだいぶマニアックになっちゃうんで……。
夏目先生は『夢』なんで譲れないですが、宮沢先生は……『やまなし』とか『永訣の朝』とかがよかったでしょうか?

違うバリエーション、本がいっぱい出てくる短編的なですか?w
文学青年が活字嫌いな理数系ガールにひたすら本の素晴らしさを説きまくる話とかだったら書いてみようかな……(笑)

作品発表する以上、批判はつきものですし、点数で満点いただいてますから。大丈夫です、わかってますよ!←本当か?(本当です)
ありがとうございました。




菊池清美 様

コメント感謝致します。おはようございます。
言葉って、人間が生み出した最初の『道具』なんじゃないかと思うのです。道具も皆、意味をもってこの世にあります。でも、言葉は少し違って『無くなった』り『壊れた』りしなくて、代わりに『生まれ』『生きて』『死に』ます。
俺はそんな、俺の都合で生まれた子達を、それぞれ適した場所に収めていっているんです。作った色をカンヴァスの下書きに置いてく感じで。
それが結果的に、俺の私情の表現であり詩情になる。けれど実際その詩情を作ってくれてるのは、カンヴァスに乗っけられながら、混ざり分離し隣り合う言葉達の偶然なんじゃないかな、とも思ってるんです。
たまにゴッホの絵みたく乗っけすぎてることもあるんですが……菊池さんの言う武装って、これのことでしょうか……?

長く偉そうですみません。ご意見とても貴重です、参考にさせていただきます。
ありがとうございました。




青ガラス 様

おはようございますです。
とりあえず、好きなもの(風景的かつ実際にも)を詰め込んで書いてみましたw
本物のティーカップって、お茶を淹れた時に底の柄が見えるようになっているんです。コーヒーカップは逆に、意味が無いので底は真っ白が多いです。
最近、栞紐つきの文庫本めっきりなくなりましたね。個人的に、栞紐があるような普通の厚い本は値段が高いので極力買いたくないです。栞いらなくて便利だし、また文庫本に栞紐普及してくれないかな……。

アールグレイがお好きなんですね。昔は好きでしたが、あの花の香りが微妙に嫌で今は完全ダージリンです。でも、ミルクティーとかだとアールグレイやアッサムなんかの方がいいですね。
魅了されていただけて嬉しいです。ありがとうございました。




ヤエ 様

いつも褒めていただいて、ありがとうございます。

>活字の川を泳ぐ凡庸な魚
いえいえ、まともに横断すらできないほどの激流(川)もあれば、温く緩い浅瀬(海)もあります。後者で育った魚に、激流の岩陰はキツすぎます。
まだ俺も、海へは出られていません。河口の隅で往生して、時折文学の大海へ出る夢を見、目覚めて落胆しているばかりです。

どうせなら覚めない夢を見させてくれ、と願いながら。
No.4  逃げ腰  評価:50点  ■2014-08-25 01:26  ID:j.IsO/gOFss
PASS 編集 削除
>>時雨ノ宮 蜉蝣丸さんへ

ええやないか…
ええやないか…

背景描写と三冊がもっと融合してたらなぁ…
格別な詩になっていただろうなと…

この詩はもっともっと推敲して違うバリエーションで見せてほしいと思いました。
批判ばかりで申し訳ありません。
持ち味出てると思いました!

ではでは

No.3  菊池清美  評価:50点  ■2014-08-24 08:43  ID:Y5z8Yaj/4DM
PASS 編集 削除
時雨ノ宮 蜉蝣丸さんお早う御座います。

言葉を選んで素晴らしい出来栄え格調さえ感じます。

私個人の遣り方で恐縮ですが、言葉には意味が有っても感情は無いですよね。
書き手の私情を挟む事で詩情が生まれるんだと思います、言葉で武装すると信憑性が薄れるかも知れない。

そう思っています、有難う御座いました。
  
No.2  青ガラス  評価:50点  ■2014-08-24 06:18  ID:6Sbbo4.76/Y
PASS 編集 削除
時雨ノ宮さま、おはようございます!

朝靄に飾られた白い孤独

美しい額縁に飾られた白い孤独の自画像、横顔の影の彩りが見事
という感じですね。

〉陶器のカップ に 湯を注げば
青い柄が じわり
紅に浮く

青い色の出し方が素敵ですし、紅が目に美味しいです。
ロッキングチェアの揺れが静寂を演出して光景が広がって来ます。
栞紐で本の厚みを感じますし、紙のドレスに活字の刺繍なんて!
詩のデザイナーですね。
朝霧の色 秒針 と 時計 秒針が役割を持っているし
現実逃避の達成間近!でしょうか(*^^*)
わたしはアールグレイが好きですが、ここはやっぱりダージリンですね。
白い朝に似合います。

ああ、魅了されてしまった。。。
No.1  ヤエ  評価:50点  ■2014-08-24 02:05  ID:L6TukelU0BA
PASS 編集 削除
言葉の選択が、綺麗だと思いました。
自分はまだ、活字の川を泳ぐ凡庸な魚なのだと感じました。
あなたのように海に出たいです。
そしていつか、夢から覚めたいと願ってしまいました。
静かな朝にダージリンの香りに心を落ち着かせ、まどろみたくなる作品ですね。素敵です。
総レス数 7  合計 230

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除