星那

ハロー マイドーター


貴方を見つけた時わたしは

ただ目の前の現実に戦慄して

教徒でも何でもないのに思わず

嗚呼神様、

なんて情けなく呟いただけでした


七月初めの午前二時

駅前のコインロッカーで

何気なく開けた扉の隙間

貴方はぐたりと動きませんでした


何故、と 問う間もなく


真夏の深夜に貴方を抱え

夜道をひた走ったことも

勤め先の孤児院の戸を

死に物狂いで叩いたことも

出てきた院長先生に

汗だくで助けを求めたことも

ひとつとして 忘れてはいません


病院の待合室で院長先生とふたり

うつむいていました

嗚呼神様、

まだあの子を連れて逝かないで




今まで何人もの

親の無い子を見てきたというのに

何故貴方だけがこんなにも

心配なのでしょうか


きっと初めて見た捨て子だったから

だから貴方だけが特別に

きっと


病室の小さなベッドに眠る貴方を

この目で見た時

それは一瞬にして

砕け散ってゆきました

ただ温かな安堵の涙が止まらずに

気づけばその場で嗚咽していました


嗚呼 神様


院長先生が肩に手を添えて

貴女は無力な人ではないわ

ほら だって

この子はちゃんと生きてるわ

貴女のおかげで



神様 わたしは

きっとありふれた俗人のひとつ


これが愛というものですか

わたしは美しくなどないのです


それでも



貴方を拾ったわたしの心に

ぽつり 星色の灯りが

光ったようでした



ハロー マイドーター

貴方がこう呼ぶことを

許してくれるかは

わからないけれど


でも確かに

あの夜 わたしは


Hello今日は mydaughterわたしの可愛い娘


《星ニ願イヲ》




貴方の明日のことを

祈り出していました

                             
時雨ノ宮 蜉蝣丸
2014年07月12日(土) 23時37分17秒 公開
■この作品の著作権は時雨ノ宮 蜉蝣丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
「羽乃」の続編です。

シリーズ化して小説に起こすか真剣に検討中。
でも正直、N○Kぽいこういうテーマはリアルに苦手……じゃあやめろや、ってことになりますよね、ええ。

誰かアドバイスください(切実に)。

この作品の感想をお寄せください。
No.2  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:0点  ■2014-07-17 16:52  ID:kHDajk/W3Dw
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游月 昭 様

コメント感謝致します。
一番乗りなのはきっと不思議なことじゃないと思います!
表情の実況中継とは忘れてましたね……情けない。書くならきっちり書くべき、あとから見直すとひたすらダサいミスですね。
次から忘れないようにしなきゃ! ご指摘ありがとうございます。

小説化いけるかな……最近はサボり気味なので、きっと鈍ってるはずです。
感謝です、頑張ります!
No.1  游月 昭  評価:20点  ■2014-07-15 13:32  ID:gYbTEfdSPrU
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こんにちは。

何故か一番乗り!

気が動転してあとから、私ってお馬鹿さん、ってことはあるのですが、
嗚呼、神様、と「情けなく」よりもっと違和感を感じるのが、乳児を発見して、何故か孤児院に夜道を走って連れて行くという乳児の命を縮めかねないお馬鹿さんぶりを、そう言及していないところです。
気が動転して、頼りになる院長の顔が浮かぶというのを理解はできますが。

しかし、その動転ぶりが、愛とその後の喜びに変わるという点でこの詩のドラマチック性を上手く引き出していると思います。
あとは乳児の表情をもっと追った方がいいかな。走りながら乳児の表情などの実況中継をはさむと緊迫感が増したり。

>貴方はぐたりと動きませんでした
>この子はちゃんと生きてるわ
→乳児のことはたったこれだけであることを自覚できていないかな〜

小説頑張ってください^^
総レス数 2  合計 20

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