パラシュート |
眼球が一つ道に転がっていた 眼球を拾い上げ、手の平に乗せて顔の前まで持ち上げた 眼球は小さな肉片が付着していて、冷たく、ぬらぬらしていた そこへ鳶が降りてきて、眼球を奪い、川の向こう、家々の屋根の向こうへ飛び去った 眼球を乗せていた手の平を見ると、親指と人指し指がなかった けれど、痛みはなかったし、血も出ていなかったし、そもそも切断の形跡がなかった まるで、初めから手の指は三本といった感じだった 僕は川べりの長く伸びる白い道を再び歩き始めた 少し歩くと、突然、左手の中指、薬指、小指をつかまれた 驚いて振り返ると、小学生くらいの女の子が右手で僕の指をつかんで笑っていた 女の子はすぐに手を放し、何かを面白がるような笑い声を上げながら斜面を駆け上がり、 車の走る気配のない車道の方に姿を消した ふと左手を見ると、つかまれたはずの指がなかった 両手を前に突きだすと、残った指が何となく寂しげに見えた これは夢だ、と知っていた だからという訳ではないが、特に気にする事もなく、僕は再び道を歩き始めた 次の瞬間、僕は鳶につかまれた眼球になっている事に気付いた つかまれている感触はなかったが、僕は鳶につかまれた眼球だという事を知っていた 宙を飛び回りながら、街を囲む山々、街、街を流れる川、白い道を見ていた 人の気配はどこにもなかった 飛び回りながら、周りに体の断片が浮かんでいるのを見た 指や、腕、胸、脚、腰、性器、頭など 頭がふだん鏡で見る僕の頭だったから、それらは全部、僕のものだろう、と思った しばらくして、鳶が僕を放し急降下した 見ると、鳶はいつの間にか女の子に変わっていて、くの字になって背中から白い道に落下していった この光景はこれまで何度も見たのを思い出した 突然、僕は強い力で上空に引き寄せられて、ある場所で宙吊りになった 少しずつ落下しているような気もした 黒い滴が激しい雨のように降り始めて やがて何も見えなくなった |
A
2014年06月07日(土) 02時55分50秒 公開 ■この作品の著作権はAさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.10 A 評価:--点 ■2014-06-24 22:45 ID:pA0QzJ9KbiA | |||||
游月 昭さん ご感想ありがとうございます。ご感想を頂いて、読み返してみると自分でも意味不明です(笑) >視覚の描写、その転換の際の世界のメリハリといったもので、その辺りがカッ飛んでいると充分面白く読みごたえのある作品になったんじゃないか なるほど。言われてみればそんな気がします。せっかく現実にありもしない状況を作ったのだから、感覚的にぶっ飛んだ文章の充実を狙って、もっと遊んでみたらよかったかな、と思いました。 |
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No.9 游月 昭 評価:20点 ■2014-06-24 16:32 ID:FBi49ZD.T0o | |||||
こんにちは。 数週間どうしようかと思いましたが感想など書かせて頂きます。 冒頭一行〜二行で、ナンセンス詩だと宣言しているので頭の対策が立ち易いんですが、さて、 眼球と指以外のパーツは無視していいのだろうと思います。 心理学者でもないので真実、何を意味するかなど分かる筈もないのですが。 見ること、見られること、触ること、触られることに何かの支障があるのでしょう。監視、支配されている。あるいは、語り手(あるいは作者)は細かい作業をする職業に就いていて、それらを失う恐怖を感じた事があるなど、考えるとキリがありません。 詩として、無意味に重複使用された言葉、文が気になるところですが、この際、文章の完成度より、もっと熱を入れて欲しいと思ったのが、視覚の描写、その転換の際の世界のメリハリといったもので、その辺りがカッ飛んでいると充分面白く読みごたえのある作品になったんじゃないかな、と思いました。 じゃあ、お手本見せろ!なんて言わないで下さいね。無理無理。 インスピレーションを頂きました。 ありがとうございます。 |
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No.8 A 評価:--点 ■2014-06-14 22:02 ID:pA0QzJ9KbiA | |||||
shikiさん ご感想ありがとうございます。書いてしまってから、自分が書き手から読み手に変わる、あるいは推敲の過程でどちら視点にもなる、という事だけを考えると、自分の読みたいものを書くのがいいという事になりそうですが、そこで、自分以外の読み手の視点を想定する事も可能ですよね。この、「自分以外の読み手」を意識しないようにして書きました。推敲しないというのは、本当に一文字も修正しないとか、そういう事ではなくて、「読み手としての自分」をも出来るだけ意識しないようにするという事だったかと思います。どちらも意識すると、「読み手」に合わせて文が修正されるような気がして、それを避けたという感じです。しかし、この書き方のせいか、それとも書き方とは関係なくそうなのか分かりませんが、自分の書きたい事を書いているという手ごたえのようなものが、自分でもなかなかつかめませんでした(笑) |
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No.7 shiki 評価:50点 ■2014-06-13 10:09 ID:zQBvN0wJih2 | |||||
読ませていただきました。 前回前々回の「部屋」「壁」もそうだったのですが、今回の「パラシュート」というタイトルも秀逸ですね。 どの作品も内容とタイトルが呼応して作品に深みを与えているように思います。 わたしも皆さんがコメントなさっているように小説的だとは思うのですが、逆に詩だからこそいいのでは、とも感じます。 未知・空白といった要素が多い作品は読み手が様々に想像できるので個人的には好きです。 どう、読み手の想像力をかきたてていけるかが問題なのですが、『変に意識し過ぎて「書いている時の感じ」が殺されてしまうのを出来るだけ避けて表現するという事をしたかった』とおっしゃっておられるように、そこのさじ加減が難しいですよね。 何にしろ、このシュール感や文章力はすごいなと思いました。 |
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No.6 A 評価:--点 ■2014-06-11 18:30 ID:pA0QzJ9KbiA | |||||
楠山歳幸さん ご感想ありがとうございます。他の方からもご意見を頂いて、楠山さんからもご意見を頂いて、段々分かってきたのですが、やはり、作品の完成度が低い事が最大の問題なのではないか、という気がしています。推敲が足りなかったのかな、と反省しています。僕の意図としては、変に意識し過ぎて「書いている時の感じ」が殺されてしまうのを出来るだけ避けて表現するという事をしたかったのですが、考えてみれば、それは推敲をしなくていい理由にはなりませんよね。「なぜ、体がばらばらになるのか」「なぜ、鳶が女の子になったりするのか」「なぜ、このような唐突な終わり方をするのか」など、問われてみれば自分でも説明出来ません。説明出来ない事が含まれているのが悪い事だとは思いませんが、それにしても、もっと完成度を高める努力をするべきだったかと思います。そうすると、その過程で、詩よりも小説の方が表現方法としてよいという判断も生じたかもしれません。 |
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No.5 楠山歳幸 評価:30点 ■2014-06-11 13:10 ID:3.rK8dssdKA | |||||
読ませていただきました。 エピソードは怖いですが、自分が鳥のように空と一体になったような感覚も感じました。残忍な描写でそんな感覚になったところと中盤にこれは夢と言うところがなんとなく新鮮です。 作者様の意図を汲みとっていないかも知れませんが、 「〜た」 と説明的な文章の連続が詩というよりは小説のような印象です。 淡々と語られる文章が独特の世界を浮き出させているのかも知れませんが、詩ならば、体言止め(他の方法は僕は分かりませんが)などを利用して余韻みたいなものが欲しいと思います。 僕も、自分の好みですが、小説にして世界観を膨らませて欲しいと思いました。 ばらばらになった自分の身体はどうなったのでしょう。 見えなくなった→まだ先があるように思えます。 雨に溶け込んだとすれば一応オチになるように思います。題とは違ってしまいますが、自分の趣味で。 ものすごく失礼で、あくまで僕の場合ですが「この前がある」は冒頭の情報不足「この先がある」は尻切れで終わってしまっているかもしれません。 失礼しました。 |
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No.4 A 評価:--点 ■2014-06-10 09:15 ID:pA0QzJ9KbiA | |||||
史裕さん ご感想ありがとうございます。異常な事が起こっているのに、それに対する説明が一切ないので、中途半端な印象をお持ちになったのではないでしょうか。以前、短編小説を書いて人に読んで貰った事があるのですが、その時も「この前とこの後がある気がする」という感想を頂きまして、それは史裕さんの仰る事に通じるように思います。つまり、詩が小説か、という事よりも、僕の書き方に問題があるのでしょう。ちょっと考えてみます。 |
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No.3 A 評価:--点 ■2014-06-10 09:16 ID:pA0QzJ9KbiA | |||||
青ガラスさん ご感想ありがとうございます。自分の事を振り返ってみると、頭では自分にまとまりがある事が分かるのですが、感じとしては結構身体もばらばらな感じがしてまして、それを素直に書いたら、こんな風になりました。 白い道は本作では何度も繰り返し出てきますが、前作には出てこないはずです。おそらく「街中を流れる川」の事を仰っているのでしょうか。書いてる時、イメージしてる街はそれぞれ違うのですが、かぶっている部分(前作と共通するもの)がある気がします。 |
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No.2 史裕 評価:30点 ■2014-06-08 22:58 ID:t8rOcFtI3/M | |||||
読ませていただきました。 独特の世界観で好き嫌いの別れる作品なのかなと感じました。 一人称で淡々と抑揚なく進んでいく。ここの辺りが雰囲気を作っているのかな しかし終盤で全部見えなくなって ぶっつり終わってしまっているので、どことなく物語のプロローグのような、続いていくような感じでして できれば短編の小説にしてみても面白いのかなぁと まぁ個人的な趣味の話ですのであしからず。 それでは読ませていただきましてありがとうございました。 |
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No.1 青ガラス 評価:40点 ■2014-06-08 21:55 ID:6Sbbo4.76/Y | |||||
詩の印象がシュルレアリスム(超現実主義)という感じですね。 作者の意図するところが不明、という意味合いも含めて(*^^*) 白い道が気になりました。前作にも出てきましたよね。 何かの暗示のような気もしますし、 Aさんの世界観、もっと見てみたいと思わせる作品ですね。 |
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総レス数 10 合計 170点 |
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