花の詩


−時の花−


愛の言葉は種のようで
堅くて食べられない、
と天袋に投げ入れた少年

時を隔てた小さな箱で雨もりに悩むころ
忘れていた遠い時の種が芽をふく

愛を包んだあのひとはもう居ない
引き戸を開けて顔をだす面影

体に優しく根をはっていく言葉たちに
思い出の白い花がひっそりと咲く




−梅の花散る頃−


赤いクツが塀の外で鳴っている
一所懸命に足を上げてまで
何処へいくの

おさげを揺らしながら
ピンク色だけを目指して走る

セーターの中に飛び込むと
ふわふわした手のひらが頭をなでるから
目尻は顔の端っこまで微笑んで

手を繋いだら歌いだす
下手っぴなスキップで跳ね回りながら

梅の花が散る春の日に
光が降りそそぐ音を聞いている




−木蓮−


花が咲いている

高い木のそばに立って
地に落ちた花びらを見る

温かくしとやかな白

手のひらにのせてみれば
春の日が差し込んで
かすみがかった影が浮き彫りになる

あらわれた微笑みに押し潰されそうで
力なく手を離す

落ちてゆく先には
幾重もの花びらが積み重なり
そしてまた積もる

見上げれば
木蓮の花が咲いている




−藤の花−


写真に君たちがおさまっている
棚一杯にぶら下がる藤色が
のれんのように招き入れ
あどけない顔がこちらを向いて
二つ並んで笑っている

私は花房にとまる熊蜂になり
二人を驚かさないようにじっと
移り行く季節をかわしながら
写真たてに幸せをはめ込んで
いつまでも続くように見守っている




−桜舞い−


花が散ってしまったことを
貴女はカレンダーを見て知る

「今年も会えなかった」

ただよう匂いに引き付けられて
蝶になった貴女の姿を
来年は見られますように


緑が顔を出しはじめ
桜が山に隠れてしまうまで
私は
いつも通りの道を
いつもの時に

ただひとつ残る花びらのように

名残惜し、と







游月 昭
2014年04月26日(土) 01時55分59秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初心者の頃から最近までの花の詩を集めて連作としました。

この作品の感想をお寄せください。
No.9  游月 昭  評価:0点  ■2014-05-01 02:45  ID:eN7YfPmp65A
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久藤nobuさん、ご感想ありがとうございます。

楽しんで頂けて嬉しいです。
またよろしくお願いいたします。
No.8  久藤nobu  評価:40点  ■2014-04-30 17:00  ID:iB5x5kIa0Y2
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こんにちは。

感想が下手なので上手く言えませんが、
いろいろなストーリーが楽しめました。
良かったです。
No.7  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-28 23:41  ID:5PhxNt2MGXg
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青ガラスさん、ご感想ありがとうございます。

返信が遅くなりました。

*時の花、二行で言いきる青ガラスさん、凄げ〜。

*梅、ハープいいなあ。これちょっと冒険してます。語り手は、塀で遮られて見えない親子を想像で思い描いています。音のイメージが湧いて来ますか?もっと読者が聴きとれるように頑張ります。

*木蓮、
>そしてまた見上げる心境
嬉しい〜

*藤、これは、友人が描いた絵を観て、あたかも熊蜂の視点で描いたかのような構図になっていたことに感動したことから書きました。友人のおかげです。

*桜、なぞなぞ、答えは謎のままに。

では。
No.6  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-28 23:19  ID:gYbTEfdSPrU
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楠山さん、こんばんは。
ご感想ありがとうございます。
返信が前後して申し訳ありません。

ご指摘の欠点の理由ですが、
記憶に頼っていて、新しい情報が入らないということが原因の一つでしょう。
しかし、もっと記憶に深く潜れば、その辺解消できるのだろうとも思います。あとは、加味する力でしょうね。
数日の間に、他所で詩人との繋がりがふえたこともあり、いい加減な詩は多少遠慮しなければならなくなったことも有って、さらに気合い入れていかないとなあ、と思っています。
なお一層頑張ってまいります。
No.5  菊池清美  評価:0点  ■2014-04-28 20:46  ID:/dxzQ0Wmf36
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ご免一日おきに出掛けるのだが今日だった、今帰りました。

私があなたを嫌って攻撃?だったら何故危険を犯してコメントするのか、確かに目指す詩の形が違います。
これは何度話しても同調する事は無いでしょう、だから奥歯に物の挟まった様なコメントに成ります。
この事が如何に無謀かエゴイズムと罵られて知っております、嫌いなら失脚するのが楽しいんじゃないでしょうか。

危険を犯してまでコメントするほど酔狂じゃ有りません。
確かにコメントし合う事は無理のようです、もうしませんから安心して書いて下さい。
No.4  青ガラス  評価:50点  ■2014-04-28 00:37  ID:6Sbbo4.76/Y
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遊月さん、こんばんは、
感想書いてもいいですか?
お返事はゆっくりで構いません。

時の花

機が熟して白い花を咲かせる
時の流れと共に体に根を張ってゆく言葉、想い
とても素敵なテーマだと思います。
天袋、、少年らしい発想(^.^)

梅の花散る頃

ピンク色のセーターなんでしょうか?
梅の花と重なって柔らかい日差しと
幸せそうな光景
光が降り注ぐ音、ハープの音でしょうか。

木蓮

白木蓮、清楚な花ですよね。
咲いても開き切らずに散ってしまう木蓮を
手のひらから離してしまう。
情景が切ないですね。
散った花びらが積もる描写まで丁寧に書かれていて
そしてまた見上げる心境、
温かく、は厚みのある花びらのことなんですね。


藤の花

藤棚の下で写真に収まる。
出来過ぎだと思うほど美しすぎます!
藤の花には熊蜂、やっぱり出来過ぎです(^ ^)
写真たてに幸せをはめ込む
うまいですね!

桜舞

散ってしまったことを、カレンダーを見て知る
いろいろな背景を想像できる文節ですね。
蝶になった姿、、
あなたの姿ではなく、なぜ蝶なのか
なぞなぞですね!

書いてもいいですかと問いつつ
書いてしまいました!

No.3  游月 昭  評価:0点  ■2014-04-27 11:58  ID:2un0QyHxhs2
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菊池くん、君は中学生か?

君のこれまでのヒトラー的特定アート偏執弾劾発言を含めた、私のスレッド、君のスレッド、さらに関係のない方のスレッド内での(ほのめかし等)、執拗で中途半端な私個人への攻撃発言全てをここに並べてあげようか?

君が私を嫌っているのは、君の私へのコメントは曖昧であるにも関わらず、よく伝わってくるよ。しかし、私の君へのコメントをよく読んでごらん。君が私を攻撃していると私が感じた文に対しての(私の)コメントを除けば、君には、君が詩が上手くなるように願った発言をしている。君は自分が特別上手いと思っているからなのか分からないが、君には受け入れ難いかもしれないがね。
君が前に言ったように、ここに投稿している、『游月を含めて』皆さん、詩の実力は対してかわらないと思う。その事を皆理解していて、だからこそ、自分の為にも他人の為にも詩評を交換している。

間違わないでくれよ。私は君に、私のような形の詩を書くように述べたつもりは一度もない。(あれば謝罪します。)だから、詩の方向(ベクトルとも君は言ったね)が違うからという、君の的を射ていない発言で話をそらしても君の実力は足踏みするだけだよ。別に、私のコメントが必要なく、あるいは、これ以上皆と切磋琢磨するつもりがないなら、そう言ってくれれば詩評には赴かないからその意思表明をしてくれ。
とりあえず今のところお互い詩評をしない方がいいだろうけどね。

もし、私を攻撃したいなら、しっかり『論理的に』私を叩きにおいで。

とにかく、君のこれまでの大人げない振る舞いは、恥さらしでしかないよ。よく考えてごらん。

No.2  菊池清美  評価:30点  ■2014-04-26 19:31  ID:/dxzQ0Wmf36
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うん貴方は十分に上手いですよ。

時の花は実存しない理屈の花、読者はイメージしにくいですよね。
そんな事にも有無を言わせない力を感じます、此れは群を抜いてますね。

どんな人が居ても良いと思います自信を持って進んでください。
欲を言えば評は主体的に成りがちなのは誰にも言えます、傷付ける事ですから…
No.1  楠山歳幸  評価:40点  ■2014-04-26 13:07  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 時の花は僕には抽象的で分からなかったのですが、最後の二行が素敵で雰囲気として良かったです。
 後は、人との関わりが微笑ましくそれが季節感と繋がって良かったっです。
 
 うまく言えないのですが、花が少し薄いかなあ、みたいな、全体的に水彩画のような印象です。とはいえ、ネタ的に限られているためほとんど言いがかりになってしまいますがすみません。
 贅沢なのは承知ですが、時の花の最後の二行のようななにか惹きつけられるような言葉も欲しいかな、と思いました。
総レス数 9  合計 160

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