雫の一夜




雲間にもれだした月明かりに触れると
雫はふるえる手をはなしてしまう

誰も知らない夜空の星を
身にいくつも集めて夢うつつ

包みこんでくる風とたわむれ
奏でられる音が共鳴する



近づいてくる地上の星にふちどられ
月を大きくうつす湖が見える

次第にあたたかくなる風に目をとじて
やがて合わさる幸せを思う

いつかの記憶はよみがえり
委ねた空に涙があふれる



行く手から発するけたたましさに
大きくひらいた瞳は黒い灰色にそまる

叩いた、と同時に激しく押し流され
ひしめき合う大量の泥と雫

明滅する脳裏に個はなく
強烈な叫び声が噴出する

こじ開けられた門に引きよせられて
なすすべなく闇の隧道へと突き落とされる



轟音の中の静寂、闇の中の光
なりゆきに縛られた身が離れていく

思い描いた美しい未来をよそに
時はそしらぬ顔で朝を呼ぶ

雫は暗い湖の底で夢になり
再び空へ舞い上がる日まで

湖面に光を映して
いつまでも月を探している




游月 昭
2014年03月12日(水) 00時44分41秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
☆冒頭とラスト近辺を改稿しました。

思春期の恋を描いています。

青ガラスさん、イメージのきっかけをありがとうございます。

この作品の感想をお寄せください。
No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-03-14 20:53  ID:sqfh9gLDeNI
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青ガラスさん、こんばんは。ご感想ありがとうございます。

私の「恋」に対するイメージっていうものが、「喰らう」ということに近いせいかなとも思います。ギトギト感は特徴ですが、おそらく青ガラスさんが仰ってるのは、私がこの詩の、金管がクレッシェントしてティンパニが叩かれた時からの場面の描写が、説明的ととられるかも、と思って書いた部分じゃないかと思います。作者がそう思うってことは、やはり読者にも伝わるんでしょうね。的確なご指摘ありがとうございます。
No.3  青ガラス  評価:40点  ■2014-03-13 10:08  ID:6Sbbo4.76/Y
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遊月さん、
こちらこそお役に立てて光栄です。

愛の意味も知らなかった思春期
ただあなたをこの手に掴みたくて、見果てぬ夢を見た。
叶わない夢は、夢の中でも叶わないんですよね、
月の光が胸を刺す。切ないです。
ただ耐えるだけの願いは
湖底で美しい夢となって、今も息づき美しい姿で現れる
青春の大切な思い出なんですね(^.^)

思春期の感情の高まりや危うさ激しさを感じますが
情景の描写をもう少しシンプルにした方が、想いが引き立つ
ような気がします。



No.2  游月 昭  評価:0点  ■2014-03-12 22:52  ID:My7Ye.F7xJg
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時雨ノ宮 蜉蝣丸さん、こんばんは!

手も足も出ない中学生を読んで頂いて、ありがとうございました!布団かぶって耐えていた日々、もうそんなこともないでしょうが、今となっては、面白い思い出です。
No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:30点  ■2014-03-12 21:10  ID:0RrfRdhb90c
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こんばんは。読ませていただきました。

激しいような、それでいて壊れそうな、けれどやっぱり未熟で自分で紡いだ言葉の綾に絡まって、もがいて、……そんな夜の窓辺を想像しました。
涼しい夜風すら感情の波に重なって、独り想う自分を押し流してゆく……どこか中二臭さを感じさせる言葉づかいが、思春期独特の思考の仕方を表現しているように思いました。

ありがとうございました。
総レス数 4  合計 70

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