MARAGUEN~A


百年に一人とも思えるライバルに、俺は大学で出会った。
二人は、クラシックギターサークルの二つの頂として存在していた。全く別のアート感覚が、デュオでは何故かピタリと合わさっていた。定期演奏会のクラシック合奏では私がタクトをふる。が、デュオでは奴がギターを叩く。


コッコッコッ、

奴の合図に、寸分違わぬタイミングでスペインの乾いた風が吹き始める。

立ち止まる。一瞬の静寂のあと、生暖かい突風が過(よぎ)る。城を浮かびあがらせる灰色の空を稲妻が裂いた。
向こうからギャロップが近づいて来る。馬にまたがる男の顔に見覚えがある。過ぎてゆく姿に喜びの影はない。
雨が降り始めた。男は鞭をはり早駆けになる。見上げると空はさらに暗雲におおわれている。
雨はしだいに激しさを増し、四方で代わるゞに雷鳴が轟く。

クライマックスに破裂した12弦が長く震えながら遠退いていく。奴が俺を御し、二つの右掌は弦を優しく覆う。
ホールが緊張の無音をほどき、激しい雨音が堰を切った。



「指揮者さん、演奏会の聴き処は?」
というラジオアナウンサーの質問に
「第二部の二重奏ですね」
と俺は応える。
「では、パートナーさんは?」
「やっぱり、二重奏でしょう」
と奴も応え、放送室は笑いに包まれた。



演奏会の前に神社にお参りに行きたいと奴が言い、俺は、可笑しな奴だと思いながらも従った。
神社への道を、二度と戻らない時をゆっくりと刻むかのように、二人は言葉少なに歩いた。



游月 昭
2014年02月20日(木) 00時51分27秒 公開
■この作品の著作権は游月 昭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
菊池さんの『岩手山』を読んで思い出したことを詩にしました。
MARAGUEN~A =マラゲーニャ
「N~」は、正しくは「N」の上に波線です。正しく表記出来ないので、この形になりました。

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No.4  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-24 22:40  ID:..K.tfL042k
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青ガラスさん、こんばんは!

作者の書いたことを、読者が自分の思い出のように感じられるよう、これからも精一杯頑張って集中して行きたいと思います。
ありがとうございました。。
No.3  游月 昭  評価:0点  ■2014-02-24 22:31  ID:eN7YfPmp65A
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菊池さんこんばんは!

一文め、二文めの意図がよくわかりませんが
「少し違うは大違い」だとハッキリ思います。プロの世界では特にそうです。その「違いが分かる」のがプロです。コーヒーの宣伝みたいですが。

>皆さん投稿者で有って読者なんです、其処を間違えない様に。

ってどういう意味でしょう?
また先走ると良くないので、ご解説願います。
No.2  青ガラス  評価:50点  ■2014-02-24 21:08  ID:6Sbbo4.76/Y
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遊月さん、
予言通りまいりました〜。

ライバルというか、親友のようにも思える二人のデュオ
羨ましいステキな思い出ですね。
二度と戻らない時を…その言葉に思いが沢山詰まって
切なくも大切な時の流れを味合わせて頂きました。
最後の連の、時を刻む無音の足音にジンときて、感無量です。

No.1  菊池清美  評価:20点  ■2014-02-24 03:40  ID:/dxzQ0Wmf36
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人は同じ設計図で出来た謂わば量産品、それ程優れた人も居ないし劣った人も居ないと思います。
同じポテンシャルの車で競争するとドライバーの技量で僅かな差が出ます,其れが見掛けの差でしょうね。

皆さん投稿者で有って読者なんです、其処を間違えない様に。
…偉そうな事を言ったら居られませんね、と言いつつ明日現れたらヒンシュクを買いそうですね。
青ガラスさんが戻ったら来るかも知れません、彼女の詩が判るのは私ぐらいのようですから。

完全に読み切れないと批評は無理かも知れないですね、私には出来ませんから好きな詩に賞賛を送るだけです。
この詩は判らないから…預かった点を返します。
総レス数 4  合計 70

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