恋の燃焼 −long-version−
 


 激しい生命力が俺の奥で爆発する

 赤い血はたぎる

 肌の紅潮は細胞の生きる意志

 吐き気をもよおすほどに

 おもい、興奮が連鎖する


恋には幾つかの筋書があって、自分が迷い込んだ寂れた港からハッピーエンドまで漕ぎ着けるか、という想定をいやがおうにも行う。途中で燃料が切れないように、座礁しないようにと、道筋を下見しながら、いずれ伸るか反るかの行動に移す。座礁した場合には、大概助け船は来ない。そのため恋の告白は無謀な行為であるといえる。


 狭い路地を全速力で突っきる

 貴女には俺が見えないだろう
 
 視野は開かれず、後戻りはあり得ない

 擦り傷だらけで往来に噴き出る


女の嗅覚は鋭い、芽生えから暴走までの一部始終に感づいていても、ビックリの表情を浮かべながら頬を赤らめるか、困惑の表情を見せながら、最後まで美しく魅せたあげくに引導を渡す。その前後で関係は激変する。


 不器用に飛び出した下郎の顔を見てくれ

 素っ裸の変質者の一瞬の炎を

 ただ一つの魂を

 はかなげなその腕で受けとめてくれるか

 さもなくば、

 100円ライターで俺に火をつけてくれ

 激しく無様に燃えよう

 跡形がなくなるまで俺を見届けてくれ


恋とはエゴなのである。受け入れられないとしても、いつまでも自分を「見て欲しい」のだ。わずかながらでも自分に対する愛情があったのだとさえ信じて、恋は、死、に至る。


 恋は灰になり、風に散り

 洞穴の隅にわずかに黒くこびりつくだけ

 過ぎ去った影が広場の木陰にまぎれる

 ただ、

 年老いた男の瞼に

 今も美しい花びらが散る
 



 
游月
2013年12月28日(土) 18時00分32秒 公開
■この作品の著作権は游月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
恋はいつまでも消えない


★二連目の比喩の分裂を正しました

(旧)穴の中這い上がる座礁しないよう
→寂れた港から座礁しないよう

この作品の感想をお寄せください。
No.6  游月  評価:0点  ■2013-12-31 22:05  ID:FMdKuJEC1b.
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楠山さん、ご感想ありがとうございます。

20代そこそこまでの「純粋な」恋の意識を描いたので

*微笑ましくて、良かったです。

という言葉は大変嬉しいです。
私スタイルの恋の詩にそのような感想を頂いたのは初めてです。
おそらく、この主人公も普通に見ると、可愛い青二才ですね。
No.5  楠山歳幸  評価:50点  ■2013-12-31 09:37  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。
 微笑ましくて、良かったです。
 詩的なパートと哲学的なパートがうまく重なっていると思いました。
 俯瞰していて、激情が感じられて、とても良い文章でした。

 >肌の紅潮は細胞の生きる意志
 >最後まで美しく魅せたあげくに引導を渡す
 >素っ裸の変質者の一瞬の炎を

 特にここが良かったです。二つ目は女性の一面を、三つ目は男性の切なさを良く表現しているなあ、と感じました。
No.4  游月  評価:0点  ■2013-12-30 02:42  ID:m.6gUmQkDJ2
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菊池清美さん、ご感想ありがとうございます。

余談ですが、美しいペンネームですね。
九州には菊池渓谷という、こちらでは有名な観光名所がありまして、川の水が澄んでいて、深くなるところは、美しい青色が鮮やかです。もしかして、ご存じ?

世の暴力夫は、逃げた妻に対して、「ごめん、俺が悪かった、もうしないから、」といいながら、また暴力を振るう。この詩とは直接関係はありませんが、自分のものにするために最大限のエネルギーを使う、という点で、「恋」という枠の中で共通するものだと思います。つまり、暴力夫の心にも、この詩の主人公にも愛は無関係ということになります。当然、私が作り上げた主人公を避難している訳ではありません。純粋な「恋」を表現してみました。

後付けですが、今感じたのは、男の「愛」は、「恋」という基盤の上に存在しているのではないか、などと。

長々と失礼致しました。
No.3  游月  評価:0点  ■2013-12-30 02:26  ID:..K.tfL042k
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青ガラスさん、ご感想ありがとうございます。

こんなに誉められるとは思ってもみませんでした。
創作物の中に説明的なものを入れると、あまり良くない傾向にありますが、私は時々、ギャグ詩(喜劇的詩)を書く時にこんな方法を使います。

「恋」の観念に関しては、人によりそれぞれだと思いますが、内面的には経験上、こんな感じかなと、私は結論づけています。
また、「愛」については、全く違うものとして位置付けています。しかし、「愛」については、おそらく、死ぬ直前までちゃんとした答えは出ないようには思えますが。

名前の件については、当人、気づいていませんので、お気になさらず。
No.2  菊池清美  評価:50点  ■2013-12-29 11:25  ID:te6yfYFg2XA
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途中に入る注釈が新しいですね詩を深いものにしていると思います。
男は常に選ばれる様に努力する、告白は止むに止まれぬ男の捨て身のアピールだと思います。
理論的な解説は面白いです、一味も二味も違いますね流石です。
  
No.1  青ガラス  評価:50点  ■2013-12-29 00:10  ID:6Sbbo4.76/Y
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素敵です。
一文一文が、

洗練され磨かれていて
何度でも読みたくなります。

赤い血が流れるような熱やスピード感がありますね。
反面、恋のデータベースでの把握と分析
この辺が男性ならではかと、
それが絶妙で、男っぽさや切なさ
ハッとする所もあって、流石だなって思いました。
「おもい」にはいくつかの意味が込められているのでしょうか。

読ませていただいてありがとうございます。

先日のコメントで、お名前の漢字間違えて書いてしまいました。
ごめんなさい。。。
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