曇り空のずっとずっと上のほうは、いつだって晴れ晴れとしている

考えたって考えなくたって
この背中に背負い込んだ荷物が軽くなってくれるわけでもないのにさ
まぶたの裏にべったりとこびりついて離れない映像を
耳のずぅっと奥の方で いつまでも止むことのない声音を
よせばいいのに今日もまた 再生ボタンを押してしまうのです
激しく打ちのめされることは初めから予想できてるはずなのに
それでも何度も何度もリピートしてしまう 悲しい習性


生きる理由がどうしても必要だったの
ほんの束の間でも 記憶の呪縛から解放されるものならなんだって
一日中音楽を聴いてるときもあったわ
ネットで無料配信されている昔のドラマやアニメを
まるまる一本 徹夜で観続けたりもした
それはそれで 一時しのぎにはなったけれど
あてはめてみれば 決まって寸足らずで
決まって風邪ばかり引いてしまうのです
見上げる空はいつだって 泣きたいのを必死で我慢しているみたいで
星ひとつ見つけることさえできないのでした


出会った瞬間から用意されていたさよなら
みんな去っていきました 私の前からいなくなってしまいました
まるで夏から秋へと季節が過ぎ去っていくように
同じ時を過ごしていながら
互いの時計の針は少しずつ少しずつ 狂いはじめていたようです
離れていくにはそれなりの理由がきっとあるのだろうけど
何故か決まって いつの間にか私ひとりが悪いみたいな
そういう構図が出来上がってしまっているから不思議です
そりゃまったく非がないとは云わないけれども
私ばかりが責められなければならない理由とは一体なんなのでしょうか
私にはやはり 人間というものがよく解りません
なんだかとても疲れてしまいました
いい加減こんな役 いち抜けたしたいところだけれど
一度決まってしまった役回りは 
どうやらそう簡単に降りることさえ出来ないらしいのです


踏みつけられたまま 黙っているほどお人好しだと思わないでください
大人気ドラマの決め台詞ではないけれど
しばらく立ち直れなくなるくらい
傷つけ返してやりたいと本気で思ってしまう私です


やさしくしてほしいからやさしくするのです
はげましてほしいからため息をつくのです
大丈夫?って云ってほしいから
大丈夫じゃないフリをしてしまうのです
傷つきたくないから 自分から手を放してしまうのです
死ぬ気もないくせに いつだって死にたがってばかりです
負けず嫌いの負けっぱなしで
だから他人が幸福そうにしているのが我慢ならないのです
妬ましくて恨めしくて仕方がないのです
最低です 最低です私


いつからこんなふうになってしまったんだっけ
いつからこんなにも汚れてしまったんだっけ


もっとちゃんとした大人になってるはずだったのに
煙草は喫まず アルコールは少しだけ
仕事をバリバリこなしてお金を貯めて
いつか自分の家を建てて幸福に暮らすんだって
小学生のときに書いた作文
煙草は喫みませんが アルコールはごくたまに
家を建てるどころか 日々の生活に追われるばかり
いつ治るともわからない病気を抱えて
薬を飲まなければ眠ることさえできない有様です
蹴られた背中が痛むのです 捻られた腕の関節が痛むのです
浴びせられた罵声が血肉となって体中を駆け巡り
お前など最初からいらなかった 邪魔な存在 必要ない人間だと
私というすべてを否定しにかかるのです

深い霧の中を彷徨い歩いているみたいに
いまだ幸福の尻尾さえも捕まえられもせず
37歳の秋が 静かにそっと過ぎようとしています


生きていてもいいですか なんて
一体私は 誰に尋ねているのでしょうね
何がどれだけあったら 幸福と云えるのでしょう
優しくされてもされなくても
きっと私は いつまでたっても淋しいままかもしれません
伸ばした手を ふりほどかれたときの
あの喩えようのない敗北感を
どの道忘れることなどきっと 出来そうにもありませんから




相変わらず空は厚い雲にびっしょりと覆われています
私は 前傾姿勢で立ち上がり
分厚い雲のずっとずっと向こうの方を
ただじっと 睨みつけてやったのです


睨みつけてやったのです
陽炎
2013年11月07日(木) 17時20分52秒 公開
■この作品の著作権は陽炎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
一進一退の繰り返しです

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No.4  陽炎  評価:0点  ■2013-12-02 10:37  ID:cHskyR7wFho
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☆ゆうすけさんへ☆

いつもありがとうございます
最近、お見かけしなかったので
どうしたんだろう、と思っていました
お仕事、忙しいんですね
そんな中、時間を割いてお読みいただけて感謝です

一進一退ですね
少し調子がよくなってきたかな、と思うと
また悪くなってきたり

生きるってことはつくづく
覚悟がいることよなあ、と
しみじみ思ったりもします

エレカシの宮本さんが雑誌のインタビューで
「ひとつでも好きなことがあれば
それはとても幸せなことなんだ」ってことを云っていて

欲望は尽きることがなくて
いつだって何か足りてないような気がしてしまうけど
現状に満足してしまったらそこで終わってしまう

でも、ああ、そうか
好きなことがあるってことは幸福なことなんだと

ゆうすけさんとまたこうしてお話できてよかったです
ありがとうございました
No.3  ゆうすけ  評価:40点  ■2013-12-01 17:20  ID:LnKN5DTWluI
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やまない雨はない、でも、雨にならない晴天もない
日はまた昇る、でも、また沈む
走っても走っても、振り返ればそこにある自分の影
影のように付きまとい、振り払えない、自分の弱い部分
今までの努力は無駄だったのか?
これからの努力すら虚しいのか?
踏み出す一歩は無意味なのか?

否!

今ここに生きている
前を見ている
踏み出そうとしている
心の傷の数が生きてきた年輪、戦いの勲章
負けて泣いた数こそ経験値
誇りを持て! 自信を持て!


つい熱くなって心に浮かんだ言葉を書いてしまった。
まとった衣の役割に忙殺されて「ゆうすけ」に戻れる時間が皆無な昨今、やっとここに来られて陽炎さんの詩を読めました。馴染みの居酒屋で旧友に会って飲みながら語り合ったような気分です。
なかなか来れない昨今ですけど、また詩を読ませてくださいね。
No.2  陽炎  評価:--点  ■2013-11-23 09:49  ID:g3emUcYnoi6
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☆菊池清美さんへ☆

お読みいただき、ありがとうございます

菊池さんの云い方だと、要するに要領が悪いと
そういうふうに云っているように聞こえますが
私の思いすごしかしら
No.1  菊池清美  評価:30点  ■2013-11-21 03:50  ID:te6yfYFg2XA
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 陽炎さんの詩を初めてちゃんと読んだのかなあ、普通の女の人ですね素直に綴っておられます、何を考えているか良く判ります。
誰にでも程度の差は有っても有る明と暗の部分、僕は小市民だから明の方だけ見て生きていますねきっと。

頭の良い一生懸命な社長の会社は何時もピイピイで、脳天気に見える社長は上手く行ってます、人生って色々ですね。
陽炎さんは凄く真面目に生きていると思います。
      
総レス数 4  合計 70

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